解析屋の新たな看板と、廃棄場に眠る赤の記憶
第二幕 開幕!
どんどん進めて行くぜ!!
翌朝。
事務所の入り口に誇らしげに立てられた『解析屋:何でも直します』という烈の直筆看板を眺め 漣は深く溜息をついた
「……目立ちすぎる。烈の奴 少しは隠れ家という概念を学んでほしいものだ」
漣は苦笑いしながら看板を一度外し 新しい看板の板を持ってきた
隣に立つ凛が 黙ってペンキの缶を差し出す
二人は並んで 看板の書き直しを始めた
烈の荒々しい文字とは対照的に もう少し控えめで それでいて確かな「場所」を示す文字を 慎重に刻んでいく
刷毛を動かす単調な作業の最中 漣の脳裏には あの「赤」の持ち主であった少年の独白が 呪いのようにこびりついて離れなかった
『……家族 なんだ。これ は……僕の……』
震える手で赤を差し出し 絶望の淵でなお何かを信じようとしたあの眼差し
「家族」という言葉の重みが 解析屋としての合理性を揺さぶる
(……あの顔が 忘れられない)
少年が赤を家族と呼んだ時の 縋るような 壊れそうな瞳
合理的な解析屋を自称するなら 依頼を完遂して終わりでいいはずだ
だが 漣の胸の奥にある「我儘」が それを許さない
そして 今の現状には一刻の猶予もなかった
エイジャスで解析したあの赤のログデータ
その深層に刻まれていたのは 都市の廃棄場を示す座標だけではない
政府の通信網と同期し 常に「黒猫」の位置を特定しようとする 悍ましい追跡コードだった
「.....凛、今すぐ この赤の件を解決しないといけない。俺たちは既に 政府の最優先排除対象としてロックされている」
赤の正体を突き止め 根源を叩き潰さない限り 永遠に政府の猟犬に追われ続けることになる
そうなれば 棄界へ向かうどころか 命を削りながら潜伏し続ける地獄となってしまう
「家族を救いたいというあいつの願いと 俺たちが生き残るための生存戦略...。理由は それだけで十分だ」
弾き出された座標は 明確に都市の廃棄場を指し示していた
「......でも、漣くん。廃棄場に行くのは 危険だよ」
凛が ペンキで白く染まった指先を止め 漣を真っ直ぐに見つめた
その瞳には 恐怖よりも深い確信がある
「雨宮さんは 必ず見抜いてる。漣くんがその『赤』を持っていて 解析して 廃棄場に辿り着くことまで......全部。あそこには 罠が張られているはず」
「.......ああ。あいつならそうするだろうな」
漣は看板の文字を整えながら 静かに言葉を返した
ペンキの匂いが 朝の冷たい空気と混ざり合う
「だが 凛。雨宮の本当の目的は 君の精神世界にある『綺麗なログ』だったはずだ。それが俺たちの手元にあり あいつの手が届かない今.......あいつにとって廃棄場は 既に価値を失った『終わった盤面』だ。あいつは合理性の塊だ。手に入らないもののために いつまでもリソースを割きはしない」
漣は書き終えた看板を 満足げに眺めた
『何でも屋:黒猫』
シンプルだが どこかこの不器用な三人を象徴するような名前
「もし……もし雨宮がまだそこに執着していて 危なくなったとしても」
漣は 看板を元の位置に据え直し 凛に向き直った
その表情には 解析屋としての冷静さと 仲間に向ける確かな熱が宿っている
「俺が必ず守り通すさ。……凛も あの少年が遺そうとしたものもな」
凛はその言葉を受け止め わずかに目を見開いた後 小さく頷いた
溶け出した心の雪が 確かな決意へと変わっていく
看板が朝日に照らされ 偽装された日常の幕が上がる
廃棄場という名の深淵。
そこに眠る「家族」の正体を暴くための戦いが 静かに 激しく 始まろうとしていた
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
烈が勢いで掲げた派手な看板を 苦笑しながら塗り直す漣と凛
二人の間に流れる静かな時間は 日常の尊さを際立たせますね!!
しかし 漣の脳裏に焼き付いて離れない少年の言葉
「家族」
「赤」が示した座標の先にある 吹き溜まりの聖域「廃棄場」で 彼らを待ち受けるのは救いか、それとも雨宮の狡知か
「漣の『必ず守る』がカッコ良すぎる……!」
「雨宮が本当に廃棄場を捨てたのか、裏読みが止まらない!」
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