相棒と死神
色々あって投稿遅れました...すみません...
「……カハッ、……あ……」
烈の視界は 自身の血と『火事場力』の副作用によって どす黒い赤に染まっていた
左腕の感覚はとうに消え 肺は焼けるような熱を帯びている
それでも烈は 右手一本でファルコンのハンドルをねじ伏せ 死神の猛攻を回避し続けていた
だが 世界は無慈悲だった
『警告。個体名「凛」 精神構造の著しい不安定化を検知。出力を最大値へ固定します』
「っ……、…………ッ!!」
あいつの顔が 苦痛に激しく歪んだ
叫びたいはずの喉は システムによって物理的に封殺され 喘鳴さえ漏らさない
意志を無理やり塗りつぶす劇薬のようなプログラム
次の瞬間 彼女の瞳から色が消え 虚無の「赤」が世界を塗りつぶした
ドォォォォォォォンッ!!
死神が空中を蹴った瞬間 空間が圧縮され 彼女の姿が視界から消失した
直後 烈の眼前に現れたのは より濃く より多く――血のような赤を纏った死の刃だ
ガギィィィィィィィィンッ!!
烈は咄嗟に 自身の脚に『火事場力』を全集中させた
時速200キロで疾走する車体の上で 無理やり左足をアスファルトに叩きつける
烈の脚が路面を抉り 慣性を強引にねじふせる超信地旋回
タイヤが焼き切れ 凄まじい火花が夜のハイウェイを照らすが 烈はその反動を利用して死神の斬撃を回避した
「……ッ、……今だ!!」
烈は 速度を無理やり殺し ファルコンを強引に停止させた
限界を超えて白煙を吹く機体を 一時的に「排熱」させるための強行手段
次にアクセルを開ければ確実にエンジンが爆発する
ラスト一走りのためには この数秒の冷却が不可欠だった
だが その「無防備な一瞬」を 死神が逃すはずもなかった
狙いは一点 烈の背後で意識を失っている「干渉源」
ーー漣だ
「……させるかよッ!!」
烈は 唯一動く右腕の武装から 予備の重金属杭を一弾抜き取ると 漣の前に割り込みながら それをファルコンの重厚なメインフレームへと力任せに叩き込んだ
ガギィィィィィィィィィィィンッ!!
あえて愛機の心臓部近くに杭を打ち込み びくともしない「支点」を作り出す
烈はそこを軸に 強化ワイヤーを猛烈な勢いで漣の身体ごと ぐるぐると巻き付けた
ドッ!!
死神が 空間を爆ぜさせて肉薄する
烈は 打ち込んだ杭とワイヤーの隙間に 自身の身体を強引に割り込ませた
ひしゃげたガードレールの破片を左手で掴み 盾として死神の刃を正面から受け止める
ガキィィィィィィィィィィィンッ!!
衝撃で烈の腕の骨が軋むが 烈は退かない
死神は 目の前に立ち塞がる烈など眼中にない
ただ邪魔な障害物として切り捨て 漣の命を刈り取ることだけを優先して 刃を突き出す
ドスッ、ガキィッ、ドスッ!!
死神の猛攻が 烈の背中や脇腹を刻んでいく
死神は執拗に漣を狙い 烈はその全ての軌道上に 自分の肉体を「肉壁」として投げ出した
一撃凌ぐごとに鮮血が噴き出すが 烈はワイヤーを引く手を緩めない
バイクに打ち込んだ杭。そこに結びつけられたワイヤー。
烈の血で赤く染まりながら 漣の身体はファルコンの一部へと完全に固定された
「……ハッ、ハァ……待たせたな、相棒」
ファルコンのエンジンから 立ち昇る白煙が消える。
冷却完了。
烈は 貫通した自らの腕を強引に引き抜き 血塗れのままハンドルを掴んだ。
「ぶっ飛ぶぞ 漣!!」
烈は 片腕でハンドルを掴み 唯一生きているブースターを全開にした
排熱しきった心臓部が 解放された全てのエネルギーを 爆発的な推進力へと変換する
ドォォォォォォォォォォンッ!!
音を置き去りにした 超加速
意識のない漣の身体は 猛烈な勢いで後ろへ持っていかれそうになる
だが 烈がファルコンの骨組みに打ち込んだ「杭」と「ワイヤー」が 彼の身体を逃がさない
「……っ、……千切れんなよ!!」
烈は 片腕でハンドルをねじ伏せ 唯一生きているブースターを限界まで回し続けた
心臓を叩くような咆哮を上げるファルコン
過負荷で白熱したエンジンから放たれる凄まじい熱気が 夜の冷気と混ざり合い、激しい陽炎となってハイウェイを揺らす
執拗に漣を狙い続けていた死神の姿が バックミラーの中でみるみる小さくなっていく
烈が叩き出した圧倒的な加速が 死の追撃を振り切った
吹き荒れる風の中 烈の肩から散った一滴の血が 後ろで眠る漣の頬を叩く
遠ざかる死神の紅い眼光を 烈は一度だけ強く睨みつけた
その横顔に、迷いはない
あるのは 温存した『パイルバースト』によって 彼女をシステムという呪縛から解き放つための、ひどく静かな「救済」への覚悟だけだった
「……待ってろ。今、全部終わらせてやる」
それは破壊の宣言ではなく 奪われた日常を取り戻すための誓い
烈は砕けかけた歯を食いしばり、漆黒のハイウェイの先へ 一筋の閃光となって消えた
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ボロボロになりながらも 愛機に杭を打ち込み 自らを肉壁にして漣を守り抜いた烈。
彼がその身を削ってまで繋いだ「ラスト・ラン」の先には、一体何が待っているのか
すべてを賭けて 死神となった凛を救い出すための「最短ルート」を駆け抜けるファルコン。
烈が温存した最後の一撃『パイルバースト』が唸を上げる時、物語は真のクライマックスへ突入します!!
次回、第二十二話
「夜を裂く閃光、その境界で君を呼ぶ」
「烈の覚悟が格好良すぎて痺れた......!」
「パイルバーストが炸裂する瞬間が待ちきれない!」
「凛...どうか救われてほしい.......!」
と思った方は、
ぜひ【★★★★★】で応援とブクマをお願いします!!




