システム・リライト:漣の解答
第一章に入ってから不可解な表現、結構あったでしょ?
その『点』、全部『線』に書き換えてやるよ!!
精神世界の深淵。
凛の魂を縛り付けていた暗闇の中で、漣は再びその「境界線」に立っていた
かつて、凛の深層意識へダイブしようとした漣を物理的に叩き出したあの拒絶装置が、今度はその姿を変えて君臨している
凛の幼い心を幾重にも囲う、冷徹な論理の檻
漣がその鎖に触れようとした瞬間、空間が激しく軋み、凍りつくようなアラートが脳を貫いた
『不当な介入を検知。個体名「凛」、保護シークエンスへ移行。外部刺激を完全に遮断します』
装置はもはや漣を追い返すことすらしない
ただ、凛を永遠に目覚めない眠りの底へ沈めるべく、檻を固く閉ざしていく
その檻の奥で、膝を抱えた幼い凛が、震える声で呟いた
「……もう来ないで。凛のせいで、また誰かが傷つくのは嫌なの。……ここなら、誰も傷つかなくて済むから……」
それは、自分を犠牲にすることでしか大切なものを守れないと信じ込まされた少女の痛々しい「決別」だった
その言葉を聞いた瞬間、漣の中で何かが弾けた
「ふざけるな……。そんなので……そんな結末で、良いわけないだろ!!」
漣の怒号が、無機質な精神世界を震わせる
漣は片手に握ったエイジャスを用いて凛を救うための解析を始める
モニターに激しい波形が躍り、解析の光が激流となって檻を構成する鎖を侵食していく
解析は驚くほど順調に進む
提示されるテストに対し、一つひとつ回答を入力するたび、凛を縛る赤い鎖が解けていく
だが、漣の指がふと止まった
(……待て。おかしい。正解が、並びすぎている)
解析屋としての直感が警鐘を鳴らす
提示される回答のすべてが、あまりにも整いすぎている
まるで誰かが事前に用意した「模範解答」をなぞらされているような、気味の悪い一貫性
(……いや、考えろ。やはりおかしい。この『赤』が何なのか ...その正体なんて知る必要はない)
漣は思考のノイズを切り捨てた。
この「赤」や「飢餓」。そんな本質的な追求は、凛を救った後でいくらでもできる。
(今すぐ追及すべきは……この『赤』が 今この瞬間、凛にどんな影響を与えているかだッ!!)
スキャンの深度を「危機解析」に全振りした瞬間、網膜に映る波形が激しく暴れ出し多くの解析結果を出した
(……やっぱりだ.....この『赤』は、ただ心を閉じ込めているんじゃない。凛という『存在』そのものを 燃料として喰らい続けている……!)
感情を奪われ 成長を止められた幼い心が 減り続ける自らの命を補填しようとして 無意識に他者の生命力や「熱」を求める本能。
それが「飢餓」の正体であり その影響は凛自身を内側から焼き切る「猛毒」と化していた
(...だが これじゃない。確かに 多少なりとも解析に影響を及ぼしているが この「模範解答」とは無関係。俺の勘が 経験が警告している。もっと別の違和感を)
漣は解析の視点を「救出」から、この「システムそのもの」の構成へとシフトチェンジした
凛を救うためのルートではなく、この論理構造を隠蔽している「癖」を逆スキャンする
すると、データの綻びの奥から、見覚えのある「工作」が顔を出した
「……これ、あの時と同じだ」
事務所『黒猫』に送り込まれてきた、あの「中身が空っぽ」の襲撃者たち。
彼らが襲ってきている中で解析した際に見つけた、あの狡猾で、神懸かり的な隠蔽工作。
さらに深く潜れば、最初に少年が持ち込んできた「赤」の奥底に刻まれていた、どの組織とも違う、ぞっとするほど冷徹な「秩序」の残滓がそこにあった。
「政府が凛という規格外の人材を見逃すわけがないと思ってたが……。繋がったぜ、『雨宮』」
凛の記憶で見た、赤と直接関係のある唯一の人物
そしてこの、呼吸さえ止まるような冷徹な論理
この精神世界そのものが、雨宮によって設計された、巨大な「誘導装置」だったのだ
雨宮の狙いは、漣の「お節介」を利用すること
漣が凛を救おうと必死になればなるほど、その過程で磨かれたデータは、完成品として雨宮へ回収される
救うことそのものが、雨宮の計画を助ける最後の工程になっていた
(俺がこの子を救い出した瞬間、データは雨宮に筒抜けになる……。どこまで人を舐めてるんだ)
だが、漣は不敵に口角を上げた
雨宮は一つ、致命的な計算違いをしている
漣は、今の冷徹な雨宮が「無駄」として切り捨て、自分でも忘れてしまったはずの小さな綻び....
十数年前、あの雨宮自身が凛の中に残した「時限式のバグ」という名の抜け道を見つけていた
「あんたの想定通りに『正解』を引いてやるかよ。……俺はあんたが捨てたその『バグ』から、この子を連れ出す」
漣は、本来の救出ルートを完全に無視した
雨宮の監視網が張られた正規の道を捨て、かつての雨宮が残した「秘密の抜け道」から、凛の心の核だけを現実へと引きずり戻す
「凛の心は、俺たちが連れて行く。……あんたの完璧な檻には、もう中身なんて残ってないぜ」
直後、凛の周囲を漂っていた「赤」は、本質を奪われたただのノイズへと変貌した。
雨宮が手に入れるはずだった「完成品」は、今やただのゴミ屑だ
「あんたが愛してやまない『秩序』だ。……過去の自分に足を掬われる気分はどうだ?」
漣は、かつての暗号をこじ開け、光の中に佇む凛へ手を差し伸べた
「……おはよう、凛。……さあ、帰るぞ」
だが。
差し伸べられた漣の手を、凛は激しく振り払った
「……嫌。……帰らない」
光に焼かれるのを恐れるように、凛はさらに深い闇へと身を沈める
彼女の幼い心は十数年の地獄を経て、すでに修復不能なほど壊れていた
凛にとって、この冷たい檻だけが自分という「バグ」が誰にも迷惑をかけずにいられる、唯一の安息所になっていたのだ
「もう、放っておいて……。ここが、凛の……居場所なんだから……!!」
凛の絶望に呼応するように...砕け散るはずだった「赤」が、より深く、昏い輝きを放ち始める。
その一方、現実世界では......
一応補足。
つまり漣は二重に保険をかけた状態で凛を救おうとしたんだよね
1-救出ルート
ここで漣は雨宮が引いた模範回答のような救出ルートとは別の、昔の雨宮が佐伯教官としかけた『時限式のバグ』を設置したルートを見つけ出し、そこから凛の幼き心を救出しようとした
2-救出の仕方
雨宮は赤を解析しきった『バグのない』キレイな状態で、赤のデータを救出ルートを通る際に奪い取ろうとした。
だが、漣はそもそも『解析をしなかった』
漣がとった行動は「デバッグ」ではなく「切り離し」
仮に赤そのものからデータを奪い取ろうとしても、残っているのは切り離されたバグ...ノイズだけ
という感じで凛を救出する下地は出来たっていうことですね。昔の雨宮が撒いた種が、今の雨宮を妨害している...そういう構図となっているんです!!
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最後までお読みいただきありがとうございます!
ついに雨宮の策略を暴き、裏道をこじ開けた漣
しかし彼がそこで見たのは、救いを求める少女ではなく救われることすら諦め、暗闇に逃げ場を求めて壊れてしまった心でした
差し伸べた手を振り解かれた漣
そして、すべてに絶望してしまった凛...
次回、第二十一話「相棒と死神」
「凛ちゃんの拒絶が辛すぎて胸が痛い……」
「救うことの難しさを突きつける展開、エグい……」
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