閃光の名を冠する理由
「閃光」って言う単語、かっこよくね
ハイウェイを切り裂くタイヤの悲鳴
烈の視界は、限界を超えた『火事場力』によって真紅に染まっていた
「烈、あの子の『赤』に物理的な穴をあけて! 俺の『源生』を直接叩き込んで、隔離された深層へ強制介入する!!」
漣の叫びと同時に、死神の背後から無機質なシステムボイスが響く
『警告。対象の侵食レベルが規定値を超過。防衛プロトコル第4段階へ移行』
『個体名:綾瀬凛の深層意識への接触を検知。資産保護のため、固有能力の完全解放を……承認』
カチリ、と世界が噛み合う音がした
死神が掲げた両手に、あの子の命を限界まで燃焼させたエネルギーが収束し、鮮烈な「真紅の双剣」が顕現した
(……許可が降りた、だと!? )
漣の解析眼が、死神の急激な変化を捉える
(システム側が、それほどまでに僕の侵入を嫌がっている。……裏を返せば、あの『死神』というガワにとって、中にいる『凛』はただの燃料じゃない。奪われたらシステムが崩壊する、最重要の心臓部なんだ!)
漣の知略が、敵の「拒絶」を「確信」へと変える
ならば、行く道は一つ!!
「烈、来るぞ! 今までとは次元が違う!!」
死神の姿が、一瞬で「消えた」
直後、一条の赤い閃光が烈の横を駆け抜ける。
「.......ッ!?」
時速200キロ超で走るファルコンのサイドカウルが、紙細工のように切り裂かれた
遅れて届く、空間が断たれた衝撃波
烈の肩口から鮮血が噴き出す
だが、その血の色さえも、死神が振るう双剣の赤に飲み込まれていく
「へっ、おもしろいじゃねえか……!」
烈は、ダラリと垂れ下がる無感覚な左腕を、自らの腹に巻いたベルトの隙間に強引にねじ込んだ
身体に腕を無理やり縛り付け、一体化させる
バイクを操るために必要なのは、もはや両手ではない。
全身の重心移動と、相棒への信頼
「漣、しっかり掴まってな。……三秒だ。三秒だけ、アイツをこの場所に繋ぎ止めてやる!!」
烈は無感覚な左腕を自らのベルトに強引にねじ込み、身体を車体に固定した
右腕一本でハンドルをねじ伏せ、ファルコンを「跳躍台」へと変える
「解放率、90%ッ!!」
烈の咆哮
死神が空中へワープする瞬間、烈はバイクを蹴り、空中で真っ向から激突した
ガギィィィィィィィンッ!!
空中で静止する、パイルと双剣。
烈のパイルが双剣のガードを無理やりこじ開け、あの子の胸元に「物理的な空洞」を創り出した
「今だ、漣!! 全部ぶち込めッ!!」
「……行けッ!!」
漣は、まだ扱い方も、出力の仕方も....その正体すら分からない『源生』を指先からその穴へと一気に解放した
それは解析ではない
完全に経験からくる「賭け」
烈が作った風穴へ、自分の魂を弾丸として撃ち込むような、強引な『精神侵入』。
死神の動きが停止し、赤いノイズが逆流する
漣の意識は、烈の熱を道標にして、絶対零度の「赤」の深淵へとダイブした
意識が沈んでいく....
気づくとそこは、雪すらも凍りつくような、どす黒い「赤」の牢獄があった
その時、漣は見た
強大すぎる『追記』を維持するために、自らの『源生』を絶え間なく燃やされ続ける凛の姿を
『感情』を奪われ、発狂から守るために心を隔離された唯一の「成功サンプル」という名の犠牲
(……ああ。これが、お前が背負わされてきたものなのか……)
漣がその「切り捨てられた感情の核」に侵入した瞬間、封印されていた【時限解放式の暗号】が、漣の『源生』に反応して弾けた
かつて彼女を愛した教官が、いつか誰かが彼女を救い出すことを信じて託した、最期の願い
それが、濁流のような記憶となって漣の脳内へ流れ込んでくる
(……これは、記憶か!? 凛の……失われた『時間』という名の.....)
視界が激しく揺がされる
目の前に広がるのは、今のハイウェイではない
血の匂いと、焼け焦げた鉄の臭い
そして、自分を抱きしめる誰かの温もり
『凛、逃げなさい。絶対に、後ろを振り返っちゃダメよ』
震える女性の声
そして...
その声を塗りつぶすように響く、無機質な機械の足音と、冷徹な声
『感情の欠落。これこそが、神を定義するパッチとなる』
漣は、その記憶の底で、幼い日の凛が流した「最初の涙」を見た
最強の死神が誕生し、一人の少女が「サンプル」へと成り果てた、あの日
「……ここが始まりだったんだな。凛」
漣の意識が記憶に同調し、物語は十数年前の惨劇へと加速していく
最後までお読みいただきありがとうございます!
烈の執念がこじ開けた穴から、漣はついに凛の「核」へと到達しました
弾ける暗号、そして流れ込む悲痛な過去
次話から、ついに「閃光の死神」誕生の真実に迫る過去編が始まります!
【次回の更新告知】
今日、19:10頃に
第十九話「オーバーライド:死神という名の修正プログラム」
を更新します。
物語の核心に迫る過去編、
ぜひ 【☆☆☆☆☆】 で応援をお願いします!




