(なりたく無かった側の)有名人(兼ターゲット)、初仕事に挑む
目的地、廃棄場。
最短ルートを阻むのは、闇に潜む無数のライトと、物理法則を置き去りにする「赤い閃光」。
「……例の廃棄場まで 相当な距離があるな」
漣が呟き 手元の端末で最短ルートを算出する
その言葉を待っていたと言わんばかりに 烈がガレージの奥でニカッと笑った
「なら あいつの出番だな。俺とお前が不眠不休で改造した……あの怪物のな」
闇に包まれたガレージの奥で 鈍色のカウルを纏った怪物が目を覚ます
重装機動二輪『ファルコン・ストライカー』
かつて「究極」と謳われた名車のフレームをベースに漣が電子制御系を 烈が駆動系を徹底的に叩き直した 二人にとっての最高傑作だ!!
「いくぜ漣、舌噛まねぇように気をつけてな!」
烈が跨り 猛禽の眼を模した縦二連のプロジェクターライトが夜の帳を鋭く切り裂いた
漣が後ろに飛び乗り 烈の腰を掴みながら左手でコンソールを機体の電脳に直結させる
ガォォォォンッ!!
重厚な四気筒エンジンの咆哮
アスファルトを蹴り飛ばし 二人は深夜の首都高へと駆け上がった
オレンジ色の街灯が 超高速で流れる光の帯と化す
「……早速だね。例の『極秘指令』の効果は抜群らしい」
バックミラーを見るまでもない
エイジャスの仮想視界には 後方から異常な速度で接近する複数の光点が映っていた
「へっ、わざわざ出迎えかよ!ターゲットってのは大変だな」
烈が時速200キロを超える速度域で『ファルコン』を片手で操り パイル・ユニットをガチリと鳴らす
「ファンサービスだ、漣! 少し揺れるぜ!」
烈が車体を傾け 並走してきた追っ手のバイクの足元へパイルの火薬を一段階解放して衝撃波を叩きつけた
ドォォンッ!!
高架橋を震わせる爆音
圧縮された空気の塊が追走車を弾き飛ばし 一台が防音壁に激突して火花を散らす
不眠不休で調整したサスペンションが その反動を完璧に吸収していた
「一丁上がりだ! 漣、今の見たか? 芸術点高めだろ!」
「…はぁ....そう感傷に浸ってる場合じゃ....」
そう少し注意しようとした...
その刹那 エイジャスと同期した漣の目が確かに捉えた
「....ッ!?烈!!前だ!!! ……信じられない速度で接近してくる『何か』がいる!」
前方の闇から噴き上がった「赤い閃光」
それは『組織』が送り込んできた本物の刺客
物理法則を無視した推進力を纏う 怪物の如き加速だった
「……標的、確認」
ノイズ混じりの声が響いた瞬間、怪物(敵)の影が視界から消えた
影は空中で不自然な機動を描き 運転する烈を意図的に回避
標的を後部座席の漣に絞り 空気を切り裂く強烈な足蹴りを見舞った
(――間に合えッ!)
漣はエイジャスと脳を同期させ コンマ数秒の『遅延』を強引に生成する
『追記:遅延実行』
相手の蹴りの凄まじい推進力を完全に「保留」することは叶わなかったが 着弾の瞬間を数ミリ秒だけ引き延ばし 衝撃のピークを強引にずらした
「グッ……!」
威力を殺しきれず 漣の体は後方へと吹き飛ばされる
だが 宙に舞う間に再びコマンドを叩き込んだ
落下の速度を遅延させ 自身の関節に「保留した姿勢制御」を追記
火花を散らしながらアスファルトを滑り 執念の着地を決める
「……っ、ふぅ……。今のを一撃で終わらせないなんて、嫌がらせにしては高度すぎるよ……」
漣が顔を上げると そこには驚異的なドラテクでバイクを急旋回させ 一瞬で駆け戻ってきた烈の姿があった
烈は『ファルコン』のテールをスライドさせながら漣の前で停止させ 力強く手を差し出す
「生きてりゃ合格だ、漣! さっさと乗れ!」
再び機体に跨る漣
二人の前には 悠然と立つ組織の刺客
そして背後からは三台以上に膨れ上がったバイク隊が ライトの光で二人を挟み撃ちにする
「……解析完了」
無機質な敵の宣告
絶体絶命の挟撃
しかし 烈はハンドルを握り直し ニカッと笑った
「へっ、わざわざファンが増えやがって。……いいぜ、まとめてサインしてやるよ。漣と烈の 特大のやつをな!」
夜のハイウェイに『ファルコン』の咆哮が反撃の狼煙として響き渡った
Q,時速200kmでバイクぶっ飛ばしたらどうなりますか?
A,多分吹き飛ぶ
最後までお読みいただきありがとうございます!
ついに登場した組織の刺客。そして烈の愛車『ファルコン』!
一応、第八話で不眠不休の伏線は貼ってたんですよ!?
【次回の更新告知】
本日、夜19:00頃に
第十四話「有名人兼ターゲットになった俺、時速200キロで死神と追いかけっこする羽目になる」
を更新します。
え?初仕事してないって??多分、次回でしてくれるでしょう...
「時速200キロで着地する漣が凄すぎる」
「烈のドラテクに痺れた!」と思っていただけたら、
ぜひ【☆☆☆☆☆】で応援をお願いします!




