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ラグ・コード:〜因果(バグ)を正し、汚名(フェイク)を暴き出す。物理法則が崩壊した世界で少年は全てを上書きする〜  作者: Kaいト
切り捨てし飢餓、その果てに秩序は成る

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12/29

「赤」に奪われし「狗(いぬ)」の急襲

解析屋の、退屈なはずの午後。

コーヒーの雫が落ちる音と共に、死角から「ノイズ」が躍り出る。

少年から「赤いノイズ」を放つ、歪な記憶チップーー俺たちはそれを「赤」と呼び 昨日今日と解析を進めていた



隔離ケースの中の「赤」は時折 心臓の鼓動のように妖しく明滅していた


れんは片手でキーボードを叩き もう片方の手でサイフォンから落ちるコーヒーの雫をじっと見つめている

隣ではれつが 昨日の残りのジャンクなピザを齧りながら 電子版のバイク雑誌を適当にスクロールしていた


どこからどう見ても 退屈な午後の光景だ


だが 漣の瞳の奥 エイジャスの仮想視界には 事務所周辺のネットワークに干渉する不自然な「ノイズ」が捉えられていた


「……漣。このピザ もう冷めてるな。温め直してくるか?」


烈がピザの箱を閉じ ゆっくりと立ち上がる。それが合図だった


烈が察知したのは 密閉された室内でわずかに動いた「空気の重み」


漣がエイジャス越しに確認したのは 外部からハッキングされ 死角を作らされた監視カメラのログ


「いいよ 烈。……それより 僕のコーヒーが冷める前に その『ノイズ』を片付けてくれないか」


漣がカップを手に取り 静かに椅子を回す。

視線はモニターに固定されたままだが キーを叩く音は止まらない


「了解だ オーナー。……お代わりを淹れる暇も与えねぇよ」


烈が左腕のパイル・ユニットを軽く叩いた瞬間 事務所の防音壁が外側からこじ開けられた


天井と窓から躍り出た 黒いフルフェイスの三人



「チェックメイトだ 解析屋」



だが 襲撃者たちの確信は 一瞬で絶望に変わる


「……烈。八時 射角マイナス三。……手加減を忘れないでね」


「おうよっ!」


烈は襲い来る二人を流れるような体術でいなし 三人目が振り下ろしたブレードの軌道上へ 左腕のパイル・ユニットを後方へ突き出した


――カチリ と


火薬量を最小限に絞る、冷徹な設定音



ドンッ!!



重低音とともに 圧縮された衝撃波が刺客の胸元を叩く


物理的な杭は打ち出さず 発生した「圧力の壁」だけで相手を背後の壁に叩きつけ 一瞬で意識を刈り取った


壁はひび割れる程度に止まり 事務所の崩壊は免れる



「……掃討完了。お陰で解析もかなり進んだ」



崩れ落ちた刺客たちには目もくれず 漣は最後の一打をエンターキーに叩き込む




コーヒーは温かいままだった







その時だった

隔離ケースの中で脈動していた「赤」が 今までで最も激しく そして「静かに」輝いた


倒したはずの三人の刺客

そのスーツの襟元から 一筋の赤いノイズが漏れ出し 隔離ケースの中のチップへと吸い込まれていく


「……? 漣 見ろ。こいつら 中身が『空』だぜ」


烈が一人を検分する

ヘルメットが外れたその顔は まるで感情を抜き取られた蝋人形のように生気がなかった



「人間を『デバッグ』して ただの端末に作り替えたのか……?。効率的すぎて吐き気がするよ」



漣の端末が逆探知の完了を告げるアラートを鳴らす


画面には 逆探知に成功した「廃棄場」の座標が鮮やかに浮かび上がっていた



「……ふぅ。仕事を続けようか 烈。ついにこの事件の尻尾を掴んだよ」



漣は確信を持ってそう告げ コーヒーを口にする


自分のエイジャスが 相手の鉄壁のセキュリティを上回った

その事実に わずかな高揚感すら覚えていた


だが 漣の指先は止まらない


座標データの背後、通常なら解析完了で切り捨てるはずの「微細なコードの綻び」を 彼は見逃さなかった


(……待て。座標データの暗号化、その余剰ビットに……何かを隠している?)


それは並の解析屋ならノイズとして処理し 一流の解析屋でも「高度な破損データ」と誤認するほどの 神懸かり的な隠蔽工作だった


だが エイジャスと同期した漣の脳だけは、その違和感の正体を正確に捉えていた


(……違う。これは破損じゃない)


漣は息を呑み、さらに深い階層へダイブした

プロの解析屋が一生かけても辿り着けない深度に埋め込んだ 絶望的な難易度の暗号化パケット


普通なら 触れた瞬間にエイジャスがオーバーヒートし 解析者の脳は廃人になるだろう


だが 漣は......その壁を超えた



無数の演算を『二重遅延デュアル・ラグ』の経験を元にエイジャスと自身の脳という二つに分ける



追記アペンド遅延実行ラグ・コマンド』で自身の脳に

「演算の保留」「一部思考能力の遅延」を実行



演算スピードをそのままに 脳のリソースを「保留した演算の結果」の並立処理に集中させる



その結果が一秒間に何百もの演算を可能としたのだ!


このプロセスを何回も 何十回も繰り返すことでようやく「不可侵の領域」を強引にこじ開けることに成功した



まさに 漣にしかできない『神技』であった




そして...そんな「不可侵の領域」にあった情報は 漣の背筋を凍り付かせた






「……っ、なんだ、これは……!」






こじ開けたデータの最深部

そこに真っ白な空白と共に浮かび上がったのは 冷徹な「宣告」だった



『極秘政府指令。次の標的ターゲット:解析屋「黒猫」』



「烈……。僕が今 掴んだのは『場所』だけじゃない。……僕たちを『標的』に定めた 政府()の実行指令書だ」



漣は震える手で その情報を画面に固定した



「……僕たちは、明確に狙われている。それも、遊びじゃない『本物』たちにだ」



脳裏をよぎるのは、あの冷徹な白銀の執行官・雨宮。


彼が操る水を氷にする追記(アペンド)

そして謎の攻撃、絶対命令(スタティック)



(……なぜ、あの時 引き下がった?)



(なぜ、俺の『遅延実行』は勝手に強制解除されたんだ……?)



僕たちは知らず知らずのうちに世界を管理する巨大な闇の...

しかもその心臓部にまで手を突っ込んでしまったらしい




底知れない恐怖が漣の背筋を這い上がる。





だが――。



「へっ。……でもよ漣。向こうが俺たちを『標的ターゲット』にしたってんなら こっちは逆探知でアイツらの『尻尾』を掴んだ。……これでお互い様、力関係は五分五分イーブンだろ?」


「……烈。....ハハっ、相変わらずのポジティブだね。

……でも 確かにそうだ。俺だってやられっぱなしで終わるつもりはないよ」



漣は動揺を押し殺し 不敵な笑みを返した



















二人は疑いもしなかった












自分たちが手に入れたその「座標」こそが 最も効率よく二人を処理するために用意した「最適解」への招待状だということに


そんな中、倒した刺客たちの通信端末が一斉に不気味なビープ音を奏で始めていた

それは獲物が罠にかかったことを知らせる 冷徹な祝砲のように夜の街に響き渡っていた

烈「標的ターゲット!? もうそんなに俺たちの名が広まったのか!!」


最後までお読みいただきありがとうございます!

本編で「標的」にされたことを、なぜかポジティブに捉えて喜んでいる烈です。


【次回の更新告知】

明日、朝8:00頃に

第十三話「(なりたく無かった側の)有名人(兼ターゲット)、初仕事に挑む」を更新します。


なりたく無かった側の有名人、

なりたく無かった側のターゲット、

ターゲット、


どう読んでも無問題!!一石三鳥だね!

へ?「兼」はどこかって??き...気にしちゃ負けよ()


「漣の『射角マイナス三』がクールすぎて痺れる!」

「二人ともカッコよすぎ!!」

と感じていただけたら、

ぜひ下の【☆☆☆☆☆】とブックマークで応援をお願いします!


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