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ラグ・コード 〜遅延能力でバグった世界をぶち壊す〜  作者: Kaいト
プロローグ:孤独を揺らすは、重き残響

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11/50

解析屋の新メンバー!!そして...光と闇。その深淵で『君』は...『誰』を待ってるの?

第一エピソード、ついに完結。


【作者コメント】

小説書くのめちゃ楽しいやん

あの高負荷区・深部での死闘から数日が経った


九条漣の隠れ家...もとい「九条解析事務所」は かつてないほどの賑やかさに包まれていた


「……烈。改めて聞くが 本当にこんな危ない橋を一緒に渡ってくれるのか? 父さんの真実を追うことは この国に反逆することと同義だぞ」


漣は デスクの上の『黒いプラグ』を見つめたまま 絞り出すように言った

隣で自慢の武器 パイル・バーストの手入れをしていた烈は 顔を上げると不敵に笑った


「今さら何言ってやがる。俺はもう お前の仲間だろ? どこの誰が相手だろうが このパイルでぶち抜いてやるよ」


「……そうか。なら 解析を始めるぞ」


漣はエイジャスを起動し プラグの内部へ潜行した。


あの時訪ねた老解析屋が『引退のきっかけになった忌まわしい遺物』と呼んだそのデバイスは 幾重もの論理障壁で守られていた


「……くっ、何だこの暗号化の密度は……。文字の大半が文字化けしていて全容がまるで読めない」


モニターには蠢くノイズと共に 断片的なキーワードが浮かび上がっては消えていく



【少女】――【調律者】――【実態のない】――



「『調律者』……。まるで このバグだらけの世界を直そうとしてる奴がいるみたいじゃないか。……烈 このデータ やはり父さんの失踪と無関係じゃない」



漣が解析結果に没頭していると 鼻先をくすぐる強烈なチーズの香りが漂ってきた


「ま、難しいことはわかんねえが その『少女』ってのが鍵なんだろ? ほら 解析は一旦休みだ。ピザでも食え」


烈は手際よく 基板やコードが散乱するデスクに大きなピザの箱を広げた


「……ちょっと待て。何で勝手に出前なんか頼んでるんだ? ここは俺の隠れ家だぞ。しかも よりにもよって精密機器の横でピザを広げるな……!」


「あぁ? 腹が減っちゃ戦はできねぇだろ。ほら 冷める前に食え」


呆れ果てる漣だったが 烈の図太さに毒されたのか ため息をつきながらもピザの一片を口にする

ジャンクな味が数日間の不眠不休の体に染み渡った


「……うん。悪くはないな」


「だろ? さて、食いながらでいい。どーせ解析屋としてやってんなら しっかりとした名称が欲しいよな。」


「名称? そんなのあっても仕方ないだろ。別に有名になりたいわけじゃないんだし」


「いや!! やるなら全力だ!! 目指せ、世界最高の解析屋!! 看板がなきゃ 届くはずの依頼も届かねぇだろ?」


「依頼なんて来なくていい。僕は静かに効率よく仕事がしたいんだ……」


ため息をつく漣だったが 名称があることのメリットを脳内で計算し始める。対外的な秘匿コード あるいは報酬管理。論理的に考えれば 看板を掲げることは組織としての防御力を上げることにも繋がる


「……分かったよ。妥協点は探っておく。それで どんな名称がいいんだ」


「おう! そうこなくっちゃな! えーっと、バースト事務所……とか?」


「却下だ。暑苦しい」


二人がピザを囲み平和な議論を始めた その時だった



ギシッ ギシギシ……。



天井裏から音が響き 一匹の『黒猫』が飛び出してきた


「うわぁぁぁ!! 何だテメェ!!」


重機同然の武器を振るう剛腕の持ち主である烈が その巨体を跳ねさせて派手なリアクションをとる


驚いた黒猫は 精密機器の間を走り回り あろうことか『黒いプラグ』をカチリと口に咥えた


「あ、おい!! 返せ それは爺さんの形見なんだぞ!!」


「……っ、烈 追え!! それを失くしたら 俺らは真実に辿り着けない!」


ピザの箱を飛び越え 逃げ回る黒猫。烈が狭い事務所でダイブを繰り返す茶番劇に 漣はついに耐えきれず腹を抱えて笑い出した。


「くっ……ふふっ、あはははは!」


「漣!! 笑ってる場合か!! 手伝えって……めちゃくちゃになるぞ!!」


「分かったよ……ぷふっ」


ようやく烈が猫を抱きかかえ 騒乱が収まったとき。

漣はこみ上げる笑いを噛み締めながら 確信を持って告げた


「……烈。名称が決まった。あのプラグを奪い 僕らに追わせた……幸運の、あるいは不吉の象徴」


漣は 暴れる黒い猫の頭をそっと指先でなぞる。


()()()の名称は『黒猫くろねこ』だ」


「……『黒猫』? ……へへ、確かに安直だが...「黒い」プラグから真実を追う俺たちにはピッタリじゃねぇか!」


孤独だった解析屋に 初めて確かな「絆」が灯った。


だが、プラグの中に眠る【調律者】という言葉は静かに しかし確実に二人を世界の深淵へと引きずり込んでいく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


事務所『黒猫』に灯る温かな光とは対照的に 政府中央庁舎の最深部 窓のない一室には無機質な空気だけが流れていた。


ホログラムスクリーンに映し出された数人の影。

彼らは この国の意思決定を司る「中央演算評議会」の重鎮たちだ。その冷徹な視線を受けながら 一人の男が直立不動で立っていた。


中央演算評議会直属・治安維持局 第1特殊鎮圧大隊 隊長、雨宮。


『……雨宮隊長。先ほどの報告 納得がいかんな。

なぜ重要参考人である九条の息子をその場で拘束しなかった。貴様の部隊ならば 逃走を阻止し 即座に身柄を確保することは容易だったはずだ』


加工された電子音声が 雨宮の「不手際」を責め立てる。

だが 雨宮は表情一つ変えず 冷静に反論した。


「強引な拘束は 得られる情報の質を低下させます。九条漣は 九条弦の遺した解析論理エイジャスを独自の次元で掌握している。強制的な尋問環境では 彼が論理を封印 あるいは自壊させるリスクがありました」



『……ほう。では 逃げられたのではなく あえて行かせたと?』



「はい。彼にはあの『バグ』だらけのデータを解析してもらいましょう。」


「我々の演算能力で数ヶ月を要するあの暗号解読を エイジャスであればより短期間で完了させることができる。」


「九条漣を『外部演算ユニット』として自律的に稼働させ 最も効率の良いタイミングで成果物ごと回収するのが 組織としての最適解です」




雨宮の言葉には一片の揺らぎもなかった。



彼にとって 漣が知人であることも、その父との因縁も、すべては「任務」という巨大な歯車を回すための微細な変数に過ぎない


通信を終えた雨宮は 独り暗い通路を歩き出す



彼は無表情のまま、懐から銀のタイピンを取り出した。


それは、九条漣の父が失踪当日に身につけていたものだ。




このタイピンの持ち主がいた家庭を 政府の決定一つで「直接」崩壊させたのは 雨宮自身が守るこの「秩序」に他ならない。



そして彼自身もまた、かつて別の「秩序」によってすべてを奪われた過去を持つ



だが、彼はそれを恨んではいない。

「感情」というノイズこそが世界を停滞させる。


誰かが冷徹な秩序の化身となり、バグを排除し続けなければ この社会は維持できないのだ



雨宮はタイピンの表面に曇りがないか機械的に確認すると それを指先で弾くようにして懐にしまい直した。




「……九条漣。君が 秩序を乱す『バグ』となるか。それとも 世界を回す『部品』となるか。……どちらにせよ 僕のやるべきことは変わらない」



雨宮は第1大隊隊長としての誇りと冷酷さを纏い、一分の乱れもない足取りで闇の奥へと消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


雨宮が立ち去った暗闇のさらにした

そこには、先ほどまでの冷徹な空気とは無縁の柔らかな陽だまりがあった


色とりどりの花が咲く庭の片隅で 一人の少女がしゃがみ込んでいる


彼女は地面で足をバタつかせ、ひっくり返って起き上がれなくなっている一匹のてんとう虫を見つけると、そっと小さな指先を差し出した


「……あ、まって。いま助けてあげるね」


指を伝っててんとう虫が起き上がると、彼女はパッと顔を輝かせ、花が綻ぶような笑顔を見せた


「えへへ、よかったぁ。バイバイ、気をつけてね」


てんとう虫が空へ飛んでいくのを彼女はいつまでも無邪気に見送っている。その胸元には銀のネックレスが、彼女の純粋な心を守るように静かに輝いていた



「……『弦おじさん』、おそいなぁ。また面白いお話、聞かせてくれるって言ったのに」



そう言う少女には 一切の悪意がない...まさに無邪気な子供そのものだった


だが、その平穏は唐突な違和感によって塗りつぶされる

視界の端で、風景がデジタルノイズのように一瞬だけ歪んだ


『星』のわずかな変異を検知した「何か」が、彼女の内側で冷たく脈動し始める


「……っ、やだ。また、くるの……?」


彼女の瞳から 少女らしい柔らかな光が急速に失われていく。個人の意志などお構いなしに...

次回は 世界観・用語の補足です。

読み飛ばしてOKです!

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