第6話:死の記憶融合・影王との初接触
廃墟の中央、影王が影の翼を広げる。
〈声喰い〉の群れが渦巻き、灰色の霧が空間を満たす。
葵は両手を握りしめ、胸の痛みを押し込む。
影王の黄金の瞳がじっと葵を見据える。
──来たな、アオイ。
その覚悟……私に通じている。
葵は一歩前に踏み出す。
「……逃げない。全部受け止める」
影王の影が揺れ、廃墟の床が軋む。
そして、葵の胸に鋭い痛みが走った。
それは、死んだ日の記憶が押し返してくる痛みだった。
──私は……死んだ……
──誰かのために……叫んだ……
影の少女が叫ぶ。
「葵! 耐えて! まだ思い出しちゃ駄目!」
弟影も声を震わせる。
「おねえちゃん……耐えて……!」
しかし葵は目を閉じず、影王を見つめ続ける。
「……覚えている……全部……でも、逃げない」
影王の翼がゆっくり舞う。
──そうか……その強さ……その覚悟……
ならば、融合させよう。
影王の手が葵に届く瞬間、黒い霧と光が激しく交錯する。
〈声喰い〉が一斉に押し寄せるが、影と弟影が葵を守る。
葵の心が揺れる。
死の記憶と、生きている自分の記憶がぶつかり合う。
痛みと恐怖、そして懐かしさが胸を押しつぶす。
──でも、逃げない。
私が守る……死んだ自分も、生きた自分も、みんなを……
黄金の瞳がさらに鋭く光り、影王が低く囁く。
──よく耐えた、アオイ。
今、すべてを知るがいい。
触れた瞬間、葵の視界が揺れ、死んだ日の断片が一気に流れ込む。
暗い路地、叫び声、誰かの名前、胸を締めつける孤独、そして――光。
──私の手を取ってくれたのは、あなた……
──この世界に生き残ったのは、あなた……
葵は涙を流し、声を震わせる。
「……わかった……
全部、受け止める……!」
影王の手がそっと葵の手に触れる。
その瞬間、影の渦が静まり、廃墟の空気が震えながらも落ち着きを取り戻す。
影王の声が低く響く。
──アオイ……お前は、全てを背負った。
そして、逃げなかった。
葵は深く息をつき、影の少女と弟影に視線を向ける。
「……ありがとう。
みんな……一緒にいてくれて」
影の少女が微笑む。
「これで、次に進める。死の記憶の核心へ」
弟影も頷き、手を握る。
「ぼくも、ずっとそばにいる」
廃墟の奥、影王の黄金の瞳が再び光る。
──次は、全てを試す時だ。
死の記憶と、影王の真の力が交錯する瞬間が、迫る。
葵は拳を握りしめ、廃墟の最奥へ足を踏み出した。
──これが、死の記憶との最初の融合。
影王との戦いの序章は、今、始まった。




