表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/73

第4話:封印領域内部・死の記憶との邂逅

廃墟の最奥に開いた亀裂を抜けると、空間が歪み、灰色の光に満たされた領域が広がっていた。

床は揺れ、壁は霧に溶ける。まるで世界の端に立っているような感覚だ。


葵はゆっくりと歩みを進める。

影の少女と弟影が両脇で支える。

影が前に立ち、警戒の姿勢をとる。


「葵、これが……あなたの死の瞬間の残滓。

 触れれば、すべての記憶が蘇る場所よ」


弟影が声を震わせる。

「ここに入ったら……おねえちゃん、大丈夫かな……」


影が低く唸る。

「油断するな。影王の気配が強くなる。ここで心を乱せば、影王が近づく」


葵は胸の痛みを押し込み、拳を握る。

「怖いけど……逃げない。

 全部、向き合う」


霧の奥から黄金の瞳が光を帯びて浮かぶ。

影王だ。静かに、しかし確実に存在を主張している。


──アオイ……

死んだ日の真実を見せるために、私はここにいる。


葵は視線を逸らさず、歩みを進める。

床が崩れそうになり、壁が歪む。

〈声喰い〉の黒い影が廊下を這いずり、囁き声のように悲鳴を漏らす。


影の少女が葵の肩に手を置く。

「今は触れない。記憶を思い出すのは、影王と直接向き合う時よ」


弟影が葵の手を握り、目を潤ませる。

「ぼくも……ずっとそばにいる。絶対ひとりじゃない」


葵は息を整え、ゆっくり前に進む。

廃墟の奥に、巨大な黒い影が蠢いている。

影王だ。黄金の瞳がまっすぐ葵を見つめ、距離を詰める。


──アオイ、来たね。

お前が生きていることを、やっと確認できた。


葵の心臓が跳ねる。

痛みが胸を押し潰すようだ。

しかし、目を逸らさずに影王を見据える。


「……あなたが……影王……」

声が震れる。

「ずっと……怖かった。

 でも……逃げない。

 死んだ日の自分とも、向き合う」


影王の瞳が細くなる。

──そうか……その覚悟か。

その時が来たと、私に知らせる覚悟……。


影の少女が葵を強く抱きしめる。

「葵……これから先、すべてが動き出す。

 心を乱すな」


弟影も肩を抱き、力強く頷く。

「ぼくも守る。絶対に守る」


葵は深く息を吸い、影王の姿を正面から捉えた。

黒く歪む影が周囲に広がり、〈声喰い〉が取り囲む。

しかし、葵は足を止めず、歩みを進める。


──すべてを思い出す時が来た。

死んだ日の私も、今の私も、影王も……

逃げずに向き合う。


影王が口を開く。

──アオイ、全てを受け入れろ。

私が死んだ日の真実を、今、あなたに返す。


葵は目を閉じずに答える。

「……わたしは……全部、受け止める。

 そして、あなたを……私の手で終わらせる」


黄金の瞳が鋭く光り、影が廊下を揺らす。

廃墟の空気が震え、死の記憶が解き放たれる。


葵は両手を握りしめ、足を踏み出す。

死の封印領域の中心へ――

影王との邂逅、そして真実との対峙が、今、始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ