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第6話:気配の向こう側
港町の奥に差し込むネオンは、昼間とは違い冷たく青白い光を放っていた。
葵は地図を握りしめながら、一歩一歩慎重に歩く。背後には颯と奏が並び、その気配が心強さと同時に緊張を増幅させる。
「……あの黒髪の人、どこまで先導するつもりなんだろう」葵の声には不安が混ざる。
颯は眉をひそめ、少し前に歩みを進めた。「罠かもしれない。でも、行くしかない」
路地の角を曲がった瞬間、微かな影が視界の端を横切った。
「今……見た?」奏が息をひそめる。
「……見た」葵の返事も震えている。
影はすぐに消えた。しかし、空気の中に残る不穏な気配は消えず、三人の鼓動を早めた。
地図の指し示す場所まであと少し。葵は深呼吸し、肩の力を抜く。
「……どんな答えが待っていても、私たちで確かめる」
颯と奏が頷き、三人はさらに足を進めた。
その時、遠くの倉庫の屋根から、黒髪の青年がひらりと姿を現す。
一瞬だけ視線が交わる――その瞳の奥には、言葉にできない警告と期待が同時に込められていた。
葵の心臓が高鳴る。小さな手がかりと、大きな不安が、同時に押し寄せる。
そして、倉庫の扉が静かに軋み、まるで何かを待っていたかのようにゆっくりと開いた。




