第7話:深層影発動・反撃の一閃
黒翼と葵の影がぶつかり合った瞬間──
空間そのものが悲鳴を上げた。
ズガアァァァァッ!!
衝撃波が渦を巻き、
壁も床も影の圧に負けて崩れ落ちる。
黒翼は翼で葵の影を受け止め、
鬼のように歯を食いしばった。
『受け止める……だと……!?
人間ごときが……!!』
葵の影の爪が黒翼の翼を押し返す。
まるで、黒い嵐の腕が動いているようだった。
葵は必死に叫ぶ。
「わたし一人の力じゃない!!
影が……わたしと一緒に戦ってくれてる!!」
黒翼の表情が僅かに揺らぐ。
『影と……一緒に……?
そんな……馬鹿な……
影とは本来、主に従うだけの存在……
“意思”など……!』
すると葵の影が、
低く唸るように震えた。
──違う。
黒翼が息を呑む。
『……いま……声が……?』
弟影さえも驚愕し、
震える声を漏らした。
『……しゃ、喋った……!?
おねえちゃんの影……
言葉を……!!』
葵は影に向かって問う。
「あなた……
本当に……わたしの影なの……?」
影は静かに答える。
──葵。
私はずっと“内側”で眠っていた。
恐怖に閉じ込められた、お前自身のもう一つの心だ。
葵の胸が熱くなる。
黒翼が全翼を広げ、怒りをあらわに吠えた。
『黙れ……!!
影に意思などあり得ん!!
それは破綻だ!!
理の逆!!
存在してはならぬ!!』
ドオオオォンッ!!
黒翼が荒れ狂うように突撃。
床がえぐれ、影が荒れて渦巻く。
葵の影が葵の前に立つ。
──葵、来る。
私と心を合わせろ。
葵は深く息を吸い込む。
「……うん!」
影のオーラが一段階濃くなり、
世界の音が遠のく。
弟影が震えながら叫ぶ。
『おねえちゃんの“深層影リンク”……!!
完全に発動してる!!
これ、本当に人間がやっていい領域じゃないよ!!』
黒翼の翼刃が地面を削り、
嵐のように葵へ襲いかかる。
『消えろォォォ!!!』
ガキィィィィンッ!!
葵の影が、
黒翼の刃を“爪一本”で止めた。
黒翼の声が震える。
『な……
なぜ……止まる……!?
この私の一撃が……!!』
葵は影に力を預けた。
「いまだよ……!」
影が低く唸る。
──いくぞ、葵。
一閃でいい。
“心を切り拓け”。
黒翼が後退しようとするが遅い。
影の腕が後ろへと溜めを取り、
黒い光が集中する。
葵の瞳に同じ光が宿る。
「うおぉぉぉぉぉッ!!!」
影が跳んだ。
黒い線が空を裂き──
ズバァァァァァッ!!!
黒翼の胸を、
“深層影の爪”が抉った。
ギャアアアアアアアアッ!!!!
黒翼の絶叫が響き渡り、
黒い血の雫が空中に散った。
弟影が目を見開く。
『……っ!!
……黒翼に……傷が……!!
本当に……傷ついた……!?』
黒翼は胸を押さえ、
信じられないと呟く。
『ば、馬鹿な……
私が……
人間程度の覚醒者に……
傷を……!?
そんなことが……あっては……ならん……!!』
葵の影はゆっくりと葵の背後に戻り、
静かに立ち尽くした。
葵も息を切らしながら、
震える指で涙を拭う。
「……やっと……
一発……届いた……!」
黒翼の瞳に、
“恐れ”が浮かんだ。
『……葵……
お前の影は……
本当に……何者だ……?』
影は葵の背後で静かに答えた。
──私は葵の“恐怖の核”。
守れなかった記憶。
泣き叫んだ心。
諦めた願い。
全部を抱いて眠っていた影だ。
そしていま、葵が立ったから……
目覚めた。
葵の胸が締め付けられる。
「……わたしの……もう一人の……わたし……」
影が続ける。
──さあ葵。
ここからが“本当の反撃”だ。
黒翼は震えながら翼を広げた。
『……ならば……
次は“真の攻撃”を見せてやろう……!!
葵!!
お前をここで殺すぞッ!!』
葵は影と共に構える。
「来て!!
黒翼!!
わたしたちは……もう負けない!!」
黒い光が爆発。
空間が揺れ、
決戦が新たな段階に入る。




