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第3話:封じられた放送室

破裂音の再来でざわめく校舎。

葵は胸の奥が嫌な予感で重くなる。

黒髪の青年は、教室中の視線を一身に受けながらも微動だにしない。


「……ここに来ないでって言ったのに」

葵は絞り出すように言った。


青年は静かに答える。

「来るつもりはなかった。ただ――始まってしまったからだ」


その曖昧な言葉に、葵の背筋がひやりと冷える。


颯が青年の前に立ち塞がる。

「ここは学校だ。お前の来る場所じゃない」

押し殺した声の端が、わずかに震えていた。


青年は颯の顔を見て、意味深に目を細める。

「……君も、もう気づいているはずだ」


颯の肩がぴくりと震えた。

葵はその反応に、胸の奥がざわつく。


(颯……何か知ってる?)


しかし聞く間もなく、校内放送のスピーカーが突然ガガッと雑音を立てた。


「……っ?」


教室中が振り向く。


雑音の後、息を呑むような沈黙が続き――

『……だれか……いますか……』


かすれた、今にも消えそうな少女の声が流れた。

普段の明るい放送部とはまるで違う、不自然なほど弱い声。


『……たす……け……』


声はそこで途切れた。


教室がざわめき、女子の何人かが怯えて小さく悲鳴を漏らす。


葵の指先が凍りつくように震えた。

その声が、どこか聞き覚えがあるように感じたのだ。


「放送室……?」

奏が青ざめながら呟く。


「様子を見に行く」

颯が即座に言った。


「待て」

青年が静かに手を伸ばした。


「事態が動いたのは確かだ。だが、放送室だけが問題の場所ではない」


「どういう意味?」

葵の声は震えていた。


青年は葵を見つめる。

「『誰か』は、君に“何かを伝えようとしている”。だが……それを邪魔しようとしている者もいる」


邪魔――

その言葉に、教室の空気が一気に重く沈む。


颯は葵の腕を掴み、小さく囁いた。

「葵、絶対に一人になるな。いいな」


その手の温かさに、葵はわずかに呼吸を整える。

けれど同時に、颯の手から異様な焦りも感じ取っていた。


(颯……どうしてそんなに焦ってるの?)


奏が震える声で言った。

「とりあえず……放送室、行ってみよう? だってあの声、本当に……助けを求めてるみたいだったし」


青年は静かに目を伏せた。

「行くのなら、覚悟しておけ。あそこには既に“何か”がいる」


葵の背筋に、冷たい風が吹き抜けたような感覚が走る。


「……でも、行かないわけにはいかない」

葵はぎゅっと拳を握った。


颯も奏も、青年も、それぞれの覚悟を胸に秘めて顔を上げる。


こうして四人は――

“封じられた放送室”へ向かうことを決めた。


扉が閉まる音が、いつもより重く響いた。


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