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第12話:真夜中の決意
夜の港町は、静寂と微かな波音に包まれていた。
三人は庭の奥で立ち止まり、黒髪の青年の瞳を見つめる。
その瞳には、冷静さの奥に隠された深い意図が宿っていた。
「ここから先は、自分の覚悟次第だ」青年の声が静かに響く。
葵は息を呑み、握りしめた地図を見つめる。
昨日の紙切れ、倉庫での影、そして今夜の微かな違和感――すべてが繋がる瞬間が来たのだと、胸が震える。
奏がそっと葵の肩に手を置く。「怖くても、大丈夫だよ。私たちが一緒」
颯も一歩前に出て、冷静な視線を青年に向ける。「準備はできている」
その時、庭の奥の薄暗い影が動いた。
光のない場所から、微かに何かがこちらを見つめている――まるで、三人の決意を試すかのように。
葵は深呼吸をして、心の奥で覚悟を固める。
「……怖くても、進む。何があっても、逃げない」
三人の影が揺れながら前に進む。青年の微笑みは、一瞬柔らかく、そして意味深に輝いた。
その瞬間、微かな風が吹き抜け、倉庫街に夜の静寂を裂くように音が響く。
港町の夜は、まだ何も終わっていない――
だが、葵たちは確かに一歩を踏み出した。
それが、未来の全てを変える最初の一歩だった。




