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第10話:隠された微笑
夜が深まる港町、ネオンの光が水面に揺れる。
葵は颯と奏と共に、地図が示す場所へ向かっていた。
心臓の高鳴りと共に、恐怖と期待が交錯する。
「……もう少しで着くね」葵が小声で言う。
奏は少し前を歩きながら、周囲を警戒する。「何かある気がする……」
颯は黙って地図を確認しながら、微かに眉をひそめた。
倉庫とは違う、古い倉庫街の一角。
その奥に、小さな庭のようなスペースがあり、朽ちたベンチがひとつだけ置かれていた。
「……ここ?」葵が地図と周囲を見比べる。
その時、影がすっと現れる。黒髪の青年だ。
しかし、今までの冷たさはなく、微かに微笑んでいる。
その笑顔には、何かを知っているような含みがあった。
「ここまで来たか」青年の声は静かで柔らかい。
「でも……まだ試練は終わらない」
影が揺れる。倉庫の時とは違う、不穏な気配が周囲に広がる。
葵は背筋を伸ばし、深呼吸する。
「……わかってる。でも、行くしかない」
颯と奏も頷き、三人は青年に向かって歩き出す。
その微笑みには、何か秘密が隠されている――。
しかし、葵たちにはまだその全貌が見えない。




