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もし、会えたなら

掲載日:2025/12/02

父親を失った子供の、独白です。

子供の想いと小さな願いを書きました。

私のパパは嘘つきだ。


あの日、出張に行くって言って、家を出たパパ。

次の日も、その次の日も、ただ待っていた。

でも、帰ることはなかった。


命を落としたわけじゃない。

自分の意思で、二度と帰らなかった。


ママに言われたんだ。


「パパは家を出て行った」


その言葉を聞いて、私は1番に思った。

“裏切られた”って。

ただそう、思ったんだよ。


家を出る前に、家族で話したんだ。

外国旅行に行こうねって。

パンフレットをみんなで見て、このホテルいいねなんて話して、楽しみにしてた。

2冊のパンフレットを見比べて、考えていたんだ。


漫画みたいだけど、現実だったんだ。

幸せな未来に、希望を抱いていた。


でも、叶わなかった。

1人欠けた家族で、そこに行ったんだよ。


パパは言ったよね。

パンフレットを見ている時。


「もし、パパがいなくなったらどう思う?」


私は、あり得ないと思ったんだ。

だから適当に返した。


「お菓子入れてくれる人がいなくなる!」


もしそこで、泣いたり、喚いたり、説得したりしていたら、変わったのかな。

今こうして、寂しく思うこともなかったかな。


でももうやり直せないんだよね。


ママがね、パパのことをこう言ってた。


「最低な人だった」


それを聞いて、悲しくなったんだ。

でもね、パパもママのことを話していた。


「ママは精神病なんだ」


2人とも、私にだけ、言ったんだ。

互いに、互いの悪口を。


私は2人とも、信頼していた。

だって、親だから。

でも、そんなことを言われたら、私はどっちを信じればいいの?


結局私は、どっちも信じられなくなった。


パパは家を出ていったけど、一度だけ会ったんだ。

夏休みだった。

友達と電車で遊びに行こうとしてたんだ。


でもお金がなくて、定期にお金を入れてた。

そしたら、パパが来たんだ。


私は嬉しかったよ。

ほんの少しの会話だったけど、喜んだ。


それで、ママに言ったんだ。


「パパに会えたよ!」


私は本当に喜んでいて、その気持ちを伝えただけ。

でもママにとって、パパはやっぱり“最低”だった。

返ってきた言葉は、一言。


「大丈夫だった?」


なんで、そんなことを言うの?

なんで自分の父親に会って、心配されなければいけないの?


でも、子供ながらに悟ったよ。

だから、返したんだ。


「うん」


一言だけね。

その後は、友達と遊んだんだ。

もしかしたら、友達には、居た堪れない思いをさせたかもしれない。

そうだったら、ごめんね。


何かわからない気持ちが、ぐるぐる回ってたんだ。


思えば、パパが出て行く少し前から、思うように笑えていなかった。

それは学校のせいかもしれないし、子供ながらに、何かを感じ取っていたからかもしれない。


でもね、「ずっと一緒にいる」って約束を、裏切られたんだ。


会えないし、会いたいとは思わないよ。

もし会って、また期待を裏切られるなら。

そうなるくらいなら、会いたくない。


それでももし会えたなら、私はきっと、喜ぶよ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

小さな子供の、想いと願いが伝われば幸いです。

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