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ベテルグ王国の闇

 そして翌日、リード商会が運営する服屋に行った。店の中に入ると入り口には子ども用の服が並んでいて、その奥に男性物と女性物が分けて売られていた。リンはいろいろと服を手に取っていたがなかなか決まらない。僕は店の外で待つことにした。



「お待たせ!」



 リンはフード付きの服を着て帽子をかぶっていた。確かにこれなら顔が見えないだろう。



「なんか怪しい人に見えるよ。」


「しょうがないじゃない。ほっといてよ。」



 昨日、家を購入するのにお金を大分使ってしまったので手持ちがかなり少ない。



「最初に冒険者ギルドに行こうか。お金が心もとないからさ。」


「いいわよ。」



 フード付きの服を着ているせいか、リンも一緒にギルドに入ってきた。



「すみません。魔物を売りたいんですけど~。」



 受付の女性に声をかけると僕のことを覚えていたようで、裏の解体場に案内してくれた。



「ここに出してくれる?」


「はい。」



 僕は魔法袋から出すふりをして、レッドベアやレッドボア、それにキングスネイクを取り出した。すると、女性職員は驚いた顔をして聞いてきた。



「これ全部あなた達二人で討伐したの?」



 なんか以前も似たようなことがあった気がする。



「ええ、そうですけど。」


「レッドボアはCランクの魔物だけど、レッドベアはBランクよ!このキングスネイクなんてAランクの魔物じゃない!ちょっと待ってて!」



 しばらく待っていると、かなり美人な女性と一緒に戻ってきた。



「キングスネイクを討伐した冒険者っていうのはお前達か?」


「はい。」



 美人な女性がキングスネイクをじっくり観察している。そして僕達に言った。



「どうやってこれを討伐したんだ?」



 もしかしたら疑われているのかもしれない。当たり前だが、リンはBランクだし僕は冒険者になりたてなのだ。仕方がないので説明することにした。



「最初に彼女が火魔法で顔に攻撃して、僕が刀で心臓を貫きました。」


「なるほどな。だが、キングスネイクの心臓の位置がよくわかったな。普通は何度も剣で突かないと刺さらんぞ!だが、こいつは一撃で仕留められている。お前、相当強いな!冒険者カードを見せてみろ!」



 僕とリンがカードを渡すと、一瞬驚いた顔を見せたがすぐに気を取り直して言ってきた。



「BランクとCランクか!わかった!お前達はAランクに昇格だ!」


「いいんですか?そんなに簡単に決めちゃって。」


「ああ、いいさ。私がギルドマスターなんだから!キングスネイクを討伐できる実力があるんだ。誰も文句は言わないさ。」


「ありがとうございます。」


「リンダ!すぐにカードとお金を用意して私の部屋に持って来い!」


「はい。わかりました。」



 僕とリンはギルドマスターの部屋について行った。



「私はアンナだ。」


「僕はリュウです。」


「私はリュウの姉のリンよ。」



 するとアンナが僕達をじっと見た。リンのフードから少し髪の毛が出ている。しかも、下を向いているとはいえ多少は顔も見える。気が付かれるかもしれない。



「リン?!お前、どこかで会ったことがあるか?」


「ないわ。だって最近王都に来たばかりだもん。」


「そうか。ところでお前達は本当に姉弟なのか?全然似てないぞ!」



 やっぱり疑われた。僕は銀髪で銀色の瞳だ。リンは金髪で青色の瞳。どう考えても姉弟には見えない。



「僕達、親がいなくて教会で育てられたんです。」


「そうなのか。」



 アンナが不審そうに見ている。



「まあ、いい。ところで、キングスネイクはどこで討伐したんだ?」


「アルベールから王都に来る途中の森の中ですけど。」


「なるほどな。なら、王都から大分離れているな。」



 王都の近くで強力な魔物が発生するのを警戒しているのだろう。ここでようやく受付の女性が二人のギルドカードと報酬を持ってきた。報酬は金貨50枚だ。



「こんなにいいんですか?」


「ああ、キングスネイクは高級素材だからな。それに、何かあったらお前達に指名依頼したいしな。」



 どうやらこのアンナという女性は信用できそうだ。僕は王都の状況を確認することにした。



「お聞きしたいんですけど。」


「何を聞きたいんだ?」


「ここに来る途中、この国で内乱が起こる可能性があると聞いたんですけど。本当ですか?」


「まあな。王族派と貴族派がもめているからな。」


「噂では公爵家のアンドリュー様の素行態度に問題があって、リオン様が結婚したくなくて逃走したと聞いたんですけど。」


「詳しいな。その通りだ。アンドリュー様にも困ったもんだがな。それを罰することのできない国王も国王だ。確かにあのお方は国民の生活を第一に考えるお方だが、そのために犠牲になる女性がいるのも事実なんだがな。」


「父親の公爵様は何も注意しないんですか?」


「バイセン公爵か。あの方は国王の兄なんだ。ただ、側室の子どもだったがゆえに国王になれなかったのさ。そのせいで正室の子だった今の国王を恨んでいるんだ。それにあの方は権力に執着しているからな。他の貴族達を巻き込んで、自分が国王にでもなろうとしているんだろうな。」



 大体の状況はつかめた。ただ気になることがもう一つある。



「アンナさんは王族派と貴族派が本当に戦争すると思いますか?」


「間違いなく戦争になるだろうな。」


「冒険者ギルドはどっちの味方をするんですか?」


「安心しろ!冒険者ギルドはあくまでも中立だ!どっちの味方もしないさ。」



 冒険者ギルドを出て街を散策することにした。しばらく商業地区を歩いていたが、どうやら後ろから付けてきている者達がいるようだ。



「つけられてるよ。」


「本当?」



 僕達は走って家の角を曲がり、人通りのない場所に隠れた。すると2人の男が慌てて走ってきた。僕はその男達が動けないように取り押さえた。



バコッ グハッ



「何者だ?なぜ僕達を付ける!」


「わ、わ、私達はシューベル様に命じられて、リオン様を見守っていたのです。」


「それは本当か?」



 男の一人が剣を見せた。そこには何やら紋章が描かれていた。



「リュウ。本当のようよ。この紋章はプロスト伯爵家の物よ。」



 僕は二人の拘束を解いた。



「あなた達!私はどこにも行かないわ!戻ってお兄様に言ってちょうだい!」


「ですが・・・」


「大丈夫ですよ。リンは僕が守っていますから。帰ってシューベル様に伝えてください。」


「わかりました。ですが、リオン様が帰ってきていることが分かれば、公爵家が何をするかわかりません。」


「僕が付いてるから大丈夫。だよね?リン。」


「そうね。リュウに勝てそうな人はいないかもね。」



 どうやらリンは誤解していたようだ。リンが再び王都から逃げないように見張らせていたのだと勘違いしていたのだ。男達が立ち去った後、僕達は暫く街を散策してから家に帰った。




同じ頃、公爵家の屋敷ではリンが王都に戻ってきていることがアンドリューに報告されていた。



「間違いないのか!」


「ハッ!私の配下が、リオン様が若い男と一緒にリード商会に入っていくのを見たと報告してきました。」


「そうか。では、父上と相談しよう。」



 アンドリューはバイセン公爵の執務室に行った。そこには側近のドリアーノ侯爵がいた。



「父上、お話があるのですが。」


「これはこれはアンドリュー様ではないですか。」


「ドリアーノ侯爵。ちょうどいい。一緒に話を聞いてくれ。」


「アンドリュー。何かあったのか?」


「はい。父上。実はリオンがこの王都に戻ってきているのです。」


「ほ~。プロスト伯爵の娘がな。それで?」


「これは好機ではないでしょうか。王族派の主力は近衛騎士団と王国軍です。そのトップにいるのが軍務卿のプロスト伯爵です。ならば、娘のリオンを攫って人質にしてはどうでしょうか?」



 するとバイセン公爵が渋い顔をした。



「普通ならいい案だが、伯爵は領地を召し上げられても軍務卿だけは辞任しなかったのだ。その意味が分かるか?あやつは我らの動きを牽制しているのだ。娘を人質に取ったぐらいで我らの言うことを聞くとは思えん。」



 すると、ドリアーノ侯爵がアンドリューを見てニヤニヤ笑いながら言った。



「公爵様。そうとも言えませんぞ!伯爵も父親でしょう。ならばかわいい我が娘がどのような仕打ちを受けるか知れば、我らの言うことを聞くやもしれませんぞ!」


「まあよい。娘のことはアンドリューに任せる。我らは兵の準備を始めようぞ!侯爵!」


「はい。」



 アンドリューがリオンに何をするのか、公爵には想像がついているのだろう。そして、ドリアーノ侯爵が貴族派の貴族達に声をかけて反乱の準備を始めたのだ。




 それから数日が過ぎたころ、王都内が騒がしくなってきた。貴族派の貴族達がそれぞれの領地に戻り、軍を編成しているといううわさが流れていた。



「リン。一度実家に帰った方がいいんじゃないか?」


「どうして?」


「なんか最近そわそわしてるよね。実家のことが心配なんだろ?」


「だって。私は家出したのよ。帰れるわけがないじゃない。」


「本当にいいのか?戦争になればご両親もお兄さんも生きて会えるかどうかわからないんだよ。行って来いよ。」



 僕に言われてリンは実家に行った。リンが貴族街に行くと王族派の兵士達が貴族派の兵士達の屋敷の前にいた。どうやら貴族派の貴族達が引き払った屋敷を王族派の兵士達が監視しているようだ。



「リオン様!お帰りになられたのですか!すぐに伯爵様に報告して参ります!」


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