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リンと一緒にゴブリン退治

 翌日、僕はリンとギルドに行った。受付には数人の女性がいたが、僕達はメアリーに声をかけた。



「メアリーさん。今日はゴブリン退治に行きたいんだけど剣とか貸してくれますか?」


「リュウ君は昨日登録したばかりでしょ。大丈夫なの?」



 すると横からリンが顔を出した。



「私が一緒だから大丈夫よ。」


「リンちゃんが一緒なら問題ないわね。でも、危なくなったら逃げるのよ。」


「はい。」



 メアリーが受付の奥に入っていった。すると酒場の方から体の大きな男がニヤニヤと笑いながらやってきた。



「お前、自分の剣がないんだろ?それでゴブリン討伐するつもりなのか?お前、冒険者をなめてるだろ!」



 すると騒ぎを聞きつけたのか、メアリーが剣を持って戻ってきた。



「やめなさいよ!マクエル!あなたこそ朝から酒浸りじゃない!少しは冒険者らしいことしなさいよ!」


「うるせぇ!俺は自分の稼いだ金で飲んでるんだ!誰にも文句言われる筋合いはねぇぞ!」



 どうやらかなり酔っているようだ。酒場の方ではマクエルの仲間達があおるようなことを言っている。



「お前、確か~、リンとか言ったな。Dランクに昇進したからって偉そうにしてるじゃねぇか。まだ、魔物の本当の怖さも知らねぇガキのくせに。」



 このままここにいても絡まれるだけだ。僕はメアリーから剣を受け取ってリンに声をかけた。



「リン。行こうか。」



 するとマクエルがふらふらしながら殴りかかってきた。



「てめぇ!しかとこいてんじゃねぇぞ!」



 酔っているからか、あまりにも動きが遅い。横に避けるとマクエルは勢い余っておもいっきりこけた。



ドテッ



 その様子を見ていた仲間達が僕達のところに向かってくる。ギルド内にいた人達も集まりはじめた。このままだと大騒ぎになってしまう。



「リン!行くよ!」



 僕はリンの手を掴んで急いで外に出た。そしてそのまま郊外に向かって走った。



「ハーハーハー どうしたのよ?あんな奴ら、懲らしめちゃえばいいのに!」


「あの人達、酒で酔ってるだけだからね。」


「仕方ないわね~。でも、ああいう連中はまた因縁つけてくるわよ。」


「そしたらまた逃げるさ。」



 リンは呆れた顔をしていた。恐らく僕のことを臆病者と思ったのだろう。それでも僕は構わない。郊外へ出た後、僕達は歩いて森に向かった。



「ゴブリンはこの辺にいるって聞いたんだけどな~。」


 

 目と耳に意識を集中させて辺りを観察すると魔力感知に反応があった。どうやらゴブリンは500mぐらい先の地点にいるようだ。



「あっちに行ってみようか。」


「何かあるの?」



 森の中には獣道がある。野生動物や魔物が通る場所は、草が踏み倒されていたり地面がむき出しになっているのだ。



「これって獣道だよね?多分、この先に何かいると思うよ。」


「確かにそうね。」



 森の奥に入っていくと思った通りゴブリンがいた。5体だ。何か獲物を狙っているようだった。



カサカサ カサカサ



草の陰からホーンラビットが飛び出した。ゴブリン達が一斉に追いかけ始めた。



「今よ!」



 リンが木の陰からゴブリンに斬りかかった。ホーンラビットに気をとられていたせいかゴブリンは反応できない。



シュッ スパッ

ギャギャギャ



 1体が地面に倒れた。それを見て、他のゴブリン達が棍棒や錆びた剣を持ってこっちに向かってくる。



“前世でも剣なんて使ったことないしな~。どうしようかな~。”



 僕は使ったことのない剣を手に取って構えた。



「大丈夫~?なんかぎこちないわね~。」


「剣なんて使ったことないんだよ。」



 ゴブリンが一斉に襲い掛かってきた。その動きはあまりにも遅い。僕は力を入れ過ぎないように横に剣を振った。



シュパッ


バタバタ バタン



 僕の一振りで、目の前にいたゴブリン達が地面に倒れた。



「リュウ!あなた凄いじゃない!本当に剣を使ったことがないの?」


「初めてだよ。よくわかんなかったからリンの真似をして剣を振っただけだし。」


「それにしては凄いわね。初めて剣を振ったようには思えないわ。」



 その後、討伐の証明のためにゴブリンの左耳を斬り落とした。ものすごい罪悪感だ。そのまま死体を放置するわけにもいかないので、枯れ木を集めてリンの火魔法で燃やした。さらに森の奥に向かって歩いていると、今度はキングベアが目の前に現れた。



「リュウ!気を付けて!あいつはキングベアよ!どうしてこんなところにいるのよ!キングベアはもっとずっと奥にいる魔物でしょ!」


「あいつ、そんなに強いの?」


「当たり前じゃない!あれはBランクの魔物よ!私達に勝ち目はないわ!逃げるわよ!」



 僕とリンは来た道を逃げた。だが、すぐにキングベアに追いつかれる。このままではリンが危険だ。



「逃げきれないわ!私が囮になるからその間にリュウは逃げて!」


「リンはどうするのさ?」


「私は大丈夫だから!いいから行って!」



 前世の力のない僕だったら逃げたかもしれない。でも今は違う。僕には人を助けるだけの力があるのだ。キングベアが口からよだれを流しながら僕達に近づいてくる。リンの手と足が震えていた。彼女は僕を助けるために死を覚悟しているんだ。そう思うと力がみなぎってきた。



「リン。ちょっと退いててくれる?」



 僕は剣をしまった。そしてキングベアに向けて右手を前に出し、ゆっくりと上から下に振り下ろした。



バキバキバキバキ



 キングベアの後ろの木が音を立てて倒れていく。そしてキングベアの身体が左右に分かれた。



バッタン



 後ろを振り返るとリンが口を開けたまま固まっていた。



「リン!もう大丈夫だよ。」


「えっ?!何がどうなってるの?」


「今見たことは内緒だからね。」



 リンは首を何回も立てに降った。



「うんうんうん」



 せっかくなので僕は空間収納にキングベアをしまった。するとリンが慌てて聞いてきた。



「も、も、もしかして、それって、空間———空間収納じゃないわよね?」


「そうだよ。」


「あなた、本当に何者なのよ!」


「みんなには内緒だよ。もし他の人に知られたら僕はもうこの国にいられないからさ。」


「わかったわ!絶対に誰にもしゃべらないわ!」



 僕の力を知って安心したのかもう少し奥に行くことにした。



「リン。あっちにゴブリンがいるよ。」


「わかったわ。」



 ゆっくりとゴブリンのいる方向に進んでいくと小さな集落があった。20体ほどのゴブリン達がいる。さっきのゴブリンもそうだったが、人間から奪ったと思われる剣や盾を持っているものもいた。



「行くよ。」



 僕とリンはゴブリン達に突っ込んでいった。驚いたゴブリン達は、武器を手にして一斉に2人に襲い掛かる。


 

シュパ

バタン

シュッ

バタン



 物の数分でゴブリン達の盗伐は終わった。討伐したゴブリンを一か所に集めて左耳を斬り落とした後すべて燃やすことにした。



『燃えろ!』



 ゴブリンの死体の山に手を向けて魔法を唱えると、手から炎が出てゴブリンの山を灰にしていく。すると、突然リンが大声を出した。



「あり得ないわ!まさか、2属性の魔法が使えるの?!ありえない!」



“しまった!何も考えてなかった~。なんて言い訳しようかな~。”



「そんなに驚かないでよ。必死で生きていたら自然とできるようになってただけだよ。それより、さっきも言ったけど本当に内緒だからね。」


「わかってるわよ。でも、あなた何者なのよ!」


「だから~!普通の人間の子どもだっているじゃないか!」



 それから二人はギルドに戻った。ゴブリンの耳を3袋も持ち帰ったのだからギルド内では大騒ぎだ。



「リンちゃん!これってどこで討伐したの?」


「正門の西の森ですけど。」


「これだけのゴブリンがいたとなると集落があるわね!すぐにマスターに報告しなくちゃ!」


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