第3話
第3話。
ソクユンは社会人になって一人暮らしを始めたが、できる料理はラーメンくらいしかできなかった。料理ができないと簡単に家で何かを作って食べようとしてもできない。簡単な料理でも作れるようになるため、インターネットでレシピを検索していた。YouTubeのグルメ動画の中には、出前した料理やご飯屋さんに行って動画を撮影する人もいるが、自宅で手料理を作って食べる動画もあった。
料理を作る過程から完成した料理を食べるところまでを見るのが好きだった。レシピ通りの醤油大さじ2杯、砂糖大さじ1杯といった定量的な数値で見るよりも、動画で調理している様子を見ながら作ると簡単に真似ができた。仕事終わりに家でYouTubeを楽しみながら手料理を作っているうちに、いつの間にか母が作ってくれた家庭料理と同じように作れるようになった。 料理を始めてから更にグルメに興味を持つ様になり、グルメ関連の集まりがないかとインターネットで「グルメサークル」と検索してみた。
リストを見て、会員数が一番多いサークルに加入することにした。新しい出会いにも期待していた。当時はガールフレンドもいなかったので、どこで誰に会っても干渉する人などいなかった。携帯電話の出会い系アプリで簡単に出会えるかもしれないが、そこは男も女も一夜限りの相手を探している人がほとんどなのであまりやりたくなかった。サークルの集まりの日程を確認し、次回の会に行くことにした。
サークルの小規模な集まりは週に1回、定例会は2ヶ月に1回で、最初から人がたくさん来る定例会より、小規模な集まりに参加した方が親睦を深めることができそうだった。
サークルの集まり場所は蓮南洞にあるとんかつ屋だった。参加人数は8人だ。男性3人に女性5人だった。男性より女性の方が多く、この比率がとても気に入った。料理を注文し、それぞれ簡単な自己紹介をした。新たに加入したのはソクユンを含めて3人で、残りの人達はお互い知り合いのようだった。出てきた料理を見てみると、今まで食べてきたトンカツに比べ厚みがあった。
外はカリカリ、中はしっとりとしていて美味しかった。ソクユンのすぐ隣の席には初めて参加した女性がいた。自己紹介の時に言っていた名前を思い出した。「チョ・エソン」。彼女の顔が気になったが、すぐ隣なので首を横に傾けて見るにはあからさまだったので、横目で見てみたら悪くない顔だった。
食事を終えて2次会の場所へ向かって歩いていると、エソンの後ろ姿が見えた。スタイルが良く見えた。少し盛り上がったお尻がジーンズによく似合っていた。顔は特別美人とは言えなかったので、食事の時は特に興味はなかったが、自分と同じ新入会員で年齢も同じくらいだった。聞くとソクユンより一歳年下とのことで、隣の席で話をして少し仲良くなった。
さっき彼女の後ろ姿を見た時から段々と興味が湧いてきていた。大学生の時は違ったが、歳を重ねるごとに相手の顔を見るのではなくスタイルを重視するようになった。平凡な会社員の自分が顔もスタイルもいい女性なんて到底無理である。顔とスタイルのどちらかを選ばなければならないなら、後者を選ぶようになった。
2次会の居酒屋で、ソクユンはエソンの隣の席に座ろうと考えていた。 隣の席に座ってもっと仲良くなりたかったのだ。 音楽がうるさい居酒屋だった。お酒が出ると乾杯をし、賑やかな雰囲気の中ソクユンはエソンとそっと小声で会話を交わし、今度一緒にご飯を食べに行こうと誘った。
そう話しながら他の人には見えないように携帯電話をテーブルの下にそっと差し出した。エソンは自分の携帯電話番号を教えてくれた。その日の集まりは2次会で終わった。それ以来、ソクユンはエソンに1週間に1度メッセージを送った。まだ親しい間柄でもないのにいきなり電話をするのは気が引けた。 そうして2ヶ月ほど連絡を取り合った。
女性の心をつかむには、持続的かつ継続的な関心を表現することが最も重要であることを、これまでの恋愛経験で学んだ。それから自然と2人でご飯を食べるようになった。3度目のデートで付き合うことになった。付き合うまで3ヶ月かかった。ソクユンは3度のデートの間、優しくて思いやりのある行動に徹した。容姿がいい男なら簡単に女性の心を奪うことができたかもしれないが、ソクユンのような平凡な男が女性の心を射止めるには、親しみやすさと持続的な関心を武器に勝負しなければならないことはよく分かっていた。