10話 秘密(メアリー)
「て、感じかな。」
彼の語り口調は上手で、まるでこの場でその出来事が起きている、
そんな風に錯覚させられた。
「この場所でそんなことが…」
想像していたよりもずっと切ない思い出話に私は
思わず言葉が詰まってしまった。
アルフィード様は少し微笑んで頷くと言った。
「メアリー嬢、良かったら中に入りませんか?」
「え、、いいのですか?」
「うん。」
私たちは塔の裏にある扉に近づいた。
すると…くるくるっと、扉の一部が回転しておびただしい量の数式が
びっしり書いてある木の板が出現した。
「!?」
「これが鍵。何度来ても毎回問題が違うので不思議です。」
そう言いながら、考えるそぶりも見せずにドアノブのダイヤルを回す。
わあ。さらっと解いてたけどどう見てもやばい難易度だよね。
しかも毎回違うってことはこれ、初見の問題だったってことだよね。
改めて彼のすごさを実感しつつ慌てて追いかける。
「これがお話の螺旋階段ですのね…。」
「足元が少し滑るかも。気を付けてください。」
「はい。」
少し上ると彼はリビングだという場所に案内してくれた。
他にも研究室だとか図書館だとか。
そしてどんどん上へ行き、ついに最上階、展望台のような場所に着く。
あたりには一面草原が広がっており、所々に花が咲き誇っている。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「ん?」
「なぜ私にこの場所を教えてくださったんですか?」
こんなに大切であろう場所を、なぜ私に。
たかが数回会っただけなのに。
「そうですね、、、貴女に一つ、秘密を話しておきたいと思ったから。」
「???」
◆◆◆
「メアリー嬢は何か、大きな秘密を抱えているのではありませんか?」
「え、、」
周りの世界ごと不気味なほど静かなこの場所に彼と私の音だけが
くっきりと響いている。
私は何も答えられないまま静かにアルフィード様を見つめ返していた。




