別視点 とりかご(アルフィード)
今日はメアリー嬢と街に行く。
俺は前の日の晩から緊張しまくっていた。
女性と二人っきりで出かけたことが、今までにあっただろうか。
彼女は何が好きなんだろうか?
どこに行ったら喜ぶだろうか?
どんなことを話そうか?
どんな服で行こうか?
…etc.
「フィル兄さん、どうしよう。」
◆◆◆
「ふはっ。くっっ…。」
兄さんは声が出ないほど笑って苦しそうだ。
「俺、、、この上ないほど真剣なんだけど。」
「いや…お前が普通のことで悩んでんのがツボにはまってさ…。」
まだヒイヒイ言いながらもアドバイスしてくれることになった。
「さて、アル君。俺が女の子を落とすとき、どうすると思う?」
「先生。わかりません。」
「正直でよろしい。俺ならね、ギャップを見せる。
いつもと違う服、髪型、しゃべり方。」
「…を、作るってこと?」
「うーん。ちょっと違うかな。例えばアルだったら…」
俺は普段から王族らしいふるまいを心掛けている。
フィル兄さん曰く、家族といるときのような少し崩した態度で
敢えて接することで女性はドキッとするんだとか。
なるほど?
過去一の難問にぶち当たった気がする。
よく理解ができない。
「とりあえず、できるだけ俺達と接するみたいに。」
ここ、テストに出ます。忘れないでね。と微笑む兄。
そして当日。
国王の銅像前での待ち合わせ。
思ったよりも早く着いてしまった。
なんとなく本を読む。
「お待たせしてしまってごめんなさい…」
柔らかく澄んだ声が聞こえる。
顔を上げる。
思考停止。
綺麗だった。
彼女は町娘のような変装をしていたが可愛らしさは全く隠れていない。
むしろ…
フィル兄さんの言うギャップとやらを食らった気がする。
そんな俺にはとある悩みがある。
彼女と前回話してみて、数回文通をしてみて分かったこと。
――――絶対に俺を異性として意識していないよな。
婚約は義務のようなものでただの友人的なものとでも思っているのだろう。
自分ごときがお時間取らせてごめんなさい。
そんな申し訳なさを言葉の端々から感じた。
何言ってるんだ。
今の俺には君と過ごす時間こそが何よりも価値のあるものなのに。
外の世界から完全に遮断してずっと閉じ込めてしまいたい。
そしてそこで永遠よりも長い時間を二人で過ごせたら幸せだろうな。
そう。この男の唯一ともいえる欠点は、、、病的な愛の重さだった。




