別視点 塵も積もれば山となる(アルフィード)
プリムラ商会のオーナーは、、、
なんと俺の二つ下の少女。まだたった七歳。
俺が驚いていると一緒に調査結果を覗いていた兄、
第二王子のフィリップが苦笑する。
「アルも十分ヤバいけどね。」
「だってさ、フィル兄さん、
この商会たった一年で業績がえげつないことになってる」
――――たった七歳の少女があのパンを生み出したなんて。
俺は知識なんて優秀だという肩書を得るための道具
生きているだけで無駄に増えていくごみだと思っていた。
だけどあのパン。考えれば原理は想像がついたけど
あれを一から生み出すにはどれだけの知識が必要?
「ちりも積もれば山となる」
遠い国の書物で見た言葉。あれは確か小さなものが集まると
巨大になることを表す言葉だけど…
知識を蓄えれば肩書なんて比じゃないものが生み出せるのでは?
俺はまだ見ぬ少女に俄然興味が湧いた。
調べてみると彼女はレシピだけでなく幅広い分野で
画期的な商品を生み出していた。
それも、たった彼女一人だけで。
情報を集めれば集めるほどこの子は面白い。
そう言えば王様が婚約者を決めろって
うるさいんだよな。
――――
俺は王様に婚約を申し込む手紙を送ってもらった。
◆◆◆
それから数年がたった。俺は知識を蓄えるためあらゆる研究に没頭した。
知識は実際、様々な所で役立った。
このころには、知識を得ること自体に楽しみすら感じていた。
そして研究がひと段落して久しぶりに母上とお茶をする。
「アルっ…!あなたまだ婚約者と会ったことがないのですか?」
そんなに驚かなくても。
しかし相当まずいことだったらしい。
母は父と相談してマリンフェスト領での仕事を俺に振った。
確かに彼女と、話してみるのも面白そうだ。
姿絵で見た彼女の淡い綺麗な水色の髪に合わせた花に俺の色、
白い花を混ぜてブーケを作った。
女性に贈り物なんてしたことがない。ただ知識通りに。
そして――――
「メアリー嬢っ!」
「アルフィードさま?」
体調が悪いと聞いたので花だけ預けて出直そうと思ったのに。
毛布にくるまったメアリー嬢が自室から顔を出した。
寝ぼけているのか目をこすりながら。
…え、可愛い。
姉君のナタリー嬢には会ったことがあるが彼女より柔らかい雰囲気。
顔はなかなか見ないほど整っているが可愛らしい、と言った方が
しっくりくる。
姿絵では感じられなかった彼女の雰囲気。
その後二人でお茶をする。バルコニーに出ると王宮とはまた違う
海辺ならではの美しい景色が広がっている。
婚約者とはどんな会話をするものなんだろう?
俺は研究の話をしてみる。
引かれるだろうか。
しかしその不安は一瞬にして消し飛んだ。
「まぁ!素晴らしいですわっ!」
緑色の目をキラキラさせて真剣に話を聞いてくれた。
楽しそうに質問もしながら。
「私はいつか、誰でも努力が報われてちょっと贅沢ができる、
そんな風になってほしいと思いますわ。」
彼女が商会を営んでいることは知っていたが
貴族令嬢とは思えない、この世界のすべてを知っているかのような
表情でぽつりと漏らした言葉。
そこには彼女のすべてが滲み出ている気さえした。
きっと俺は、、、
彼女に出会う前からすでに、恋に落ちていたのだろう。




