不審な電話
「もしもし?」
仕事が休みで、平日から家でゆったりしていたところに、家の電話が鳴る。他に誰もいないので仕方なく電話を取ると。
『あ、○○さんのお宅ですか?』
「はい、そうですが」
『私、児玉と申します。今日、お宅のお子さんに助けてもらったのでお礼の電話をさせていただきました』
「はぁ……?」
電話の相手曰く、小学2年生の息子が、横断歩道でおばあさんの手を取って先導してくれたというのだ。確かに私には息子がいるし、小学2年生。今日は学校に行っているので辻褄は合う。
「そうでしたか、わざわざ連絡ありがとうございます」
『いえ、直接お礼に行きたいのですが、腰が悪いので、お電話で申し訳ないです。あ、ご住所をお聞きしてもよろしいですか?』
突然住所を聞かれ、思わず身構えてしまい。
「……いえ、こちらからまたご連絡差し上げます。息子にも話を聞きたいですし」
『そうですか。では、お電話お待ちしておりますね』
その後、通話を終える。良い事をした息子に何かご褒美でもやろうかと思う反面、なぜか引っかかるところもあるので、息子の話を聞いてからにしようと思っていたが、再び、電話がかかってくる。
「もしもし」
『あ、○○さんのお宅ですか?』
「はい、そうですが」
そこで、気づく。この声、息子に助けてもらったと言っていた人と同じだ。
『私、児玉と申します。今日、お宅のお子さんに助けてもらったのでお礼の電話をさせていただきました』
「えっと、先ほども申し上げましたがまだ確認してから……」
『………』
沈黙。そして。
『……直接お礼に行きたいのですが、腰が悪いので、お電話で申し訳ないです』
「す、すみませんお礼とかじゃなく」
『近いうちに、お伺いさせてください』
電話が切られる。
「……何なんだよ」
数分後。再び電話が鳴り。
『あ、○○さんのお宅ですか?』
「……はい、そうですが」
この声。さっきの人だ。
『私、児玉と申します。今日、お宅のお子さんに助けてもらったのでお礼の電話をさせていただきました』
「すみません、何度も電話しないでもらえますか? これ以上電話して来るなら警察に通報しますよ」
『………』
反応はない。そのまま通話を終えようとした間際。
『もう少しだったのに』
ブツッと音と共に電話が切れる。
「何だったんだ……」
ただの変な電話と一蹴するには気味が悪い。もやもやしている中、やがて息子が帰ってくる。
「ただいま」
「お帰り。なぁ、ちょっといいか?」
息子に電話の件を尋ねると。
「何それ知らない」
「……やっぱりか」
もしかしたら空き巣の類かもしれない。そう思っていると。
「あ、でも、事故があったよ」
「事故?」
「友達と帰ってたらドーンって音がして、後ろ見たら誰かが車にぶつかったみたいで」
「事故……」
「警察の人が来て、何か見たかって聞かれたよ」
もしかして……SNSで検索してみると……息子の言う通り、事故について情報が飛び交っていた。どうやら信号無視で車が横断歩道を通行している歩行者を撥ねたそうだ。被害者の名前は……
「……児玉」
あの電話の主と同じ名前だ。これは偶然なのか……どちらにしても、なぜうちに電話をかけてきたのか。どうしてうちの電話番号を知っていたのだろうか。真実は分からないまま、二度と電話がかかってくることはなかった。
完




