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結 反省会!

 ――――。


 ダンジョンではなんやかんやあったが、なんとか生きて帰れたことを喜ぼう。まさか、最後の最後に“あんな魔物”が出てくるなんてな……。


 依頼を受けたときに利用した酒場に戻った俺たちは、テーブルを囲んで飲み物を注文した。……さぁて、ここからは反省会だ。


「どうぞ、バジニー酒を五人分です」

「ん、ありがと」


 目の前に人数分の樽ジョッキが並べられる。

 酒気は薄いが、すっきりとした甘さがあって飲みやすい酒だ。


「結局、逃げ帰っちまったが……」

「最深部までの探索はできましたし、宝箱の回収という目的は達成できたと考えていいでしょう。それでは、皆さんに正当な報酬を払います」


 お嬢ちゃんが懐から取り出した小さな箱。

 あまり目にすることのない、青い宝箱だった。


 ……ん?

 かなり小さいが、これには見覚えがあるぞ……。

 あの時の、ミミックが擬態していた――例の三等級以上あるという宝箱だ。


「回収できたのか……!?」

「チェシャのおかげでね」


 マルールの手が淡く光った。魔法が使われるときに発せられる魔法光だ。机の上で大きくなったそれに、彼女は手をかけ、ゆっくりと蓋を開いて中を覗いた。


「流石にあそこまでは他の冒険者が潜ることは無かったのね。ほら――」


 黙ってその様子を眺めていた俺たちに、マルールが柔らかく微笑む。中身を抜く様子を見せないままに、くるりと箱を回した。


「わあ――」

「こいつぁ凄ぇ……」


 流石に宝箱いっぱいの金銀財宝とはいかなかったけれど、中には底が見えなくなる程度には物で埋まっていた。


 これまでダンジョンの肥やしになってきた、他の冒険者の所持品が殆ど。それでも、売れば金になる装飾品や、研いだり磨き直せば十分使える装備などが入っていた。


 いつの間に運び出したのだろう。依頼主を見失わないように動いていた以上、彼女の相棒であるチェシャがわざわざ運び出したのだろうが、普通に考えれば一人じゃ絶対に無理な重さだ。マルールの言っていた、『人一倍力持ち』ってのは本当だったらしい。


「これを全部差し上げます」

「ほ、本当にいいのか……!?」


 使えそうなものは使うとして、他の物を全部売れば当分の間食事には困らない額になるだろう。駆け出しの冒険者が得る報酬としては、破格としか言いようがない。


 事前に交わした契約とはいえ、これだけの宝を前にして『全部やる』と言えるものか? こういうのは依頼主も受けた方も目が眩んで、揉めに揉めてもおかしくないと思うんだが。やっぱりこの依頼者……普通とは遠くかけ離れている。


「むしろ、空だった時のために補填の金貨を払う手間が省けたので、こちらとしても大助かり。何度も言っているように――もとより、私が興味があるのは箱の方だから」


 そう言って、マルールはにっこりと笑った。


 箱なんてそんな使い勝手も悪く金になりにくいものを欲しがるのは、俺たちとしては理解のし難いことだったが、両者の間で契約が成立したのならこれ以上は言うことはない。


 こんなに見返りの良い依頼は久しぶり――いや、初めてだった。


 換金した金で装備を買ったり手入れすれば、戦いにおける安心度が増す。この先の、もっと難しい依頼にだって挑戦することができる。もちろん、もっと稼ぎのよさそうな、別の大陸に足を運ぶことだって。


 世界に名の轟く一流になる日も、そう遠くない気がしてきた。


「まぁ、また何かお宝の気配がしたら、いつでも頼ってくれよ」

「えぇ、そのときにはきっとね。今日よりもいい働きを期待してるわ」


 そう言って毒づかれても、悪い気はしない。

 大きく手を振って、俺たちは解散したのだった。

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