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突然の知らせ (侯爵家当主視点)

「というのが、今回の顛末でした」


 ……その報告を侯爵家当主である私、カルクスが聞いたのは、仕事がようやく終わった頃だった。

 私は隠しきれない頭痛を堪えるように頭を押さえながら、告げた。


「……マーリクは愚か者だったか」


「ええ、それに関しては言い訳のしようもないと思います」


 私の言葉にそう頷いて見せたのは、今回のことを報告してきた娘、マーガレットだった。

 その姿からは一切、傷ついた様子はなく、私は娘に知られないように小さく嘆息を漏らす。

 しかし、前見た時よりも生き生き……もとい、つやつやしている用に見える気もするが気のせいだろうか?

 そこまで考え、今はそんなこといいと私はその考えを首から振り払った。

 今必要なのは、この胸にある怒りを振り払うことなのだから。


「とにかく何が何でも、マーリクを捕まえさせねばならんな。早急に伯爵家に連絡を入れて確保させ……」


「その必要はないですわ、お父様」


 ……しかし、その私の言葉は途中でマーガレットに遮られることになった。

 マーガレットの方を見ると、やけにすました顔の娘が立っていて、私は直感的に娘が何かをたくらんでいることを理解する。

 その様子をみる限り、マーガレットは本気でマーリクなどどうだっていいと思っているのだろう。

 とはいえ、それだからとこれは簡単に終わらせていいことではない。

 私はあえて厳かな表情を顔に張り付け、口を開く。


「……何を言っているマーガレット? 今回の一件はそう軽視していものでは……」


「いえ、マーリクの件に関しては軽視すべき問題ですわ」


「何をいっている?」


「ハンスのお陰で私は傷もなく、マーリクは震えて逃げていきました。この先、私が危害を与えられる可能性は低い。それに」


 そこでまっすぐと私を見ながら、マーガレットは尋ねてくる。


「ここでこれ以上に伯爵家に負担をかけるべきと思いますか?」


「……っ!」


 その言葉に私は思わず黙る。

 マーガレットの指摘は正論だった。

 婚約破棄において、マーリクが行ったことは絶対にやってはならないことで、その責を拭うために伯爵家はマーリクを指名手配した。


 ……だからといって完全に家族の情まで消えた訳ではないのだ。


 ここでマーリクのことを言えば、表面上は伯爵家は喜んで見せるだろう。

 しかし、その内心までそう思っているとは断言できなかった。

 故に黙った私に対して、マーガレットはほほえみ口を開く。


「私は、そんなことよりも致命的な問題が存在していると思っているんです。その問題があるが故に、マーリクは私が自分を思っていると勘違いしていました」


「……何の話だ?」


 そう私は問いかけつつ、それでももうすでにマーガレットが何を言おうとしているのか理解していた。

 せめてもの抵抗にとぼけようとするが、もうすでに手遅れだった。

 にっこりと笑い、マーガレットは告げる。


「私の婚約者がいない、それが一番の問題なのです。お父様」

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