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幸せ

「え?」


 呆然と私を見上げるハンス。

 その視線に胸を張りながら、私は口を開く。


「当たり前じゃない。貴方に助けられたあの日から私は貴方が大好きなのよ?」


 自分の頬が真っ赤に染まるのを理解しながら、私は口を止めない。


「それと勘違いしてるみたいだけど、私は貴方の望みを叶えたことなんてないわよ」


 にっこりと笑いながら私はさらに続ける。


「だって、私はただ自分のやりたいことをやっていただけなのだから」


 そう、実のところハンスの言葉は本当に勘違いでしかないのだ。

 何せ、ハンスと一緒に孤児院に行くのも、学校の計画に関しても、全て私がやりたいことでしかないのだから。


「ハンスが私の側にいたいという気持ちをくみ取って、側にいたことなんて私にはないの。私がハンスの側にいたくて、その為に動いていただけなのだから。分かった?」


「は、はい……」


 私の念押しに、かすれた声で答えたハンスに私は頷き、そして満面の笑顔を浮かべた。


「だから、もう逃がさないからね?」


「……え?」


「今まで私が気を使って言わないにも関わらず、散々私に思いをささやいてきたわね、ハンス」


 そういってにっこりと笑うと、ハンスはとたんに青ざめる。

 そんなハンスに私は優しく、けれど異論を認めない声で告げた。


「散々私の思いをもてあそんだ報い。きちんと受けてもらうから」


 瞬間、ぴしりとハンスは固まる。

 その姿にくすくすと笑って、私は告げる。


「それじゃ、帰りましょうか」


「は?」


「長いしすぎたし、お父様にマーリクのことを報告しないといけないしね」


 それだけ言うと、私はさっさと歩き出す。


「お、お嬢様、お待ちください!」


「いやよ」


 慌てて私を追いかけてくるハンスの気配を感じながら、私は歩く速度を上げる。

 後ろから追いかけてくるハンスの困惑具合に、歩きながら私はくすりと笑いを漏らす。

 何もしらないハンスからすれば、この状態は何がまるで何が起きてるのか分からないだろう。


 けれど、私はあえてこのままで放置しておくことにした。


 どうせ、もう少しでハンスも私がここで思いを告げた理由を知ることになる。

 それまでの間、ハンスにはうろたえていてもらおう。


 今までの鈍感の仕返しにそんなことを考えながら歩く私の顔には、隠しきれない幸せが浮かんでいた。

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