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鈍感

間違えて別作品に投稿しておりました!

申し訳ありません!

「……っ!?」


 ハンスの顔が朱に染まったのはその瞬間だった。

 その姿にかつてのことを思い出しているんだろうと、私は小さく笑う。

 笑いながら私の脳裏に蘇っていたのは、かつての記憶だった。

 マーリクの言葉を忘れることができず、呆然とすることしかできなかった時のこと。


 そんな私に必死に言葉を投げかけてくれた人間こそ、ハンスだった。

 落ち込む私を立ち直らせる為に、ハンスは様々なことを試していて、突然の告白はその中の出来事だった。

 そこまで思い出して、私は笑う。


「まさか、あんなタイミングで告白なんかされるなんて思っていなくて、私も驚いちゃったけど」


「っ! お、お嬢様!?」


 そのときにはもうハンスは耳まで真っ赤で、私はさらに笑ってしまう。

 けれど、その時どん底にいた私を救ったのは、間違いなくそのとき側にいてくれたハンスだった。


「その人は本当に私にいろいろなことをしてくれたの。なんと私のお父様を私の目の前に引っ張りだしてきてくれたの」


「……それ、はとんでもない人間ですね」


 そう話している内に、今度はハンスの表情は青くなっていく。

 その様子に笑いを堪えながら、私は告げる。


「ええ。その人の立場を考えれば、あり得ないことだったわ。でも、その時お父様からあの言葉を引き出してくれたから、今の私があるの」


 ──お前は自慢の娘だ。


 それは私がお父様からほしくてほしくてたまらなかった言葉。

 その言葉をハンスは、私の目の前までお父様を連れてきて、引き出してくれた。

 なのに目の前の執事は、自分のしたことの意味をまだ理解していなくて。

 いつの間にか私の方を見ていたハンスへと、ほほえみ私は口を開いた。


「だから私はその人に恋をしたの」


「お、じょうさま?」


 私の言葉に、徐々にハンスの顔が赤くなっていく。

 自分の顔にも熱が集まってくるのを感じながら、私は顔をそらす。

 いつか、こうしてハンスにこのことを告げる日を私は待ち望んでいた。

 だからといって恥ずかしさを感じない訳がなかった。


 ……けれど、私がそんなことを考えていられたのは、ぶつぶつと呟くハンスの声を聞くまでだった。


「勘違いするな、これは俺の話じゃない……!」


「え?」


 整った横顔を私に向け、ぶつぶつとそう呟くハンス。

 その姿に、一拍の後に私は理解する。


 この鈍感執事は、この期に及んで私の気持ちに気づいていないことを。


 その姿に私の胸に、今更ながら苛立ちがわき上がってくる。

 私だって分かっている。

 ハンスが頑なに私の思いがないと思っているのは、身分という大きな壁が存在するからだと。

 私が今までハンスに思いを告げなかった理由も、その問題がまだ完全に片づいていなかったからだ。


 けれど、この期に及んでまるで気づかないハンスの姿に、さすがの私も我慢の限界を迎えた。


 もういっそのことひっぱたいてやろうか、なんて考えが頭に浮かぶ。

 もちろん、今回助けてくれたハンスに暴力をふるうつもりはないが、其れほどに私は苛立ちを感じていて。


「悪いのは、ハンスだからね」


 ふと、最高の方法を私が気づいたのはその時だった。

 にんまりと私は笑みを浮かべ、未だ横顔を私に向けているハンスへと体を寄せる。


「いいか、勘違い……お嬢様?」


 その途中、さすがのハンスも私の行動に気づく。

 しかし、もうその時すでに手遅れだった。


「あむ」


 ──次の瞬間、私はハンスの耳たぶを口に含んだ。

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