表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

その人の話

「実はね、私の好きな人って私のことを好きみたいなの」


「……っ!」


 私がそうささやいた瞬間、今まで赤く染まっていたハンスの顔が一瞬で青くなった。

 その様子に私は少しおもしろさを感じながらも、続ける。


「なのにね、その人は私の気持ちに気づいてないのよ。いつも見当違いな勘違いばかりしてるの」


「……それは同じお嬢様を慕う人間として、許せない人間ですね」


 隠しきれない感情を滲ませ、そう告げたハンスに私は思わず笑ってしまいそうになる。

 その正体が分かったとき、この人はどんな反応をするのか、そう思って。

 けれど、その内心を必死に押さえ、私は続ける。


「でもね、その人はそれも仕方ないと思えるくらいにすごい人なの」


 私の言葉に、再度ハンスの表情が僅かにゆがむ。


「私の心を何度も救ってくれたのだから」


「……そう、なのですか」


 私の言葉に、そう内心を必死に押し殺しながら、ハンスはそう告げる。


「悔しいですが、それなら私には何もいえませんね」


「いえ、貴方なら文句を言いそうだけどね」


「……え?」


 私の言葉に呆然とした顔をするハンスに、私は思わず笑ってしまう。

 しかし、私の言うことに反論する人間もいないだろう。

 何せ、これだけ私のことを救っておきながら、自分を責め続ける人間こそハンスなのだから。

 顔に笑みを浮かべた状態のまま、私はさらに続ける。


「私はもともとその人のことを弟くらいにしか思ってなかったの。犬みたいな人でね。私に恩があるから、てずっと側にいる過保護な人だったし、家族くらいにしか思っていなかったの」


「……え?」


 今まで呆然としていたハンスの体が反応したのは、その話をした瞬間だった。

 ようやく何かに気づき始めたハンスに、私は内心ため息をもらす。

 さすが今まで私がさりげなくアピールしても一切気づかない鈍感だと。


 準備の整っていなかった今までは、それでも仕方ないと流していた。


「でも、その人は私が落ち込んでいた時に言ってくれたの」


 でも、もう今の私は引き返すつもりはなかった。

 顔に熱が集まっているのを感じながら、覚悟を決めて私はハンスの耳にささやく。


「絶対にそんなことありえないし、自分が否定してみせる。なぜなら自分は、貴女のことが好きだから。ってね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ