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期待

「お、お嬢様!?」


 突然の事態に、ハンスは裏返った声を上げる。

 しかし、そんなハンスに私は首を横に振った。


「いいから、続きを教えて」


 自分でも普通じゃないと分かる表情。

 それに、一瞬ハンスが気圧されたようにうつむくのが分かる。

 けれど、次の瞬間ハンスは意を決したように顔をあげる。


「お嬢様、一つお願いがございます」


 瞬間、私は思わず息をのんでいた。

 どうしようもなく、胸の中では期待が膨れるのに私は気づいていた。

 だが、それを責められる人間などいはしないだろう。

 なぜなら、私はこの瞬間がくるのを、ずっと待っていたのだから。


 ──ハンスが私の思いに気づいてくれるその瞬間を。


「お嬢様に好きな方がいると聞き、ようやく私は理解しました。だから、私から言わせてください」


 ハンスの真剣な目が私の視線をまっすぐ射抜く。

 どうしようもなく震える心を感じながら、私はゆっくりとうなづいた。

 その瞬間私のこころは、間違いなく過去最高に高鳴っていたといっていいだろう。

 だから。


「……私をお嬢様付きからはずしてください」


「は?」


 ……次のハンスの言葉が私には一切理解できなかった。

 何を言ってるのか分からず、呆然と立ち尽くす私に対し、ハンスはその表情に悲痛な覚悟を浮かべながら続ける。


「これは私の口から言うべきこと。そう理解しながら、お嬢様のお気持ちをしるまで躊躇した私をお許しください」


「いや、その、どうして?」


 思わずそう問いかけた私に対し、ハンスは小首を傾げ告げる。


「それはこちらの言葉ですよ、お嬢様。好きな方がいるなら、男の使用人など障害以外の何者でもないではありませんか」


 瞬間、ハンスに怒りをぶつけなかった私は、まさに賞賛すべき忍耐を持っていただろう。

 唇の端が震えるのを感じながら、それでも私は何とか自分の怒りを胸の奥に封じ込める。

 けれど、その怒りが暴発するまでどれだけ持つか、自分でもわからない。


 ……全ては、一度でも期待をしてしまったが故に。


「大丈夫ですお嬢様。私ははずされることを何も思っていませんから!」


 そんな私に気づくことなく、ハンスはそう言い募る。

 さすがにそんなハンスの姿に、私はさすがに自分を押さえられなくなって口を開こうとして。


「……それに私は許されない失態を犯したのですから」


 真剣そのものな表情でハンスがそう告げたのは、その瞬間だった。

二日に一回更新に更新落ちます!

ただ、もう少しで完結なのでそれ以上更新頻度は落ちないと思います!

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