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「は?」


 マーリクの告げた言葉を聞き、私の口からそんな言葉が漏れる。

 それは心からの疑問があふれた結果だが、それを聞いてもマーリクの顔から自信ありげな表情が消えることはなかった。


「誤魔化さなくていい。俺はわかっているから」


「……何を根拠にそんな思いこみをしているの?」


 思わずそう聞いた私に、マーリクは得意げに笑い告げた。


「そんなの分かり切っているだろうが。……お前が婚約者をまだ決めてないからだよ」


 その瞬間、ようやく私はマーリクの自信の理由を知ることになった。

 私は次期侯爵家を継ぐ人間だ。

 そんな人間が婚約者をとっていないのは、なにかあると考えたのだろう。

 それは中々鋭い想像と言っていい。


「悪いけど、それはただの勘違いよ」


 しかし、その理由はマーリクの存在ではなかった。

 多少の呆れを滲ませ、私は告げる。


「私が婚約者をとっていないのは、他に迎えたい人間がいるからよ」


「……は?」


「……なっ!」


 瞬間、マーリクが呆然とした声を上げ、ハンスが衝撃を隠せない様子で私の方へと振り向く。

 ……どうしてハンスまでそんな反応をとるのか、一瞬私の胸にそんな怒りが浮かぶ。

 しかし、それを胸の奥にしまい込んで、私はマーリクに笑いかけた。


「で、これだけ?」


「……っ!」


 惚けていたマーリクの顔が、徐々に焦りの表情に変わっていく。

 その変化が、何より雄弁にマーリクが本当に私が思いを寄せていると信じていたことを物語っていて、私は嘆息をつきそうになる。

 自分から全てを台無しにしておいて、どれだけ都合がいいのかと。


 ……けれど、その私の認識さえ間違っていた。


「い、いや、強がりだ! 本当は俺のことを思っているんだろう、マーガレット?」


 顔をひきつらせ、そう問いかけてきたマーリクに、私は顔をひきつらせる。

 そういう態度を私がとってしまう程に、あまりにもマーリクの態度はお粗末だった。

 そのあまりの様子に、私もハンスも言葉を失う。

 けれど、その沈黙を同意と判断したのか、マーリクは意気揚々と口を開く。


「そうだ! そうじゃなきゃ俺をこんな場所につれてくるはずがない! なあ、そうだろ!」


 もはやそのときになると、私は頭痛を覚えていた。

 それを必死に堪え、私は淡々とマーリクに尋ねる。


「マーリクどうして貴方はここにいたの?」


「は? いきなり……」


「いいから答えて」


 ぴしゃりとそう告げると、マーリクは少し迷った後口を開く。


「……前々から、お前が街で慈善事業をしていることは知っていたから、張り込んでいたら見つかるかと」


 それを聞いて、私はハンスの方へと目を向ける。

 そんな私に、ハンスは無言で頷く。

 それは、ハンスもまた孤児院に危険はないと判断したことを示していて。


 ──それを理解し、私はにっこりとマーリクに笑いかけた。


「ありがとう。もう用は済んだから、どこに行ってくれてもかまわないわよ」

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