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遭遇

 まるで想像もしていなかった人物との遭遇。

 それに一瞬私は、固まる。

 だが、すぐに私は平静さを取り戻す。


 なぜなら、彼の記憶は私にとってもはや遠いものでしかないのだから。

 故に私は、にっこりと笑って告げる。


「あら、マーリクこんなところにいたの? もしかして、お友達の貴族令息達にも追い出されちゃったのね」


「……っ!」


 瞬間、明らかにマーリクの顔がこわばる。

 おそらく、自身がいたところを知られているとは思ってもいなかったのだろう。

 しかしその態度に一切反応せず私は続ける。


「侯爵家の人間である私が何も知らないと思ったの? もう伯爵家から全部説明は来ているわよ。貴方の処遇についても全部」


 実のところ、私の動揺が一瞬であった理由も、それが原因だった。

 マーリクの処遇について知っていたが故に、私はほとんど動揺もしなかったのだ。

 そんな私の反応が予想外だったのか、マーリクは茫然としている。

 その隙に、自然とハンスは私の手を引く。


「それではお嬢様、仕事が残っております。そろそろ戻りましょう」


「……ま、待て!」


 そのハンスの行動はなめらかではあったが、さすがにマーリクも制止の声を上げた。


「お前、俺がマーガレットと話している時に口を挟んで失礼だとは思わないの……」


「それは今の貴方に言えることです」


「……っ!」


 しかし、マーリクが強気でいられたのはそこまでだった。

 マーリクをみるハンスの冷ややかな目に、気圧されたようにマーリクは口ごもる。


「確かに、貴方がお嬢様のところにおいたころは私が敬意を払うべき方でした。……しかし、貴方はお嬢様手を振り払われた。それも一方的かつ最低な形で」


「それ、は違うんだ」


「それだけ言い訳しようが変わりませんよ。貴方はあの時点から、敵意をむけられる存在になったのですから」


 きっぱりとした言葉に、マーリクは言葉を失う。

 けれど、すぐに再度口を開いた。


「違う! 俺はだまされていたんだ! 俺も被害者なんだ! 頼むから少し話を……」


 その語りように、私はここまで袖にされてよくここまで言えるもんだと、場違いな感心を抱く。

 そんな私と対照的に顔をしかめたハンスは、私の手を優しく引く。


「……行きましょうお嬢様」


「ごめん、ハンス」


 ……けれど、私はその場から動くことはなかった。


「なっ!? お嬢様!」


 そんな私の反応を想像していなかったのか、ハンスは驚愕し。

 ……すこしの逡巡の後、苦渋の表情でマーリクへと口を開いた。


「言っておきますが、なにか行動を起こした瞬間私は貴方に何もしていい立場にある。……それを理解したならば、お嬢様は貴方と話していいと仰せです」


「あ、ああ! ありがとうマーガレット!」


 その瞬間、マーリクの顔に喜色が浮かぶ。

 ……けれどそれは、ねっとりとした粘度のある表情だった。

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