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7話カフェ

困惑するエドをメフィストは静かに見つめました。

「それでは、最後のお話をしましょうか。」

メフィストは、真面目な顔でそういいました。

「最後の話?」

春江は、今までと少し態度の違うメフィストが気になりました。


「はい。これはカフェのお話です。」


メフィストは、静かに通る声で物悲くはなし、一度、言葉を切ると猫耳ファギアを手にしました。

「当時、珈琲は高級品で、紳士の飲み物とされていました。

西洋では、珈琲を給仕するのは男性が定番のようですが、日本では女性が一般的だったようです。

と、言うわけで、美味しい珈琲を彼女に淹れてもらいましょう。」

と、メフィストがフィギアを宙に投げると、今風の可愛らしいメイド服の少女に変身しました。


「ご主人様、お嬢様、宜しくニャン。」

猫耳少女は左手を丸めて、招き猫のポーズで挨拶しました。

「にゃん……。」

春江は、膨らんだ袖の異様に胸の強調された服装に少し驚いて呟きました。


家守は、猫耳少女を見て、不機嫌に眉を寄せました。そして、一歩前に、進むと、大きく右手を前につきだして、猫耳少女のメイド服をAラインの地味な物に変えてしまいました。

「失礼ですが、あの様なバサバサと広がる短いスカートの給仕など、この屋敷では存在は許されません!

コーヒーがご所望なら、私がお入れいたします。」

家守は、自分の仕事の領域を荒らすメフィストが、客とはいえ、許すことが出来ませんでした。

怒る家守の様子を、メフィストは面倒くさそうに渋い顔で見つめながら、ため息をつきました。

「全く、これだから、頭の古い妖精は嫌になりますよ。

家守さん、あなた、今頃になっても、メイドカフェもご存じ無いのではありませんか?」

メフィストは、自慢のメイド服をダサい服に変えられて、不機嫌に挑発をします。

「存じません。こちらの屋敷のお茶会は、そこいら辺の喫茶店などとは、レベルが違いますっ。」

家守がメフィストを睨みました。が、メフィストは、動じることなく家守に静かに聞きました。


「それでは…こちらではどうでしょうか?」


メフィストの声と共に部屋は大正時代の木製のレトロなカフェに変わり、猫耳少女は、和服にエプロンドレスの大正風味のカフェの女給さんに変身しました。

「まあ…可愛らしい。」

これには春枝も大喜びです。

異世界へ逝ってしまった春江の祖父は、このような人間の喫茶店が好きな人でした。


「昔、西洋ではコーヒーは、恋の媚薬と呼ばれていました。

そのせいか、現代(いま)も昔も、カフェの給仕の女の子は、ちょっぴりエロかわいい姿が好まれるのです。」


メフィストは、帽子かけにバイオリンを持たせると一曲弾かせました。


「何が宜しいでしょうか?夢二の『宵待草』などどうでしょう?」

メフィストは、別人のような声でエドに向かって話始めました。

エドは、その声に聞き覚えがあるように驚いてメフィストを見つめました。

その様子に、満足したようにメフィストは、ゆっくりと、心の鍵を開くようにこう、エドに声をかけました。

「舞菊さん。」


それを聞いたエドは、凍りついたように立ち尽くしました。

思い出したのです。それは、遠い昔、彼女がカフェでお客さんに呼ばれていた源氏名です。


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