表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第八章 神々の世界と全てを識る天使
95/258

託された夢

(何も…見えない…何も、感じられない…)


 全身が破壊されたフィアネリスは。真っ暗な暗闇の中、一人倒れていた。何かを見ようとするも、何も見えない、何かを聞こうとするも、何も聞こえない、目も、耳も、鼻も、手も、口も、何もかも感じなくなった。

 彼女を構成するコアユニットの感覚の部分が破壊されてしまったのだ。今の彼女は、何も感じることができない暗闇の中にしかいることはできなかった。


(動いて……! まだ…私は…!)


 何も感じることができない中、フィアネリスは身体を動かそうとする。だが、バハムートに身体中を押し潰されてしまった為、何もかも動かすことができなくなっていた。


(このまま…このまま私は死ぬのですか⁉︎)


 とにかく何かできないかとフィアネリスは全て試した。しかし、どうあがいても、彼女は自身の身体を動かす事も、何もかもできなかった。


(神癒奈さん……マスター……私…)


 フィアネリスは、自分の弱さを恥じた。アズウルとの戦いを経て、彼らの側にもっと寄ろうと思っていた彼女であったが、彼らのように強くなれず、彼らのように戦い抜く事ができない、そう感じられた。


(レティ…リア…)


 意識が遠のく中、彼女は唯一であった親友のことを思い出した。これで、彼女のもとに行けるかもしれないと、諦めかけていた。その時だった。


「フィーネ。……フィーネ、起きて」


 声が聞こえた。懐かしく、愛おしい声が、彼女の耳に聞こえてきた。フィアネリスは顔を上げる。するとそこには、かつて死んだはずのレティリアがいた。


「レティリア……なぜ、どうしてここに」

「どうしてって、フィーネが呼んだんだよ? 天国の更に天国から、わざわざフィーネの為にやってきてあげたのに、その反応、何だかがっかりしちゃうなぁ」


 不貞腐れたようにむすっとした態度でレティリアはそう言う。


「フィーネ、起きて、フィーネにはまだ、守りたい仲間がたくさんいるんでしょ?」


 そう言うとレティリアはフィアネリスに手を伸ばした。フィアネリスは、体の感覚がない中、その手に手を伸ばす。すると、その手をレティリアがしっかりと掴んだ。その瞬間、感覚がなくなったはずの手に、彼女の手の感覚が感じられた。


「大丈夫、フィーネはまだここにいられる、フィーネはまだ戦える。だから、まだ諦めないで」


 レティリアは次にフィアネリスの体を抱きしめる。今度は彼女の体の感覚が感じられた。そうして、腰から足へ、背中から翼まで、どんどん触られると、フィアネリスの感覚は、蘇っていく。そうして全身の感覚が蘇ると、レティリアはフィアネリスをじっと見た。


「フィーネ、いつか話した約束があったよね、一緒に色んな世界を見て、いろんな物語を話すっていう話……ごめんね、あの約束…結局果たせなくて」


 そうしてレティリアは彼女を抱きしめる。死んだはずのレティリアの身体は、不思議と暖かかった。


「フィーネがこれまですっごく辛い思いをしたのは知ってる。そして、これからももっと辛い思いをしなくちゃいけないかもしれないのも知ってる。でも…挫けないで」


 フィアネリスの背中に何かが滴る感覚が伝わる。それは…レティリアが流した涙だった。


「フィーネは機械の天使かもしれない、けど、そんなの関係ない、フィーネはフィーネだよ、私の友達で、みんなの仲間で、物語が好きで、空も飛べる。フィーネは立派な天使なんだよ」


 そうしてレティリアはもう一度、フィアネリスをじっと見つめた。改めて見ると、彼女の瞳からぼろぼろと涙がこぼれ落ちていた。


「フィーネ、お願いがあるの、最後にしようとした約束……聞いて欲しいの」


 その手をぎゅっと握りしめると、レティリアは言った。


「私の代わりに、色んな世界の、色んな場所を見て欲しいの。私ができなかったことを、フィーネにして欲しい、一人で部屋にこもっていたフィーネに、もっともっと色んな世界を見て欲しい。空や海や大地、宇宙まで、全てをフィーネに見て欲しい。それが、私からの最後のお願い」

「レティリア…」


 フィアネリスは、それがレディリアが望んだ、彼女が死ぬ間際に言おうとした最後の願いだと分かった。でも…とフィアネリスは言う。


「でも私……もう、何も感じられません、景色を見る事も、仲間の姿を感じられるのも、何も…」

「大丈夫、フィーネ…私が、貴方に代わりの目をあげるから、耳も、鼻も、口も、肌も、全部あげるから。だからお願い…フィーネは、もっと生きて、絶望なんかに負けずに、戦って」


 そう言った瞬間、フィアネリスの暗かった視界が、大きく広がった。そこは、かつて二人で過ごしたエデンの園だった。


「フィーネ…大好きだよ……私はずっと、フィーネのそばにいるから」

「……はい」


 その言葉で、フィアネリスの意識は覚醒した。


 ーーー


 破壊されたはずのフィアネリスが目を覚ます。いや…これは、覚めていると言えるのだろうか、まるで映画のを見るように、何も感じられない彼女の視界に映像が映る。全ての五感が、フィルターを通したかのように彼女に情報が伝わり、彼女の感覚を呼び覚ました。

 その時、膨大な情報が彼女のメモリに伝わった。視界だけの情報だけではない、外の景色や天界の遠くまで、何もかもが彼女は手に取るようにわかった。


「これは…」


 つぶされたフレームの感覚もわかる。けれど、身体はまだ動く。今のままでは戦闘はできないだろう。そう思って周辺に何かないか感覚で探すと、プラントの奥に、使われてない天使の義体があるのが見えた。


「何…まだ動いている…⁉︎」


 ネアゼルは慌てて手から波動砲を連射するが、フィアネリスはなかった翼を使い、地面を這いずりながら飛ぶ、爆風で吹き飛ばされながらもプラントの奥にたどり着いたフィアネリスは、自身の胸の部分を引き裂いた。


「それは! 試作品として作った生体型のフレーム! やめろ! それに触るな!」


 ネアゼルが止めにかかるも、フィアネリスは自身の胸からコアブロックを引きちぎって取り出し、今の義体の最後の力でコアブロックを使われてない義体に差し込んだ。

 その瞬間、フィアネリスだったものの目から光が消え、倒れる。それと同時に、壁に立てかけられていた義体の目が光った。


「メインシステム、再起動」


 起動した瞬間、バハムートの爆撃を受けるが、それを壁のコードを無理矢理ちぎって離脱して回避すると、熾天使フィアネリスは飛び上がった。


「凄い…この義体……ほぼ生身の身体でありながら、出力は以前と比べ物になりません」


 手を開いてみれば、赤い血潮が流れているのを感じ、握りしめれば身体に力が伝わる。フィアネリスは目の前にいるバハムートを見た。視界は変わらずフィルターを通した不思議な感覚だが、敵の数から攻撃の範囲、弱点まで、何から何まで全てが目に見えた。


「手に取るようにわかります、貴方のしようとしている事も、これから起きる事も」

「ほざけ!」


 バハムートと機械天使から嵐のような攻撃が飛んでくるが、フィアネリスはそれを最低限の回避で避ける。波動砲やミサイルも飛んでくるが、それすらも綺麗に回避した。


「な、何故攻撃が避けられる⁉︎ これほどの弾幕を受けて」

「はて、なぜでしょうかね? 私にも何故避けれるのかは分かりません、ですが、これだけは分かります、貴方に私を倒すことはできないと」


 そう言った直後だった、上の階から、別の天使、ミカエル達が突入してきた。どうやら機械天使達からうまく抜け出せてきたようだ。


「無事ですか⁉︎ フィアネリス!」

「ええ! ですが武器がございません!」

「なら…これを!」


 ミカエルから、天使用兵装となるデバイスが投げられる。フィアネリスはそれを受け取ると、そのデバイスの名前を見た。


 ーラストダンサーー


 最後の舞手と書かれたそのデバイスを起動させると、フィアネリスの身体に装備がまとわれた。

 純白に赤のラインが描かれた外装が纏われ、両手にはいつものものより強力な対艦槍と盾が装備される。

 その姿は、正しく終末ラグナロクを告げる天使の姿だった。


「その装備は……ばかな⁉︎ そんな筈は! 最終究極互換装備だと⁉︎ 都市伝説のはずだ!」

「都市伝説ではありません、作られたのですよ、貴方のラグナロクプロジェクトと同じように、対魔物用として開発された、同じ決戦兵器として!」


 決戦兵器であるフィアネリスと、同じ決戦兵器であるラストダンサーが交わり、二つは共鳴して、一つの大きな力となる。そしてフィアネリスは、ネアゼルの駆るバハムートを見下ろすと言った。


「さぁ、私と踊っていただきましょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ