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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第八章 神々の世界と全てを識る天使
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たった一人の貴方だから

 神癒奈はフィアネリスを取り戻す為、天界の通路を走る。その隣を、ミカエルが飛ぶ。

 しばらく走っていると、早速、機械天使が襲いかかってきた。


「艤装展開、"アローヘッド"!」


 ミカエルが天使用の装備を展開する。それは、フィアネリスが使っているものよりもはるかに古いタイプの装備だった。


「道を開けてください!」


 神癒奈は夜廻桜を引き抜くと、槍を持ち突撃してきた機械天使を一刀両断した。だが今のはたった一機に過ぎない。攻撃を受けたと分かると空を覆い尽くす量の機械天使が銃口を向けてきた。


「このっ!」


 雨のように降ってくる砲撃を回避しつつ、神癒奈は赤い一筋の線を描きながら走る。遠くから大量の機械天使が突っ込んでくるが、それを一体一体切り裂きながら彼女は進む。


「援護します!」


 ミカエルが対艦槍からレーザーを放ち、周囲の天使を撃ち抜き、道を作る。その真ん中を神癒奈は通り、機械天使が作る壁を突破していく。


「前方と後方から追加で敵機、来ます! 前方は近距離型の"アサノガワ"、後方は高機動型"トロピカルエンジェル"!」


 前方からパイルバンカーと盾を装備の天使が、後方からは追加ブースター装備の天使がそれぞれ迫ってくる。挟まれた状況だこのままいけば両者共にぶつかるだろう。


『仕掛大花火!』


 すると神癒奈は、後方に向けて焔の弾を置いていった、その弾は接近してくる天使が通り過ぎようとすると、大爆発を起こし、後方からくる天使を無力化する。


「押し通る!」


 パイルバンカーを持った天使達がパイルを撃ち込んで来るが、神癒奈は次々とそれを寸前で避け、すれ違うように斬り倒していく。


「前方からまだまだ来ます!」

「関係ありません!『狐火・改!』」


 神癒奈が焔を放つと巨大な狐の焔が前方へ走っていき、炸裂すると天使達を焼き払った。そうして進んでいくと、道が途切れるが、その先には先程フィアネリスと戦った場所があった。


「神癒奈様、飛んでください!」

「はいっ!」


 そうして神癒奈は飛び上がり、フィアネリスのいた場所へと着地する。


「フィアネリスさんは…!」


 周りを見渡すが、周りにいるのは量産型の機械天使だけだ。そう思っていた時だった、空から波動砲による落雷が複数飛んできた。神癒奈はそれを回避すると、飛んできた方向を見る。


「フィアネリスさん!」


 そこに、探していた彼女がいた。黒い外装を着込んだ彼女は神癒奈の前に降り立つと、武器を構える。


「まずは彼女を止めなければ! 攻撃を加えて彼女を止めてください!」

「はい!」


 ミカエルにそう言われ、神癒奈は刀を構える。フィアネリスの方は殺意に塗れていたが、神癒奈の方は止める気でいた。


「目標確認、殲滅します」


 そう言うと、フィアネリスは神癒奈に飛び込んで槍を突き刺してきた。神癒奈はそれを刀で弾くと、返しで一回転して斬り下ろした。

 だがそれも盾で塞がれ、神癒奈はそのまま蹴られる。


「硬い…!」


 本来であれば停止の力場で盾ごと切り裂いている所だが、相手はフィアネリスだ。なるべく傷つけたくはない。そう思う神癒奈は、刀を逆さに構え、非殺傷で戦うことにした。


『業火・改!』


 神癒奈は術を唱え、長大な焔の槍を飛ばす。即座にフィアネリスはそれを防いだ。だが、大きな一撃を受けた事により、盾は弾け彼女はよろける。


「取った!」


 空いた体に向けて神癒奈は刀を振り下ろす。しかし、フィアネリスは槍を逆手に構え、刀を防ぎ、そのまま波動砲を発射した。


「ぁあああっ!」


 至近距離で雷が飛び、神癒奈は電撃を浴びてしまう。そのままフィアネリスは神癒奈に槍を突き刺そうとするが、ここでミカエルが盾を構え、彼女を突き飛ばした。


「波動砲、発射!」


 ミカエルが波動砲を放つと、フィアネリスはそれを避け、カウンターで盾からクローアンカーを射出し、ミカエルの持っていた盾を彼女から引き剥がした。


「たぁっ!」


 ミカエルが作ってくれた時間で神癒奈は電流から復帰し、空いた隙に刀を上から振り下ろした。それも槍で塞がれるが、彼女の両手を使わせた。


「止まりなさい!」


 ミカエルが槍だけを持ち、飛び込むと、横殴りでフィアネリスを殴った。メシッと強い音が響き、フィアネリスは吹き飛ばされる。壁に激突しかけるが、空中で体勢を立て直し、くるりと回転すると、壁を蹴って逆に飛び込んできた。


「くぅっ!」


 高速で振るわれた槍を神癒奈は弾く。そして、片手でグーを作ると、彼女の顔面を殴った。


「目を覚まして!」


 殴られた瞬間、フィアネリスの脳内に一瞬だけ記憶が流れた。それは、初めて彼女と出会った時だった。


「神癒奈……」


 記憶を僅かに思い出すが、彼女は感情を変えずにシールドからクローアンカーを射出した。

 それは神癒奈の首を捉え、彼女を壁にぶつける。


「うぐっ!」

「神癒奈様!」


 ミカエルが助けに入ろうとするが、フィアネリスからビットが射出され、彼女の邪魔をする。フィアネリスは、アンカーで縛られた神癒奈に近づくと、彼女の腹に向けて蹴りを入れた。

 神癒奈は痛みで悶えるが、そんな彼女を他所に何度も何度も蹴りを入れていく。


「もうやめて…!」


 神癒奈は蹴ってきたフィアネリスの足を掴むと力強く握りしめた。もう片手でクローアンカーを剥がすと、手を前にかざす。


『絶火!』


 最低限の収束で焔を放つ。目眩し程度にしかならないがそれで十分だった。

 神癒奈は前に走ると、フィアネリスに抱きつく。


「もう……やめてください! フィアネリスさん!」


 そのまま地面に押し倒すと、暴れ回る彼女を押さえ込み、神癒奈は耳元で言葉を放ち続ける。


「貴方は、戦う為に作られた機械なんかじゃありません! 私達の大切な仲間です!」


【タマシイをもったデキソコナイ】

【テンシにもキカイにもなれないちゅうとはんぱなニンギョウ】

【イシをもったマシン】


 神癒奈の言葉にフィアネリスは四課にいた日々を思い出すが、同時に闇の中で大量の自分と同じ姿をした人形から言われた言葉を思い出す。


「私は……機械の人形」

「違う! 貴方は心を持った、人の為に尽くせる優しい天使です!」


【アナタは、タタカウためのヘイキ】

【メイレイにシタガイ】

【メイレイのままにコロス】

【スキだもんね、ミンナコロスの】


 神癒奈が声をかけるが、それを塞ぐように彼女の中に嵐のように言葉が流れていく。フィアネリスは頭を振った。だがそれでも、神癒奈は言葉をかけ続ける


「思い出してください! 辛いことは、たくさんあったかもしれませんけど、貴方には、たくさんの仲間がいて、一緒に過ごした人がいたはずです! 貴方のことを思う友達だっていたはずです!」


 神癒奈がそう言った途端、フィアネリスの中で記憶がフラッシュバックした。大切な主人である永戸と、同じ部屋で一緒に暮らした神癒奈、仕事に行けばいつも待っていた四課の仲間達……そして、フィアネリスの事を肯定してくれたたった一人の友人。


【フィーネ、いつもありがとうな、俺の無茶に付き合ってくれて】


「…マス…ター」


 永戸の記憶を思い出す。


【フィアネリス】

【フィアネリス先輩!】

【フィアネリス…先輩】

【フィアネリス先輩っ】

【フィアネリス君】


「皆…さん」


 四課の皆のことを思い出す。


【フィーネ……大好きだよ】


「……レティリア」


 自分と一緒にいてくれた、大切だった友人のことを思い出す。


「戻ってきてください! 貴方には、待っている人達が、たくさんいます! 貴方は作られたたくさんの機械の人形のうちの一人なんかじゃない、ただ一人の天使なんです! だから戻ってきて! フィアネリスさんっ!」


 神癒奈が最後にそう言うと、彼女はフィアネリスの顔をじっと見つめた。彼女の顔を見た途端、フィアネリスの中に埋もれていた記憶が呼び覚まされ、メモリーが復旧する。


「神癒奈…さん、おや……私は」

「……! 良かった! 戻って…来てくれた!」


 意識を取り戻したことを確認すると、神癒奈はフィアネリスを強く抱きしめた。


「神癒奈さんっ⁉︎ 一体これはどういう…いつの間に私はこんな所に…」


 抱きつかれて困ったフィアネリスは頭を振って、前後の記憶を思い出す。


「……そうか、私は…兵器として利用されて…」

「戻ってきて良かった…!」

「…神癒奈さん…もう大丈夫ですよ、私はもう、どこにも行きませんから」


 優しく微笑んで彼女を撫でると、抱きしめたまま立ち上がる。


「フィアネリス…よく、記憶を取り戻してくれました」

「天使長ミカエル……」

「…先ほどは、酷い事を言ってごめんなさい、でも、これも貴方の為だったのです」

「構いませんよ、私は貴方と違って頭は固くないので」


 冗談まじりに笑って見せると、フィアネリスは神癒奈を離し、肩を下ろす。


「…私も、情に流されるようになりましたね、神癒奈さんに助けられるだなんて」

「そんな言い方…もうっ」

「ふふっ…冗談です。貴方の言葉、私の"心"にちゃんと届きましたよ」


 そう言うと、フィアネリスは自分の手を胸に当てた。確かに自分は機械の人形かもしれない、でも自分は、今ここに生きている。同じ生命なのだと、彼女は思った。


「はぁ…記憶を取り戻してしまったか、まぁ、想定していたことではあったが」


 直後、フィアネリスは聞きたくもない声を聞いた。聞こえた方に振り返ると、そこには、大量の天使を従えたネアゼルが宙に浮いていた。


「…ネアゼル……貴方の企みを、生命への冒涜を、私は許しません」

「許さない? 今更抵抗でもするつもりかい? もうラグナロクプロジェクトは完遂しているのだよ?」


 ネアゼルがそう言うと、彼女達に向けて、機械天使が一斉に武器を構えた。各々が波動砲をチャージし、こちらに向けて攻撃しようとしてきた。


「君達もろとも消してやろう、では、さよならだ」


 そうして、機械天使が波動砲を一斉に撃ってきた。眩い光に包まれ、砲撃が飛んで来る。


「…させない!」


 だが、その砲撃の前に、神癒奈が立ち塞がった。フィアネリスを助けた以上、もう制限する必要はない、神癒奈は腕を前に構えると、停止の力場を発生させ、全ての波動砲を受け止めた。


「何?」

「…これ以上、貴方の好きにはさせない!」


 神癒奈のその言葉と共に、反撃の準備は整った。

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