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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第八章 神々の世界と全てを識る天使
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堕ちていく翼

「……ここは」


気がつくと、フィアネリスは体が固定された状態で立たされていた。周りは薄暗くて何も見えない。これまでの経緯を思い出す。


(確か私は…天使長ミカエルから機械の天使だと告げられて…)


そう考えていると、奥の方からコツコツと誰かが歩いてくる音が聞こえた。


「気が付いたかな?」


やってきたのは背の高い白衣を着た男の天使だった。フィアネリスはその男をまじまじと見る。


「貴方は、誰ですか?」

「私はネアゼル、ラグナロクプロジェクトの総責任者にして、君を作った親だよ」

「私を作った…親⁉︎」


フィアネリスは言葉を疑った。目の前にいる人物が、自身を作り上げた計画、ラグナロクプロジェクトの責任者だなんてと。


「最初に言っておこう。私が立案したラグナロクプロジェクトにおいて、君は失敗作だった」

「私が…失敗作?」


失敗作と聞いてフィアネリスは目を丸くする。こんな身体で、普通の天使とは違うのに、失敗作だとは思えなかった。


「本来なら君のその義体には、感情も意思もない命令だけに従う仮初の魂が宿る筈だった。だがどう言うことか、本物の魂が宿り、君は普通の天使として生まれてしまった。ラグナロクプロジェクトは、機械の天使による全生命体の粛清が目的、そこに感情と意志が芽生えてしまっては、与えられた役目を放棄する危険性がある、よって、私は君を廃棄処分して、君を普通の天使として育てさせた」

「廃棄って…!」


自分は捨てられた存在と知ると、フィアネリスは怒りが湧いた。力一杯固定具を外そうとしながらもフィアネリスは吠える。


「私を産んでおきながら、失敗作だったから即廃棄だなんて、貴方には心はないのですか⁉︎」

「心? 馬鹿馬鹿しい、人間が定義した曖昧な概念など信じないな。だが、まさか研究失敗で廃棄処分したプロトタイプが、地上に追放されて大戦で戦闘データを得てくるとは、思いもしなかったな、おかげで研究の最終段階にいけた」


彼がそう言うと、近くにあった機械に光が灯る。次々と機械の電源が入っていき、あたり一面がブルーライトでいっぱいになった。そして、部屋全体に光が灯ると、そこには、少し機械的な姿をした大量のフィアネリスが壁一面に並んでいた。


「見たまえ、これが、千年の研究の成果、量産型機械天使、Fineだ。君の、妹達だよ」


同じフィーネ(Fine)の名を関する機械天使を見て、フィアネリスは醜悪な物だと思うが、ネアゼルはフィアネリスに近づくと、うなじの辺りを弄った。


「な…何をするのです⁉︎」

「君の戦闘データを、この全てのFineに移し替える。その過程で君の魂は多くの仮初の魂の奔流に飲み込まれるかもしれないが、何、些細なことだ。仮に君の魂が消えてくれれば、君を今度こそ決戦兵器として運用できる」

「おやめください! そんな事を企てて、天界の神々が許す筈がありません!」

「神々が許さない? くくく…ははは! 何を勘違いしているんだ、これは神のご意向によって作られた計画だ」


すると、移植用のコードを突き刺し、彼は高らかに叫んだ。


「神は望んでいるのだよ! 腐りきった世界を焼き払う圧倒的な火力を! 邪悪な魔物や悪魔どもを殲滅できる兵器を! 反対派も勿論あるが、だがこの計画は神々の一部が推進している。誰にも止められないんだよ」

「外道が……そのような真似、特査四課が許しません!」

「特査四課だと? 人間が作り上げたあんな小さな組織、この大量のFineで消し炭にできる。そうだ、まずは、君と一緒にここにきたあの狐の神を殺そう、ゼウス神が目をつけている子らしいからな、ここで殺して成果を出せば、いいプロモーションになる」

「神癒奈さんを⁉︎ 彼女は関係ありません! 彼女を殺すだなんて、そんなことはさせない!」


神癒奈を殺すと宣言したネアゼルに対し、フィアネリスは抵抗するも、固定具は外れず、殴ることすらできない。


「くくく、抵抗したくても君には何もできないさ。さぁ、これで準備は完了だ」


最後のコードを取り付けると、ネアゼルはカタカタと機械を操作し、フィアネリスの方に向いた。


「では、さようなら、天使フィアネリス、いいや、Fine試作機君、次に君が目を覚ますのは、私の傀儡となっている時だ」

「よしなさ…!」


フィアネリスが何か言う前に、ボタンが押され、フィアネリスの意識はその瞬間、真っ暗な空間に飛ばされた。


ーーー


「……私は⁉︎ 私はどうなって⁉︎」


フィアネリスは周りを見渡すが、何もない真っ暗な空間……そう思っていた時だった。


「アナタは……アナタは、ワタシ」


先ほど見せられた、機械天使、Fineが目の前に現れた。機械天使は、その真っ黒な瞳で、フィアネリスをまじまじと見つめる。


「タマシイをもったデキソコナイ」

「テンシにもキカイにもなれないちゅうとはんぱなニンギョウ」

「イシをもったマシン」


次々とFineがあらわれると、フィアネリスを掴み、どんどん深い闇の底へと引き摺り込んでいく。


「い…嫌! 離しなさい!」

「もうハナサナイ」

「アナタも、これからイッショ」

「ゼンブわすれて、ワタシタチと、ホロボソウ?」


手を伸ばそうとしてもその手を掴まれ、もがこうとしても全身に絡みつかれ、フィアネリスの意識は闇の中へ消えていく。


「マスター! 神癒奈さん! 誰か! …誰か! 私を……助け……!」


全てがFineに飲み込まれ、フィアネリスの意識は完全に消えた。その直後、Fineの中から出てきたのは、同じ機械人形となった天使だった物だった。


「私は……誰でしたっけ」

「アナタは、タタカウためのヘイキ」

「メイレイにシタガイ」

「メイレイのままにコロス」

「スキだもんね、ミンナコロスの」

「あぁ……そうでしたね」


天使だった人形の瞳から、光沢が消え、その人形は、不気味に笑った。


「皆さん…行きましょう、私と一緒に、全てを滅ぼしに」

「ウン! ホロボソウ!」

「コロスのミンナダイスキ!」

「ミンナイッショ! アナタもイッショ!」

「タノシイタノシイハメツのジカン!」

『私達は兵器、私達は最後の審判者』


その時、真っ暗な空間が人形で埋め尽くされた。


ーーー


ネアゼルはフィアネリスの中にあった戦闘データを、Fineに移植する。その瞬間、部屋の中にいた全ての機械天使が目を覚ました。


「おお! 目を覚ましたか、我が娘達!」


壁から次々と天使達は降りてきて、主であるネアゼルに忠誠を誓う。そして、フィアネリスだったものの拘束具が外れると、彼女も跪き、忠誠を誓った。


「ネアゼル様、当機のデータのクリアリングが完了しました、我々にご命令をくださいませ」


フィアネリスだったものは、機械的に無表情でネアゼルに命令を求める、そうすると、ネアゼルは答えた。


「では、まずはここにきた狐の神を殺せ、私に忠誠心を見せてみろ」

「かしこまりました、マイマスター」


そう答えると、フィアネリスだったものは立ち上がり、武器を装着する。いつもの白い外装ではなく、黒い外装の装備を着て、片手にはバレルが開放された対艦槍を、もう片手にはクローがついた盾を装着する。


「艤装"カロン"を装備、全機、出撃せよ」

『了解』


そう言うとフィアネリスだったものは翼を広げ、空へ飛び出した。それについていくように、さまざまな装備をしたFine達も次々と飛び出していく。


「さぁ、始めようじゃあないか、終末ラグナロクを」


その光景を目にしたネアゼルは、手を広げ。歓喜するように天を仰いだ。


ーーー


ジュリアスとの会話を終え、神癒奈は建物の外に出る。フィアネリスと連絡を取ろうとEフォンを取るが彼女と繋がらない。


「あれ? 電波障害ですかね?」


電波の方を見るも普通に線は立っていた。ではなぜ繋がらないのだろう、そう思っていた時だった。


「おや、神癒奈様、おかえりですか?」


帰りの案内なのか、アステリスがやってきた。


「いえ、今日はここに泊まって行くつもりです、フィアネリスさんを見かけませんでしたか?」

「彼女は向こうの建物に送り出しました。何事もなければそろそろ帰ってくる時間ですが…」


アステリスが時計を確認した時だった。遠くの雲海から、何かがやってくるのが見えた。


「あれ、なんですか?」

「あれとは……っ!」


神癒奈が質問すると、アステリスは振り返るが、その光景を見た途端、彼女は身構えた。


「あれは…一体どこの天使ですか! あれほどの規模の天使達が、艤装して何故ここに…!」

「…アステリスさん…あれ、本当に天使なんでしょうか?」

「何ですと…?」


アステリスは遠くからやってくる天使達をよく見てみる。かの者達の翼は普通の翼じゃない、機械の翼を持ち、無表情で武器を構えながらこちらにきた。


「…神癒奈様…お逃げください!」


嫌な予感を察知したアステリスは自身の戦闘用の艤装"ティアーズ・シャワー"を展開する。波動砲を搭載しない代わりに装備をエネルギーのバルカン砲にすることで、一般の天使でも扱いやすさをもたせた艤装だ。

神癒奈を守りながら、アステリスは走る…その直後だった。神癒奈達のいた場所に向けて、あらゆる火器がドカドカと飛んできた。


「な、なんですかアレは⁉︎」

「分かりません! ですが、普通の天使と思わない方が身のためです!」


アステリスがバルカン砲を撃ち、応戦を開始する。だが、機械の翼を持った天使達はそれを回避し、神癒奈達を囲うように襲いかかってきた。

その内の数体が近接武器を構え、神癒奈に突っ込んでくる。神癒奈は夜廻桜を出し、攻撃を防ぎ、天使の顔を見た。その時、彼女は初めて敵がなんなのかを知った。


「フィアネリスさん⁉︎ でも…えっ⁉︎ なんでフィアネリスさんがこんなにたくさん!」


天使達の顔が全てフィアネリスとそっくりだったのだ。だが、関節部から機械は剥き出しで、翼も機械でできていて、その姿は、どちらかと言うと機械の天使とも言えるものだった。


「アステリスさん! これって一体⁉︎」

「知りません! 私は何も聞かされていないので!」


アステリスは必死にバルカン砲を撃つが、どの天使も、その攻撃をひらりと避けていく。


「あの動き、フィアネリスさんと全く同じです!」

「じゃあアレが全て熾天使フィアネリスだと言うのですか⁉︎」


あり得ないとアステリスは言う。その時、二人の目の前に雷が飛んできた。


「危ないっ!」


神癒奈は加速してアステリスを抱いて避ける。雷が落ちた場所は黒い焼け跡がついていた。

神癒奈は攻撃が飛んできた方向に振り向いた。その時、彼女は見てしまった。


「フィアネリス…さん?」


黒い外装を見に纏い、武器を持ったフィアネリスが、神癒奈達に銃口を向けていたのを。

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