天からの招待状
「ん……朝ですね」
任務のない朝、いつものように起きた神癒奈は郵便ポストに何か入ってないか見に行く。
パカっと開けて中にあったのは電気料金の請求書に近くにできるファストフードの店の宣伝のチラシ…それと…。
「っ? なんですか…これ?」
物々しい手紙が入っていた。金の装飾で飾られた手紙、誰宛だろうと手紙の裏面を見て見ると、そこには神癒奈の名前が書かれていた。
取り敢えず開けて見る。中に入っていたのは古風な羊皮紙だった。
「今のご時世に羊皮紙…?」
変わった手紙だなぁと思いつつ、神癒奈は羊皮紙に書かれた事を読み上げる。
【全能神神癒奈様へ、この度、貴方様は正式な神として天界の神々から認可がおりました。近いうちに貴方様を迎えに行きます】
「て…天界?」
聞いたことあるようなないような単語だなと思っていると、同じく起きたフィアネリスがやってきた。
「おはようございます、神癒奈さん、本日もよい天気で…はて?」
神癒奈の持っているものに気づくと、フィアネリスは神癒奈からそれをもらって目を通す。
「天界からの使者がここに来る? うげ…」
珍しくフィアネリスが顔を悪くした。そういえばフィアネリスは天界から堕ちてきた天使だったと神癒奈は思い出し、彼女に聞く。
「天界から使者が来るってどう言うことでしょうか?」
「貴方を神として認め、天界で誓いの儀式を行うのですよ、で、その使いとなる天使が迎えに来ると言うことです」
「はぁ…」
天界に関して一切知らない神癒奈は、フィアネリスの話を聞いて納得する。
「……よく見たら同伴の天使を一名まで連れて行ってもいいって書いてますね?」
「恐らくは、貴方の使いとなる天使の事でしょうね。しかし……貴方は天使を1人も使いとして持っていません」
「……」
ここで神癒奈はじーっとフィアネリスを見た。視線に気付いたフィアネリスはあっと気まずそうに神癒奈を見る。
「わ…私は貴方の使いではないのでノーカンです。そもそも追放されてるので天界へは行けません」
そう言ってフィアネリスは去ろうとするが、ここで郵便受けからもう一つ手紙が落ちてきた。同じ金の装飾で、宛先はフィアネリスにと書いている。
「…フィアネリスさんへの手紙もありますよ?」
「はぁ、何なんですか? 私への手紙? あり得ません、あのクソ硬い天界から堕天した私宛だなんて」
「でもこれ確かにフィアネリスさんへって書いてますよ?」
「もうっ神癒奈さん、何処でそんな冗談を覚えてきたのですか、そんな冗談不愉快にするだけで…」
神癒奈から手紙を受け取って、ピロリとフィアネリスは手紙の裏面を見た。確かに彼女宛で書かれている。驚いたフィアネリスはすぐに手紙を開き、紙を見た。すると、こちらにはこう書かれていた。
【天使フィアネリス、貴方の追放を今日付で解除します。過給的速やかに天界に帰投をお願いします】
「…」
さらっと読み終えると、フィアネリスはその紙をビリビリに引き裂いた。
「ちょっ…ええっ⁉︎ 何が書かれてたんですか?」
「天界が私に戻ってこいとの命令を出されました。はぁ、全くどうしてこんなことに…」
そういうとフィアネリスは頭を抱えて悩む。相当嫌なのかため息やイライラを見せていた。
「あの…お願いがあります」
「嫌です、貴方の同伴でも私は絶対に天界には戻りません」
「そこを何とかお願いします! 私天界なんて何も知らないんですよ!」
「嫌です、天界に住む者達は勝手で馬鹿で傲慢で私は嫌いなので、行きません」
頑なに拒否をするフィアネリス。相当行くのが嫌なのか、イライラした表情で立っていた。だがそれでもと、神癒奈はフィアネリスに話を持ちかける。
「どうかお願いします! 私の周りにいる天使は貴方しかいないんです! 貴方が嫌がる気持ちも重々承知の上です! でも、土地勘としても、仲間としても、頼れるのは貴方しかいないんです! お願いします!」
そう言うと神癒奈は頭を下げる。それをフィアネリスはチラリと見たら、ため息をつきながら神癒奈に向いた。
「…わかりました、そこまで言うなら着いて行きます。仕方なくですよ? 貴方の案内をするだけですので」
「ありがとうございます!」
そう言い、フィアネリスは天界に行く支度をしに行く。神癒奈も、礼儀良くということで服装を整えに行った。
ーーー
いつもの仕事服に着替え、神癒奈はフィアネリスと共に使いを待つ。すると、ピンポーンと玄関からチャイムが聞こえてきた。
扉を開けて誰かを確認すると、そこには天使が立っていた。姿はフィアネリスと違い、青髪で翼は一対しかなく、天輪もごく普通の円形のものだが、しっかりと天使という見た目をしていた。
「全能神、焔月神癒奈様、大変お待たせしました。私が使いとなる天使、アステリスと申します。これから貴方を天界まで案内する役目を与えられてきました。それと…」
アステリスは横目でフィアネリスを見ると、はぁっとため息をついた。
「熾天使フィアネリス、人殺しの堕天使、地上に堕ちてからも、罪のない大勢の人を殺したそうで、よくもまぁここまで生きて来られましたね」
「フィアネリスさんは…!」
「…」
怒ろうとする神癒奈を、フィアネリスは止める。
神癒奈は分かっていた。フィアネリスが地上で人を殺してきた事は、異世界大戦に参加したことと、そして、四課での使命を全うしようとした事。必死に戦い抜いてきたそんな彼女を侮辱するのが神癒奈は許せなかった。
だがそれをフィアネリスは止める。彼女のその誠意を、分かっていて止めた。自分の罪に彼女を巻き込むわけにはいかないと。
「ええ、しぶとさが取り柄ですので、天界からわざわざ私を連れ戻すためにお勤めご苦労様です、下級の下っ端天使さん」
「……貴方に発言権はありません、黙ってついてきてください」
「はいはい、お硬いお返事どうも」
そうすると、アステリスは、転移魔法を使い、ゲートを開いた。
「此方です、どうぞ、お通りください」
言われた通りにゲートを潜る。暫くの間中を通っていると、奥から光が見えてきた。そして、その光の待つ場所へ辿り着くと、そこは、文字通り天の上の世界だった。
空の上に島が浮いていて、あちこちには古代の歴史を感じさせる建造物が建ち並んでいた。辺り一面には天使がいて、楽しく会話しているものもいれば、仕事に励む者達もいた。
そんな中、神癒奈達は歩いていき、大きな建物の前に立つ。
「中で我らが全能神様がお待ちです、お入りください」
「は…はいっ!」
そうして神癒奈は建物の中に入っていく。フィアネリスも入ろうとしたがアステリスに止められた
「熾天使フィアネリス、貴方は此方です。天使長ミカエル様がお待ちですので」
「…はぁ、最上位の天使が直々に、ですか」
フィアネリスは言われた通りに行き、別の建物に入っていった。
ーーー
建物の中に入ると、そこはとても暗い場所だった。神癒奈は明かりをつけようと狐火を灯そうとするが、その前に、壁や柱の燭台に火がどんどんと付いていった。
そして、建物の中に光が灯された事で、奥にいた存在があらわになる。
「全能神焔月神癒奈、いや、"私の娘"よ、よくきてくれた」
「はっはい! 此方もお呼びいただき誠に嬉しく……っ? 私の…むすめ?」
相手が同じ全能神と聞いて神癒奈は固くなって頭を下げるが、自分の娘と言われて、神癒奈はどう言うことかと頭を上げた。
するとそこには、神癒奈と同じ青い瞳をした白髪の男が玉座に座っていた。
「私はジュリアス。またの名を…世界を束ねる神、全能神"ゼウス"。君の…父親だよ」
「お父……さん?」
唐突に父親と告げられ、神癒奈は目を丸くして、彼の姿を見ることしかできなかった




