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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第七章 信仰と病の町
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旅行の続き

「温泉旅館だーー!」

「美味しいごはんだーー!」


 コリーと桐枝がはしゃぐ中、永戸達は異世界でちょっと有名な温泉旅館に泊まることになった。

 アヌバウィルスの件だが、あれから二課の課長、レナルドはこう言ってきた。


【ふん、猟犬らしい仕事っぷり、よく見せてくれたな。だが……町を壊したのはどう責任とってくれる⁉︎ いくらなんでもやりすぎだ! 最大威力の聖剣三連発なんて頭どうかしてるのかお前達は⁉︎ 事後処理は一体誰がやると思ってるんだ! ユリウス! お前の猟犬はなんでいつもいつもこう自由奔放で…!】


 そうくどくどくどくどと1時間ほど説教を受け、ユリウス課長から助け舟を出されてようやく解放された。


「まだ耳がキンキンします…」


 説教の言葉が耳に残ってるのか、神癒奈は耳を抑えながら嘆く。


「まぁまぁ、レナルド君も世界を思う気持ちがあるからね、君達の無茶は彼女には効くのだよ」

「山とか削っちゃったけど大丈夫かな…」

「事後処理はレナルド君らがやってくれるから気にしなくて良いさははは」


 心配する神癒奈に笑いながらユリウスは中へ入っていく。


(さては面倒くさくて仕事押し付けたな?)


 そんな後ろ姿を見て永戸はユリウスをジト目で眺めた。

 と、入り口前でのんびりしてても仕方ないので中に入る。中は和風のよくある旅館で、様々な種族が浴衣姿で休んでいた。


「と言うわけで部屋番を決めようではないか、不純異性交遊を避けるため、男性陣は一部屋だけだが、女性陣は二部屋あるのでそちらに入ってもらう、はいくじ引き」

「課長…実はノリノリだったりするっすか?」


 実は一番この旅行を楽しんでるのではないかとユリウスは皆から疑われた。


 ーーー


 と言うわけで部屋分けが決まった。男性陣はそのままとして、女性陣は神癒奈と桐枝とエイル、フィアネリスとコリーに決まった。

 部屋分けは決まったが、先に彼らは風呂に入ることが決まった。


「ではまた後で、食事の時に会うとしよう」

『はーい』


 ユリウスがにっこり笑って男性の方ののれんをくぐると、女性陣は女性の方ののれんをくぐった。永戸とライもユリウスについていく。


「そういえば、君と風呂に入るのは初めてかな?」

「なんだよ、そんなジロジロ見て、気色悪い」


 服を脱いでタオル一枚になる永戸…それを見たライは驚いた。


「君は…大戦経験者なのだろう? 傷跡とかないじゃないか」

「いくら大戦といっても、医療技術がなかったわけじゃない、手とか足とか取れようと、再生治療ですぐに治って、身体に傷は残らなかったのさ」


 そうして風呂場に入り、2人は身体を洗う。


「永戸、君は一体、いつから戦ってるんだ」

「…桐枝と同じくらいの歳の頃からかな、異世界に呼ばれて戦うことになったのは」

「当時の永戸君は少年兵でね、まだ今のような擦り切れた性格はしてなかったね」

「課長、風呂場だからとはいえ恥ずかしい話をしないでください」


 隣で洗っていたユリウスに言われ、永戸は恥ずかしく思う。


「けど、今の永戸君は、終戦時と比べてだいぶ丸い性格になった。これも、神癒奈君のおかげかね」

「どうしてそう思えるのですか?」

「君と神癒奈君がコンビを組み始めてから、君は笑うことが増えたからね」


 そう言うものかなと永戸は頬を触る。


「君達2人はいいコンビだ、お互いにお互いの欠点を補填し合っている。これからも、励みたまえ」


 そう言うとユリウスは湯船の方へ向かった。永戸達も身体を洗い終わり、湯船に浸かる。

 こうして肩まで浸かると、戦いでついた傷が癒され、泥のようにまとわりつく疲れが解けていくようだ。


「ここの湯は疲労回復、傷の修復に極めて高い効果がある、我々が入るにはぴったりなのだよ」

「遠回しに命懸けのブラックお仕事って言ってませんか?」

「しょうがないさ、私達の仕事は、どれだけ危険な事態でも人を守ることだ」


 そうして三人と話してると、遠くの方で、女性陣が話す声が聞こえてきた。


「みなさん今日もお疲れ様でした」

「なーに改まってんすか、旅行はこれからが本番っすよ」

「そうそう、神癒奈ちゃんも入って入って」

『っ!』


 女性達の声を聞き、永戸とライは思わず振り向いてしまう。


「いやぁ、今回も大変でしたね、神癒奈さんとマスターの必殺技、カッコよかったですよ」

「そ、そうですかね? 怒られちゃいましたけど」

「勝ったので……結果的にはよかったですよ、二課の課長さん、怒ってましたけど」


 そんな事務的な会話をしつつ、女性陣はどんどん風呂に入っていくのが聞こえる。


「うっわー…エイル先輩の…デカいっすね」

「体が大きいから…自然とここも大きくなっちゃって…」

「でも桐枝ちゃんもそこそこあると思うよ?」

「そっすか? これが普通なんっすかね?」


 デカい、大きくなってと聞いて永戸とライは息を呑む。男として、その発言は聞き捨てならなかった。


「フィアネリス先輩も結構おっきいっすよね、よくそれであんなバカでかい槍ふるえますよね」

「ふふっ、でも中身はシリコン製の樹脂かもしれませんよ?」

「そうかもっすけど…でーもそう考えると、神癒奈先輩が1番見た目が綺麗に見えるっす」

「えっ私⁉︎」


 女性達のそんなトークにライは湯船から飛び出して風呂を仕切る壁へと行きかける。永戸はやや恥ずかしそうに肩から湯船に浸かっていた。


「くそっ! 壁が仕切って向こうの様子が見えない!」

「無理だ、のぞこうとした瞬間一斉砲火を浴びて死ぬだけだ」

「だが、向こうには私たちが望んだエデンがある! そうは思わないか!」

「思いてぇけど行く勇気がねぇよ!」


 向こうには確かに美しい光景が待ってるかもしれない、だがここは公共の場だし行ったら間違いなく獰猛な獣達に殺される。そう思っていた時だった。


「心に従いたまえ」

「課長…?」


 ユリウスがそう呟いたのだ。永戸は振り向くと、そこには目をキラキラさせたユリウスの姿があった。


「君も、見たいのだろう? ならば心に従いたまえ、後悔しないうちにね」

「課長…」

「と言うわけで穴がないか探すぞライ君! 最悪能力の行使を許可する! これは課長命令だ!」

「はい! 課長!」

「いいこと言ったかと思ったら課長もそっち側だったのか! さてはこれ目的で社員旅行考えたなこのエロジジィ!」


 永戸は止めに入ろうとするが、ライに肩を掴まれた。


「まあ待て待て、君も、あの景色が見たいのだろう? 君だってこの旅に参加した者、固くなることはない」

「…けどさぁ」

「君だって1人の英雄だ、英雄色を好むと言うじゃないか。これも巡り合わせだ。ともに、壁越えと行こう」

「お前なんか今日変だぞ」


 だがその発言で完全にスイッチが入り、永戸も穴がないか探しだす。するとライがあることを考えついた。


「そうだバリアだ! バリアで足場を作って上から覗くんだ!」

「でかしたライ君! では覗きといこうじゃないか!」


 そう言って2人はバリアを階段状に使い、上へと上がっていく。永戸はそれでいいのかと2人を見守るが、2人が頂点まで辿り着くと、上から覗こうとした。


「ああなんと言う素晴らしき景しk…」


 直後、2人の頭部に索敵波動砲の一撃が飛んでくる。爆発で吹っ飛ばされた2人は風呂の中に綺麗にダイブしていった。


「そんな大声で覗く覗く言ってたら流石に気が付きます、次覗こうとしたらバラウール重戦車砲を部屋から持ち出してきますので妙な考えは起こさないように」

『…はい』


 笑顔で額に青筋を立てながら怒るフィアネリス、ゴボゴボと沈む二人を見て永戸は思う。"そらそうだ"と。


 ーーー


 それからは豪勢な食事を経て、全員が別れ、部屋へと入った。


「いやー、修学旅行を思い出すっすねーこの空気」

「私も、こうした休みを取るのは、なんだか久しい…です」

「任務に明け暮れてましたからね〜」


 神癒奈は桐枝とエイルと一緒の部屋になり、一緒に寝ることとなった。


「エイル先輩、お布団は入れませんけどどうやって寝るんすか?」

「糸でハンモックを作って寝ようかなと…大丈夫です、部屋は汚しませんので」

「便利っすねその糸、色んなのにつかってるっすよね?」

「糸の硬度や粘着力の調整、結構努力しましたので…」


 糸の出し入れを見せつけると、桐枝がほーっと興味深々に見た。


「神癒奈先輩も焔とか使うっすよね、正直かっこいいっす」

「私も自前の能力ですからね、遺伝された能力なんですよ」

「でーもクラスメイトが使ってた炎より先輩の焔の方が美しいっすよ、なんでですかね?」

「千年の修行の成果ですので」


 ぱちっと指を鳴らすとぼっと赤い小さな狐火が出てくる。それを見た桐枝とエイルはおおーっと手を叩いた。


「桐枝さんの能力、光の戦士でしたよね、あれから修練してますか?」

「あぁ、学校の能力発現の授業の時とかに練習してるっすよ。まぁ威力が高すぎてまだ調整が上手くいってないんすけどね、火力を絞ったりとか指向性を持たせたりするのが大変で」

「今は使用に制限がかかってますよね?」

「そうっす、全力で使うのは今日みたいな場合じゃない限り禁止されてるっす」


 桐枝も胸元に光を出して手に掲げてみる。調整がまだ慣れてないのか、時折強く輝いたり、逆に消えそうになったりしていた。


「…にしても、異世界に来てから思うっすけど、本当に色々あるんっすね」

「そうですね、私もびっくりしました。色んな種族がいて、色んな景色があって、新しいことがいっぱいで」

「…ふふふっ、私は、新しいことに気づく2人を見てて楽しいです」


 2人があれやこれやと思いついたものを話題に出す中、エイルはそんな2人を見て微笑む。


「…これからもきっと、2人の旅路には色々なことが待ってると思います」

「そっすね…それが例え今日みたいな強敵が待っている場所だったとしても、きりちゃんは負けずに戦うっす」

「えぇ……私も、そう思います」


 そう思うと神癒奈は窓の外を見た、外の夜空には月が浮かんでいた。


「異世界にも、月はあるのですね」

「異世界にもよりますけど…月に類似した惑星があったり、なかったりします」

「でも、こうして見ると綺麗ですね」


 これもまた一つの新しい発見だと思うと、神癒奈は微笑んだ。

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