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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第七章 信仰と病の町
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植え付けられる信仰

 教会の内部を再び調べることが決まり、神癒奈は教会の前に立つ。その背後には四課のメンバー達が一斉に揃い、様々な箇所から教会を警戒していた。

 と、その時、神癒奈達に通信が入る。


『何をしている四課の猟犬ども、貴様らに勝手に動く指示は出した覚えはないぞ、教会は後回しだ、危険すぎる』

「できません、もう一刻の猶予もないので」

『ウチの部隊の駄犬の不始末はウチでなんとかする。貴様らは私の言う通りにすればいいんだ』

『いや、派手にやってくれたまえ』


 レナルドの通信を聞いてると、ユリウスから通信が割り込まれてきた。


『神癒奈君、君の直感がそう感じたならばそれに従って行動してくれたまえ、私は君を止めはしない』

『ユリウス! 彼女らは今私の指揮下だぞ!』

『モタモタしていると君の部隊の隊員の命が危ない、神癒奈君はそこを踏まえて行動しようとしてるんだ。君だって大事な隊員を失いたくはない筈。分かってくれるね…』


 ユリウスがそう言うと、通信は一瞬静かになった。そして…少しすると、レナルドが歯を噛み締めるように答える。


『…いいか、目的はこの事件の収束だ、アヌバウィルスの感染拡大を止めることを優先しろ、これよりお前達の手綱を離す、猟犬なら飼い主の為にスマートに役目をこなしてこい、いいな?』

『了解!』


 その言葉と共に四課のメンバーはあちこちに動き出した。


「桐枝! お前は防護服を4着持ってこい! 俺とライとコリー、それとお前の分だ! エイル! 全員の武器を使えるだけもってこい! フィーネ、お前は二課の護衛に回れ! 全員、こっからは四課としての仕事だ、二課に死神部隊がなんたるかを見せてやれ!」

『了解!』


 それを聞いた神癒奈は教会のドアに手をかける。


「神癒奈、聞こえているな?」

「はい、どうかしましたか?」

「課長も言ってたが、俺もお前の直感を信じてる、せっかくできた友人を死なせたくないんだろ? だから…行ってこい」

「はい!」


 永戸の言葉を聞くと、神癒奈は扉を開けた。


「イストリアです! この教会を検挙に来ました!」


 教会に入るなり、そう大声で叫ぶと、教会の人たち全員がこちらを振り向く。


「おやおや、これはこれはイストリアの方、この教会にお祈りに来たのですかな?」


 まるで普通に出迎えるように、神父がやってきた。


「いいえ、神に祈るのは貴方の方です。これを見てください」


 それは、データをとったアヌバウィルスの即席のカウンターだった。入り口前では反応がなかったものの、教会の内部に入ると、カウンターが反応を示していた。


「これは…なんですかな?」

「この町で蔓延ってる病原菌、アヌバウィルスの数値を示すカウンターです。どう言うことでしょうかね、ここ以外だと全然反応しないのに、ここだけ反応してます」


 神癒奈はそれをしまうと、神父に近づいた。


「ここ、ただの教会じゃないですよね、どう言うことか、教えていただきましょうか」

「ほう…くく…ふふふ…ふははははは!」


 神癒奈が睨みつけると、神父は何を思ったのか、高笑いした。


「ただ街を軽く見て帰っていればいいものを、余計な事をしたな?」

「っ!」


 神父の豹変を見た神癒奈は嫌な予感を察知し、一歩後ろへ下がる。直後、彼女のいたところに黒い線が大量に流れた。

 攻撃を受けた方向を見ると、そこには、街の住民達がゆらりと立ち上がり、その住民から線が伸びて同じ数の黒い影が空中を漂っていた。住民達の方も。武器を握っては神癒奈の方に近づいてくる。


「やっぱり…」


 神癒奈は二課で使われている特殊刀"プラウドシミター"を構える。


「君、最初からここが怪しいと気づいていたね? その身体…ただの狐ではなさそうだ。アヌバ様の祝福下におきながら活動ができているとは、調教のしがいがある」

「祝福…?」


 祝福と聞いて神父は奥にあった像に手を伸ばした。そこには、顔にぽっかり穴の空いた翼の生えた男の像があった。


「みたまえ、これがこの街の守り神、アヌバ様だ。私はこの古びた教会で、アヌバ様の復活を望み、そしてそれを叶える儀式を成功させた」

「もしかして…それがアヌバウィルスの元凶…」

「この教会は聖域だよ、ここの教会に来たものはアヌバ様の祝福…その種子を植え付けられる。次第に自我を失い、一度死に、そして最終的にはアヌバ様の僕となるのだよ」


 なるほど、だから神癒奈からして嫌な空気が漂っていたのかと彼女は感じ取った。同じ神である以上、反応が起きたということかと思う。


「じゃあ、街にいる人たちは…!」

「あぁ、殆どがアヌバ様の種子を受けているか、僕になっているかになっている。私は、祝福を受けていながらも自我を保っているがね」


 すると、神父から巨大な影が現れた。


「まずは邪魔なイストリアの兵士から片付けよう」


 神父がそう言うと、外から銃声が聞こえて来た。


 ーーー


 フィアネリスが二課のメンバーを守ろうと直掩にまわっている時だった。


「なんなんだこいつは⁉︎」


 二課のメンバー達の前に急に暗い影が大量に現れた。フィアネリスは先程知った情報から、これがコリーとエイルが戦った敵だと知る。


「趣味が悪うございますね?」


 フィアネリスは持って来た武器を構える。だがしかし今回彼女が持ち出してきたのは調査用の装備"ミッドナイトアイ"だった。火力はいつものものより遥かに劣る。だが守らねばと彼女は飛び出すと、黒い影が線を走らせて来たのを盾で受け止めた。


「本来は戦闘用ではありませんが!」


 索敵用のカメラガンを構えると黒い影をすり抜けて飛び、影が伸ばした線の先にあった住民を見つける。各々が武器を持っているが、なんとか二課のメンバーだけで対処していた。そこへ向けて、カメラガンの先から索敵波動砲を撃つ。

 短距離にしか効果のない低威力の波動砲だが、人を殺すには十分で、攻撃を受けた人たちは簡単に爆ぜた。


「無事ですか? お嬢様方」


 二課の隊員達の前に現れ、フィアネリスは盾を構えながらそう言う。


「四課の天使…! 助かった!」

「町の人が皆こんな状態だ、俺達は無事な連中を逃がしたい! 援護頼めるか⁉︎」

「お任せを、行けるところまでエスコートしましょう」


 フィアネリスはそう言うと、二課のメンバーが普通の街の人を逃す中、黒い影を放つ住民を相手取る。装備こそ脆弱だが、本人の技量も相まって、二課が町の人を逃がしている間、うまく敵の攻撃を引きつけた。


「しかし、死んだ者からこのような異物が生まれるとは、なかなか厄介なものですね」


 複数の敵から線が飛んでくる中、フィアネリスはバレルロールなどを駆使して空中で回避する。

 そして空いた隙があれば波動砲を発射して住民を纏めて倒した。


「神癒奈さんたちはご無事であればよいのですが…」


 敵の総本山に入り込んだ神癒奈達を、フィアネリスは心配した。


 ーーー


「たぁっ!」


 教会の中で神癒奈は影の攻撃を避けながら戦う。加速によりスピードの面で遥かに上回っていて攻撃は当たらないが、敵の数が多い。まずは頭数を減らさねばと神癒奈は思った。


(ここにいる住民は、みんな生気がない、だったら、思う存分やるだけです!)


『火針!』


 プラウドシミターを逆手に持つと、焔の弾を飛ばす火針で弾幕を作り、住民達を燃やし殺した。


「神聖な教会で暴れてくれますね!」


 神父が巨大な影を使って攻撃をするが、数を減らせばこっちのもの、ひらりと避けると次々と敵を倒していく。だが変だ。敵を倒しているにも関わらず神父は依然として余裕の表情を見せている。

 何かある…神癒奈はそう思った。


「しぶといですね、これで死になさい!」


 すると神父は影から大量の線を伸ばして来た。あらゆる方向から影が飛んでくる。回避は不可能、そう判断した時だった


「止まってください!」


 飛んできた線を停止の力場で防ぎ、神癒奈は神父に飛び込み、プラウドシミターを突き刺し、像に突き刺した。


「ぐほぁっ!」

「これで…貴方の野望もここまでです」


 神癒奈は勝ったと思った。だが、神父はやはり笑顔を崩さない、むしろ向こうのほうが勝ち誇ったように笑った。


「くくく……少し、遅かったですね」

「何を…?」

「先ほども言いましたよね、アヌバ様の復活の儀式は成功したと……」

「……? …っ!」


 まさかと思い神癒奈は神父から離れる。すると、神父の体が泥のように崩れ始める。


「さぁ…アヌバ様! われわれを贄として、蘇るのです! そして世界中の命を糧とし、自らの存在を広めるのです! ふははははは!」


 神父はそう言い残し、体が朽ちていった。同時に教会周辺が揺れだし、地面にヒビが入る。

 慌てて神癒奈は外に出る。すると、教会の真下から、巨大な手が突き出されて来た。


「これは…!?」


 巨大な手が地面を掴み、そこから何かが這い出て来た。それは、教会の像で見た、顔に穴の開いた翼の生えた巨大な男が現れた。


「これが…アヌバ」

「神癒奈、これはどういうことだ⁉︎」

「あれが…アヌバウィルスの元凶、この土地の神、アヌバです!」


 巨神…アヌバの復活を目の当たりにし、永戸達は驚愕する。アヌバは神癒奈のことをジロリと見ると、巨大な手を振り上げ、振り下ろそうとして来た。その時だった。


「叩き斬れ! エルメイル!」


 桐枝がギリギリ到着し、聖剣エルメイルで腕を弾き返した。


「お待たせっす先輩! きりちゃんが守りに来ましたよ!」

「永戸先輩、神癒奈さん、荷物を持って来ました…私は後方から援護しますので」


 エイルから2人は専用の武装を手渡される。神癒奈は夜廻桜を、永戸はイクセリオスとリヴァンジェンスⅡをそれぞれ受け取った。そしてエイルはそのまま下がり、バラウール重戦車砲を構えて攻撃を開始する。


「永戸! 無事か⁉︎」

「先輩、なんでしょうあれ⁉︎」

「あれが、ウィルスの元凶だ、あれを、俺たちで対処しなければならない」


 ライとコリーがやって来て、永戸がそう言うと両手に武器を構えた。右手にはイクセリオスを、左手にはリヴァンジェンスⅡを。

 神癒奈も覚悟を決めると刀を構える。


「あーあー、結局化け物退治っすか、これ終わったら、みんなで温泉、絶対行くっすよ」

「うん! 守るよ!」


 桐枝はエルメイルを両手に持ち、コリーは狙撃銃のポインター103を構える。


「マスター、空からは私が見ています、存分に戦いましょう」


 空からフィアネリスがそう通信してくる。四課のメンバーは全員準備ができていた。


『仕方がない、二課も戦闘に参戦する、行け、駄犬共! 四課だけに仕事を任せるな!』


 レナルドの指示で二課のメンバー達が防護服を着て武器を持ってやって来た。全員やる気のようで、それぞれが能力や武器をちらつかせている。


「さぁ、総力戦だ。神殺しの時間と行こうじゃないか」


 永戸がそう言うと、神癒奈達は走り出した。

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