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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第七章 信仰と病の町
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死人に生えた口

 コリー達が倒した敵の調査は早速行われた。現場に調査メンバーが急行し、二課の人達が死体を調べていく。


「これは…体内の血液が全てアヌバウィルスに汚染されてます。血が黒いのはそう言うことでしょう」

「肉体は腐ってはいませんし、脳も反応はあります。肉体そのものはごく普通です。ですが全身にアヌバウィルスがあります。ある種の寄生された状態かと」


 重要な証拠が見つかり、二課のメンバー達は次々と死体から情報を取得していく。


「コリー先輩の大活躍のおかげっすね!」

「あっははは…そうだね」


 桐枝からぺしぺしと叩かれるがコリーは引き攣った笑いしか出てこなかった。

 現場にレナルド課長がやってくると、死体の様子を見る。


「ふむ…これまでの情報は死体からしか見てこなかったが、まさか生きている状態の個体からこんな情報が得られるなんて」

「しかし変です。この症状、通常の感染者とは比べ物にならないレベルです…ここまで来ると、もはや死んでいると同然です」

「確か、先程感染したメンバーに末期患者がいたな? その患者の状況はどうなっていた?」

「末期とはいえここまで酷い状態ではありませんでした。前に調べた死体にも、この状態のものはありませんでした」


 それを聞くと、レナルドはふむ…と考え込んだ。すると、一つの考えに辿り着く。


「さっき、死んだはずの街の人に出迎えられたと言ったな?」

「はい、名簿から確認を取りましたが、その者はやはり死んだ筈の者でした」

「じゃあ、こいつはどっちだ? 生きた町の人か、死んだ奴か」

「この方は…………死んでおります」


 やはりなと言うと、レナルドは答えを出した。


「こいつは、全身をアヌバに汚染されて生き返ったゾンビみたいな者ではないかと私は思う。見た目も声も生活も普通だが。中身はクソウィルスに寄生された操り人形、そう捉えられないか?」

「成る程……確かにそれなら合点が行きます」


 レナルドの答えを聞くと、二課のメンバー達はそれを裏付ける証拠を探し始める。


「四課の猟犬、お前達、黒い影を見たと言ったな? どんな形をしていた」


 ここでレナルドはコリーとエイルに質問をしてきた。


「見た目は、黒い天使の姿をした影でした。そして、その影から……この住民に向けて、一本の線が伸びていました」

「住民を殺害したら、黒い影も消えました」

「そうか、今後の調査の弊害になる可能性があるかもしれんな、総員聞いたな? 黒い影を見たら線の先にある住民を殺せ、そいつは寄生された死体にすぎない」


 レナルドはそう言うと立ち去ろうとする。ふと、彼女は空を見た。黒い雲がいつまでも覆われている。


「……降り出してきそうだな」


 ーーー


 コリー達が重要な証拠を見つけていた時だった、神癒奈達は隔離用のテントでじっとしていた。


「どうやら情報が更新されたみたいですね」

「ほんまや、死体が蘇って普通に喋るようになる…神癒奈っちの言うた通りやな」


 それぞれがEフォンで情報を見て、容態が悪化すれば神癒奈から生気を分けてもらう、そうしてひとまずはウィルスに対して抗っていた。

 後々の検査で神癒奈の体内のウィルスは、彼女の肉体の性質もあってか、過剰な生気の供給でウィルスが死に、完全に排除されたと確認されたが、残った三人は違った為、神癒奈は隔離室に残っていた。

 静かな時間だった。だがその静寂は、ある事をきっかけに崩れる事となる。


「あぁ…あぁああっ…!」

「ダリー! こちらラグリス! ダリーの様子がおかしくなった!」


 末期患者だった人が急に痙攣を始めたのだ。神癒奈はすぐに近づいて容態を見る。生気は充分にある、とすると、このウィルスの違う効果か? そう思った時だった。


「頭の中で、声がっあっあぁああああっ!」

「ダリー!? しっかりせぇ! アンタは大丈夫や! 四課の狐ちゃんがついとる!」

「俺だ! ダリー! 大丈夫だ、落ち着け……ぐぁっ!」


 ダリーと呼ぶ末期患者はベッドから転げ落ち、のたうちまわる。ラグリスというバディの男は取り押さえようとするが、彼が取り出したナイフで切りつけられてしまった。


「ラグリス! ダリー…アンタ…何してくれてんのや! 同じ部隊の戦友を傷つけるなんて気でも狂ったか!?」

「違う!! 違う!!!! 身体が……勝手に……!! あぁっ! あぁああっ!」


 するとダリーはそばにかけてあったトマホークショットガン"ドアノッカー"を手に取り構えた。それを見た三人は身を引く。


「う…撃ちたくない!! けど身体が勝手に動くんだよ!! 頼む!! 俺を……うっぐぁぁあっ!」


 ダリーは頭を抱えると銃口をシグナイトに向けた。 危ないと思った神癒奈は咄嗟に飛び込んでダリーと取っ組み合うと、ドアノッカーの銃口を上に向ける。するとトリガーが引かれ、散弾が上へ飛んだ。


「シグさん! 今すぐ看護兵を呼んでください!!」

「分かった!!」


 そう言ってシグナイトは看護兵を呼ぶ、神癒奈は抵抗するダリーを押さえ込むと、ドアノッカーを奪い、ストックで頭を殴って気絶させた。

 その後、看護兵がやってくるが、彼の容態を調べた看護兵に疑いたくなる事実を告げられる。


「ダリーは、ダリーはどうしちまったんや⁉︎」

「彼ですが…全身にウィルスが回っていて、脳まで侵食を始めています。本来ならば既に死んでいる筈ですからね、それを無理やり延命させた結果、ウィルスが第二の症状とも言えるものを無理やり発現させたんだと思います。今はまだ人として保ててますが…実質的なタイムリミットが……できてしまいました」

「つまり、それまでに事件を解決してワクチンを作らなダリーは死ぬんか⁉︎」

「死ぬよりも酷い事になります。ウィルスに身体を乗っ取られて、生きた死体として動く事に…」


 看護兵からそれを聞いたシグナイトは一歩後退りした。そして、彼女はあることに気づいてしまう。


「ま、待つんや…ダリーがこうってことは…う、ウチも…ウチもこのままやとダリーみたいになるんか⁉︎」

「…そうとしか考えられません」

「い…いやぁあああああ!」


 目の前で豹変した戦友と、それと同じになる恐怖に耐えられなくなり、シグナイトはパニックを起こした。


「いやや! こんなクソウィルスに身体中ぐちゃぐちゃにされて死にとうない!! こんなの…こんなのってあんまりや!」

「落ち着いてください! まだ時間はあります!」


 泣きじゃくるシグナイトを神癒奈はなだめる。だが彼女の手を跳ね除けると、シグナイトは叫んだ。


「ええよなぁ神様は! 自分だけ生き残ることができるっちゅーことやから!! ウチらみたいに感染しても他人ヅラができて!」

「そんな事ありません!」


 すると神癒奈はシグナイトの頬をぶった。その瞬間、シグナイトは静かになる。


「他人ヅラができるんだったらとうの昔に私は貴方を見捨ててます!! 誰も死なせたくない! だからこうして私は貴方に生気を分けたんじゃないですか!」

「…だとしても……いつかはああなるんやで……ウチはまだ…死にとうない……」

「…分かってますよ、死にたくないって気持ちは、十分分かってます」


 シグナイトを抱きしめると、神癒奈は優しい声で彼女に語りかけた。


「シグさん……私が病気をなんとかしてきます。だから、貴方はここで待っててください」

「…みゆなっち……こんな、こんな酷い事言うた奴を…許すんか?」

「何言ってるんですか、私と貴方は、友達じゃないですか」


 そうすると神癒奈は小指を出してシグの小指と合わせて約束をする。


「シグさん、待っていてください。私が必ず、この事件を解決してきますから、だから、最後まで諦めないでください」

「…神癒奈っち……」


 シグナイトの目から溢れる涙を拭うと、神癒奈は立ち上がり…隔離室の外から出た。


「永戸さん、私、作戦に復帰します」

『神癒奈? 大丈夫なのか?』


 通信機越しに神癒奈は覚悟を持った目で応える。


「はい。私は大丈夫です。それで、目星をつけていたあの教会がありますよね、あそこに、行ってみようと思います」

『あそこは感染もするし、何があるのかわからないんだぞ、1人じゃ危険だ』

「だったらバックアップを誰かお願いします。それだけでもありがたいので」


 そう言うと、神癒奈は通信機を切り、空を見上げる。ポツポツと黒い雨が降り出してきた。その雨が全身を濡らし、神癒奈は冷たい感覚を味わう。


「……時間はありません」


 友人を守るために、そう決断すると、神癒奈は教会の方へ向かった。


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