何かが違う街
調査チームに加わることになり、神癒奈はシグナイトと組む事になった。
「おっ、神癒奈っちやん、アンタが一緒だとなんだか心強いわ」
「み…神癒奈っち?」
独特なあだ名だなぁと神癒奈は困惑する。食事中の時に仲良くなったシグナイト、メアドの交換なんかもして、すっかり友達気分だ。
「そっ、ええあだ名やろ? ウチのバディがアンタなら鬼に金棒やわ!」
「いいんですか? 私達、能力と固有の武器が使用禁止されてるんですよ?」
「問題あらへん! 必要になれば課長から許可を取ればえぇ」
許可取ってる暇あるのかなぁと神癒奈は思う。周りを見渡せば他の二課のメンバーや四課の仲間達が町に入っていくのが見えた。
「ほな、ウチらも行こか、ここで油食ってると課長がうるさいし」
「はい!」
そうして神癒奈達も町の中に入る。
【ようこそ! 愛と平和の町、フォーリルタウンへ!】
町に入ると見えたのは、少し寂れた看板が置かれた広場だった。そして、次に飛んできたのは、盛大な拍手だった。
「わー! イストリアの兵隊さんだー!」
「あらあら、きっとこの町を守りにきてくれたのね」
町の人たちが四課と二課のメンバーを出迎える。それを見た瞬間、二つの課の実質的な現場指揮官である永戸と二課の男が吠えた。
「どう言うことだ⁉︎ なんで歓迎されてるんだ俺たちは⁉︎」
「分からない! 前回来た時はこんな感じではなかった! 人通りもないしもっと寂れていたんだ!」
永戸達がそう言い争うが、町の人たちはそれを疑問に思わず、イストリアの兵士達を迎え入れる。
「きっと長旅でお疲れでしょう、ここには美味しいご飯や楽しい場所がたくさんあります、どうか休んでいってくださいませ」
「んじゃあ遠慮なく」
「待て桐枝、空気などの感染リスクが低いとは言え、住民から提供されたものは絶対に手を出すな」
桐枝が呑気に行こうとするが、永戸はそれを止めて、二課の隊長はレナルドに連絡を取った。
「課長、町の様子が変です! 先程まで人通りがなく住民も見なかったのに急に町の人が現れて歓迎をされてます!」
『ほう……調査を続けろ、異変を隅から隅までくまなく調査するんだ』
通信を終えると、二課の課長は全員に探索の指示を出した。言われた通り、総員が探索を始める。
「なんやなんや? 急にこんな出迎えられるなんて、さっきとはえらいちがいやけど」
「さっきはどんな感じだったんですか?」
「人などおらんかった。1人たりともな、みーんな家の中からウチらを覗いておった」
そう言うとシグナイトはEフォンの写真を見せた。そこには、先ほどの広場が写っていたが人の姿は全くなかった。よく見ると写真には窓から人が覗いているのが見えた。
悩んでても仕方無いので、早速、町の人に聞いてみる。
「すみません、ここで、人が死ぬ病が流行ってるって聞いたんですけど、何か知りませんか?」
「そんなもの、このフォーリルにはないさ、町の人はみんな健康で、病気なんて起こるはずがない」
「おかしいなぁ、ならこれ、見てもらえるか?」
シグナイトは町の人に死体となった人の画像を見せた。だが町の人は冗談そうに笑う。
「ははは! ご近所さんじゃないか、目を開けて寝るとは器用な寝方だね、大丈夫、こちらの方は死んでないよ、ほら」
「ええ、私は生きてますよ、この通り」
「…なんやて?」
画像の死体と同じ人が立っているのを見て、シグナイトは驚愕する。
「う、嘘や! ウチは確かに見た! この姉さんは先程まで死んでおった! 脈も心臓も何もかも測った! 生きとるはずがない!」
「悪い冗談を言わないで、私は生きてるわ、ほら、ちゃんと心臓の鼓動もあるでしょ?」
そうすると死体だった筈の女性はシグナイトの手を取り、脈を測らせた。確かに、心臓の鼓動があった。
「嘘やろ…何で、何で生きとるん?」
死んだ筈の人が動いていることに、シグナイトは目を疑った。思わずぐらりとよろけかけるが神癒奈に支えられた。
「……」
神癒奈は死体だった女性をじっと見つめた。そして、何かを感じ取ると、神癒奈はシグナイトを連れていく。
「シグさん…」
「な、なんや神癒奈っち、なんか思うことでもあるんか?」
「さっきの女性ですけど…死んでます」
「はぇ⁉︎ お、オカルトかいな⁉︎ 生憎やけどウチはそう言う話苦手やぞ!」
シグナイトは慌てるが、神癒奈は冷静に答える。
「私の一族である焔月は、生気の力を利用した一族なだけあって、生命の感覚に一際敏感なんです。先程の女性からは、生気が確認されませんでした」
「それってつまり…死んでるのに動いてるっちゅーことか?」
「…そうなりますね、でも、体自体は無事です」
神癒奈は先ほどの感覚を確かめながら考える。
「見た目や肉体の活動そのものは普通に行われてます。でも、魂の感覚はありません。例えるなら…そう、人形と言うべきでしょうか」
「死んだ人間が、何者かに操られとる…的な?」
「そう考えるのが自然です」
ただ、神癒奈はうーんと悩んだ。
「これを確認することってできないんですよね、肉体そのものは生きてる、魂だけ抜けてる状態ですから、肉体の状態を確認する機械とかでは判別がつきません」
「確かに…流石にウチらは魂とかを調べる機械なんて持っとらんからな」
そうして2人は表に出てもう少し何かないか調べてみる。町の人は迎え入れようとするばかりだ。
「この町でなんか特徴とかってあるんか?」
「この町の特徴と言えば、あそこにある教会さ! あそこの鐘が鳴ったらみんなで教会に祈りに行くんだ、もうすぐその時間だし、一緒に来るかい?」
調べられるところは全て調べる、レナルドの指示を思い出すと、シグナイトは答えた。
「ほな、そうさせてもらいましょか」
そうして神癒奈達は町の人に迎え入れられ、教会へ向かった。
ーーー
教会にやってきたが、空気はどこか神秘的なものを感じた。まだ時間ではないせいか、人はまばらにいた。だが、どの人も熱心に祈りを捧げていた。
「神父様! イストリアの兵士達がいつもの祈祷を見たいと申したので連れてきました」
町の人がそう言うと、奥から神父らしい男がやってくる。
「これはこれは、ようこそいらっしゃりました」
優しい表情をした神父が、神癒奈とシグナイトを迎える。
「ここは一体どう言うところですか?」
「ここは街の中心の教会です。毎日決められた時間に鐘を鳴らしたら皆で祈祷を行うのですよ、町の人も、ここをよくご利用なさってくれてます」
なんや普通の教会やんとシグナイトは言うが、神癒奈は何かを感じ取っていた。
「祈祷って、お祈りの事ですよね?」
「はい、見ての通り、皆様が真摯に祈りを重ねているでしょう? この街を守る守護神様のおかげで、今日も我々は幸せに生きていられてるのです」
神父がそんなことを言ってるうちに、鐘がなり、教会の中にゾロゾロと人が入り込んできた。皆が席につくと、それぞれが祈りを重ね始める。
「よろしければ貴方がたも祈りをしていきますか?ここの神様はどのような方々も受け入れますので」
「うーん、あんましそう言うのには興味ないし、ウチはいいかなぁ、神癒奈っちは?」
「……ん? あぁ! 私も、宗教が違いますしいいですかね」
こう言うと、神父は残念そうにそうですかと言い、祈祷する者達のところへ行った。
「シグさん…ここから出ましょう」
「んー? もうちょい見てってもええんやないか?」
「いえ……なんだか、嫌な感じがするんです」
神癒奈は感じ取っていた。この教会は、普通じゃない気が立ち込めていると。ここにいたら何か嫌なことが起きる、そう彼女の中の警笛が告げていた。
「行きましょう」
「あーもう待ってーな!」
そうして2人は一度教会から去る。




