表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第七章 信仰と病の町
80/258

特査二課の空気

 二課の管轄に入ることになり、四課のメンバー達はせこせこと働かされることとなった。


「なんできりちゃんたちがこんな重い荷物運んでるんすか」


 調査用機材を持った桐枝が、二課のトラックまで荷物を運ぶ。


「前線へはまだ出てないとはいえ、恐らく二課をフル稼働させる為の下働きとして俺たちがいるって感じだろうな」

「あの課長さん、目つきが怖かったです…」

「レナルド課長も大戦の帰還者だからな、隊員が命がけの仕事をするだけあって、あの人はいつもああなんだ、むしろユリウス課長の方が柔らかすぎるくらいだよ」


 そう言うと永戸は荷物をトラックに乗せた。まだまだありますよとエイルが荷物を大量に持ってきて、神癒奈と永戸がそれを荷台に乗せる。


「悪いな、四課の死神さん達、俺たちの下で働いてもらって」

「いいんだよ、普段のクソッタレな任務よりこう言う下働きの方が気持ちが楽だ」


 運転席でコーヒーを飲む二課の隊員と永戸が気楽に話す。


「他の課との間って仲良いんですか?」

「基本的にはな、督戦隊という扱いではあっても、特殊部隊である特査のチームには基本逃げ出す奴なんていないし、普段の仕事柄から頼りになる強力な味方という扱いが多いんだ。まぁ入りたての新人とかからは当然怖がられるけどな」

「四課の活躍っぷりはいつも組織内の情報板で眺めてるからな、戦闘に向いた能力が少ないウチの課からすればありがてぇのよ」


 不思議な関係性ですねと神癒奈は思う、じゃあと今度は聞き返した。


「じゃあ逆に仲が悪い所ってあるんですか?」

「この前一緒に戦った一課とは仲が悪い、アイツらがイストリアの表となるヒーローの部隊で、俺たちが裏となるダークヒーローの部隊。正反対の目的だから相性が悪いんだよ、おまけに一課の課長はレナルド課長より話が通じない奴だからな」


 アレ以上があるのかと神癒奈は思う。そうこうしているうちにトラックに荷物が積み終わり、四課のメンバーは次の仕事へ向かう。次の仕事はキャンプの炊事当番だ。


「ん……んん? んー…」

「…まさかお前、料理したことないのか?」


 ナイフを使うが、変な持ち方でジャガイモを不恰好に切る神癒奈を見て、永戸は言う。

 そう言えば、普段の生活において神癒奈は料理をあまりしたことがない。同居こそしているが食事は基本フィアネリスに任せているし、ボランティアの任務の時だって、住民からの人気取りの為に配膳役を任せている。神癒奈自身が料理をしているところは見たことがない。


「神癒奈、ナイフは俺と同じように持つんだ、切り方も真似しろ、ゆっくり、少しずつでいい」

「はいっ!」


 永戸は神癒奈に料理の仕方を丁寧に教えていく。途中危ういところが何度もあったが、神癒奈は教えられた通りにナイフ捌きを覚え、10分ほどすれば綺麗に切れるようになった。


「よく覚えたじゃないか、偉いな」

「永戸さんが教えるのが上手いからですよ」


 えへへと笑いながら神癒奈は尻尾を振る。その後も調理は続き、ひとまず二課に配る料理は完成した。後は食事に戻ってきた二課の人に配るだけだ。


「そう言えば、今回の任務の病原菌のデータ、まだ見てませんでしたね?」

「一応確認するか」


 そう言うと四課のメンバーは空いた時間を活用して端末から今回の任務の重要物となる病原菌の確認を行なった。


「アヌバ・ウィルス…感染経路は不明、感染した者は数日のうちに死ぬ……」

「曖昧な情報しかないですね」

「まだ手をつけて間もないからな、そのうち情報が更新される」


 Eフォンをしまうと、丁度二課のメンバーが帰ってきた。病原菌対策なのか、重装の防護服を着て彼らはやってきた。その後、除染室に行ったりシャワーを浴びたりをした後、彼らは四課の作った料理を食べに来た。


「ほーっ、死神の四課は殺し屋だけでなく料理までできるのか、しかも美味そうだ」

「おう、食え、こう見えて普段からボランティアで炊事はめちゃくちゃやってるんだ、汗かいて体力減らした分食えよ」


 はははと互いに笑いながら料理を沢山の者に渡す。食事を渡された者達は皆旨そうに食べていた。

 神癒奈から見て、死神部隊だからと恐れられるのかと思いきや、同じ特査の系列チームなせいか、皆和気藹々と話していた。

 永戸達も料理を食べようと自ら作ったご飯をよそってそれぞれの場所で食べようとした、その時だった。


「おお! アンタらが四課の亜人組か!」

「?」

「…はい?」


 神癒奈とエイルが一緒に食事をしていた時、神癒奈と同じように頭に耳を生やした女性がやってきた。


「ウチはワーウルフのシグナイト・レートナック、シグって呼んでーや」

「よろしくお願いします、シグさん」

「よろしく…です」


 はははと笑いながらシグナイトは神癒奈やエイルと並んで座る。


「このメシはアンタらが作ってくれたんかいな?」

「はい! そうです!」

「ありがとな! ウチらのためにこんな美味い飯を作ってくれて」


 笑顔のまま彼女はパクパクと料理を口に入れていく。相当美味しいのか、尻尾まで揺らしていた。


「ワーウルフって、人狼って奴ですよね?」

「そやで、本来であれば、人に擬態し、夜闇に潜んで人を襲うっちゅー種族や、そっちのアンタは九尾の狐で、アンタはアラクネってとこか?」

「そうですね」

「そう…です」


 2人が肯定すると、シグナイトは目をキラキラとさせながらはしゃいだ。


「四課の噂は聞いてたけど、化け物チームかと思いきや、こんな偉いべっぴんさんなもんがおるなんて、気に入った、今日からウチらは同じ亜人仲間や!」


 にへへっとシグナイトは笑う。仲間と呼ばれて神癒奈達は照れ臭くなった。


「二課の仕事って大変なんですか?」

「そらもう大変ったらありゃせんわ! 失敗したらレナルド課長からどやされるし、調査に出れば手探りで危ない橋を渡らなあかんし、調査用の防護服は蒸れるしで楽なとこなどありゃせん!」

「防護服ってあのすっごく分厚そうな服装ですよね? アレなんで着てるんですか?」

「ウチらの目的は未知の領域や汚染地帯の調査が目的やからな、万が一のことを考えての汚染対策の装備なんや、まぁ、攻撃で服が破けた時は終わりやけど、それ見てると四課の服装が羨ましいわ、個人に合わせてオーダーメイドされてるんやろ? 着心地ぴったしそうでええなぁ」


 確かに神癒奈達の服装は個人に合わせて作られた特注品だ。個人の能力を最大限発現できるように作られている。それと比べて二課の装備は全てアレだけなのかと考えると神癒奈は着たくないなぁと思った。


「で……ウィルスについての情報は見つかったんですか?」

「見つかったっちゃあ見つかったけど、ご飯時に聞くもんちゃうで?」

「具体的には?」

「そこまで聞きたいんなら…まーしゃーないか、肉体的な変化は一切あらへんな、体内体外含めて、ウィルスによる損傷はあらへん、死んだ連中は眠るように死んでおった」


 Eフォンの端末から、二課がとってきたデータか、写真が共有される。そこには、本当に体に傷ひとつなく死んだ人がいた。どの写真にも同じようなものばかりが映っていて、変化はない。


「街の空気や水、調べられるところは全部調べた、けど感染の原因となったものは一切あらへんかった。感染者だって、こんなんやから誰が感染しとるのかわからへん、今度の調査は住民からの聞き込みになるやろな、まぁ防護服着なくていいのは安心やけど」


 その話を聞いて神癒奈はほーっと納得した。そんな話をしている途中だった。


「四課の猟犬共、いるか?」


 レナルド課長が食事中の四課のメンバー達に話しかけてきた。全員は即座に立ち上がり並ぶ。


「感染経路の確認から、防護服なしでの活動が可能と判断された。次の調査からは貴様らも加わってもらう」

『了解!』

「それとだ、貴様らにやらせると盛大に街をぶっ壊して調査の邪魔をしかねん、能力は直接危害を与えるものを全て禁止、武装も二課指定のものを使ってもらう」


 そう言われると全員が内心うげぇ…となった。普段命を預けてる武装が使えないなんてと。


「何度でも言うが貴様らは今二課の管轄にいる、ここは殺し専門の四課ではない、二課にいるなら二課のルールに従え」


 そう言い残すとレナルドは去っていった。


「ちぇっ! 感じの悪い課長っすね! まるで近所の怖い番犬っすよ」

「そう言うこと言っちゃめっ! 私達は今二課にいるんだから、課長さんの言うことも最もだよ」


 他の仲間がそんな会話をしている中、神癒奈は出発前の日に永戸が言っていたことを思い出した。


【二課のサポートに行くってことは二課だけではどうにもならない事態になる可能性があると言う事だからな】

「レナルド課長は、何かが起きる可能性を察知して、私達を呼んできた…そう思いませんか?」

「奇遇だな、俺もそう思う。あの人の嗅覚が、俺たちを引き寄せたのかもしれないな」


 去っていくレナルドの姿を見て、神癒奈達は、これから起きることがどうなるのか、想像した…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ