四課の日常
絶望、アズウルとの戦闘から一週間ほど、四課も元の生活が戻ってきた。元の、仕事に追われながらも楽しい毎日に…毎日に…。
「はい、俺の勝ち」
「永戸!色変えカードは最後に使っちゃいけないんだぞ!」
「知らねぇよ! ローカルルールだろ!」
「な、なんできりちゃんに大量のカード押し付けるんすか」
「貴方の泣き喚く姿がとても可愛らしいのでつい♪」
「はいUNO〜、二番手は私で決まりだね!」
現在、四課のオフィスでは賭博UNOが行われていた。
「なんでことあるごとにギャンブルしようとするんですか⁉︎」
「お給金いいからみんな増やしたいんだよ…まぁでも」
エイルがそう言うと、ガチャリと部屋の扉が開き、ユリウスが入ってきた。
「君達、仕事がないからって賭け事はよくないなぁ」
「課長は賭け事嫌いだから…」
ユリウスが来た途端UNOのカードを全員しまい、かけられてた金もポケットにぶち込んだ。
「都民や異世界の国々からの税金で働くこの組織で賭け事が行われてるなんて知られたらスクープものだよ? 暇を持て余すのは構わないが賭け事はしないように」
『はぁい』
そうして四課は今度こそ仕事に追われながらも楽しい毎日に戻る。デスクで各々が適当なタスクを進める。
「そういや桐枝、学校の方はどうしてるんだ?」
「楽しいっすよー、実質転校した感じっすけど慣れたっす、いやー、学校でもいろんな種族がいるんっすねぇ、この前のテレビに映ってたこと、みんなに知られて質問攻めをくらったっすよ」
桐枝も異世界の生活に馴染んできたらしい。学業もしながら四課に来ているが、ほどほどに楽しんでるようだ。
「あぁ…この前荷電粒子砲を撃った始末書…大量に来てます…辛いです」
「ま、まぁほら、街は守れたから良かったじゃないですか」
大量の始末書が積み重なるエイルを見て、神癒奈はまぁまぁとなだめる。
「皆さーん、お茶が沸きましどわぁああああ!」
「あ"っっっっ!」
「ずみ"ま"せ"ん"!」
コリーが大胆に転び、お茶やコーヒーが散乱し、ライの顔面に熱々のコーヒーがぶち撒けられる。
「今日も賑やかだね…」
「いつものことです、良いではございませんか」
ユリウスが引き攣った笑みをする中、フィアネリスはにぱーっと慣れたように笑う。
その時だった、全員のEフォンにタスクが入ってきたのは。
「君達、仕事の時間だ」
その言葉を聞いた途端、楽しそうに仕事をしていた皆の目が、獰猛な獣のような目つきに変わった。
ーーー
『使用許可が降りたのは暴徒鎮圧用の武器とゴム、ガス弾だけだ、暴れても構わないが、あまりやりすぎると都民が怖がる、加減をするように』
「了解」
ユリウスからの話を聞き、装甲車に乗りながら永戸達は答える。今回の仕事は単純明快、抗争の鎮圧だった。二つの暴力団が抗争を行なっているらしく、四課はそれの鎮圧に呼ばれた。
「じゃあ私先降りて狙撃ポイントに行ってるね」
「あぁ、頼むぞ、コリー」
装甲車の荷台に乗っていたコリーが飛び降りると彼女は狙撃地点まで走っていく。
「ザッケンナコラー!」
現地が見えたが、抗争は見事に乱戦状態になっていた。それに向かって装甲車は走る。
「あれ? なんか逆にスピード上がってないっすか⁉︎」
「このまま数人轢く」
「し、死人が出るっすよ⁉︎」
「安心しろ、この都市の住民は車に轢かれた程度では死なん!」
「そう言う問題じゃなーい!」
桐枝のツッコミを無視して装甲車は爆走し、暴力団員達を数人引いて吹っ飛ばすと、ぎぃいいいっと横滑りして止まった。
その場の暴力団員全員が装甲車をじーっと見る。パコっとドアが開いて丁寧に全員が降りると、全員武器を構えた。
「イストリアだ! 抗争をやめてその場から引け! 引かないなら容赦なくぶっ飛ばす!」
辺りはシーンと静かになる。だが直後、飛んできたのは罵声だった!
「ザッケンナコラー!」
「俺たちの仲間を数人引きやがって! ぶっ殺してやる!」
「みんなやっちまえ!」
そう言うと暴力団員達は一致団結してこちらに襲いかかってきた。
「ほら言わんこっちゃない! 相手ブチギレてるじゃないっすか!」
「全員セーフティを外せ、戦闘開始だ」
襲い来る暴力団員に対して、永戸達は各々の武器で戦闘を開始する。
「死ね! イストリアの犬げぼっふぁっ!」
だが戦力差は歴然で、多数の暴力団員を次々と鎮圧していく。
「うわぁ、ごちゃごちゃしてる、これじゃあ狙いづらいなぁ」
そんな乱戦を狙撃地点からコリーが見る。だが、彼女も腕利のスナイパー、的確に敵に照準を合わせるとゴム弾で倒す。
「ひーっ! こんなの普通じゃないっす! 明らかに非日常っすー!」
「これが四課の仕事だ!」
暴力団の刀を警棒で防ぐ桐枝に永戸が背中から敵を叩く形で喝を入れる。
「あはっ♪ 痛いですかぁ…♪ ゴム弾でも当たりどころが悪ければとても痛いですからねぇ、例えば、こことかぁ♪」
「鎮圧用の武装でもなかなか振り回してて楽しいですね♪ 開発部には感謝しませんと」
四課のサディストであるエイルとフィアネリスが、怪我しない程度で暴力団員を倒し、恐怖を植え付けていく。
「みんな楽しそうで何よりだ、易しい任務でよかった」
そういうライは盾一つだけで殴って1人ずつ鎮圧していく。
「模擬刀でも全然痛いですよね? 加減できてるでしょうか?」
神癒奈はカバーのついた模擬刀で威力を抑え、的確に殴る。
そうしてしばらく戦うと、暴力団員を全滅させた。
「よし鎮圧完了」
「割と早く片付きましたね?」
他に人がいないか確認すると、団員達を確保して撤収した。
ーーー
「任務終わらせてきました」
「うむ、お疲れ様」
任務から帰還すると全員が一息つく。
テレビでは情報統制により抗争の話は別の部隊が鎮圧した話になっていて、四課の存在は影も形もなかった。
各々が武器庫で装備を外し、ラフな格好になる。
「いつもやってて思うんですけど、四課の情報、よく秘匿できてますよね? 情報統制ってどうやってるんですか?」
「エイリアンを管理する組織の映画と同じパターンだよ、特殊な催眠術で記憶の底に隠しておくんだ。まぁ、フラッシュバックを起こしたり断片的に思い出す例もなくはないが」
ふぅんといいつつ神癒奈はテレビを見る。
「じゃあ逆に、四課って誰に知られてるんですか?」
「まずこのイストリアの兵士、次に提携を結んでいる一部の別の組織、そして各異世界の重要な団体だな」
「四課の情報が漏れることは?」
「反亜人デモのように、断片的にバレることはある。でも完全に知ってるとこはないと思う…よほどの悪の組織みたいなのでない限りは」
どっちなんですかーと神癒奈は言うが永戸は答える。
「実際のところ、イストリアはできてまだ数年の組織だから色々と実験的な部分が多いんだよ、この四課だってそう」
「どう言うことですか?」
確かに、異世界大戦が終結したのは数年前で、イストリアができたのもその時期になる。じゃあ、この組織のどこが実験的なんだろうと神癒奈は思った。
「突出した技能を持つエージェントを一課から三課まで分担して配置したことがまず一つだな、通常の兵士より過酷な任務になるが、上手く使えば抑止力や調査、護衛の要として活用できるようになる」
「成る程、適材適所ってことですね? あれ…じゃあ四課は? 三つの部隊がバランスよくあるなら四課はいりませんよね?」
そう、一課から三課まで存在するなら、別に裏の仕事とか言ったって四課の存在は必要ない。
「いいところに目をつけたな、そうだ、本来なら四課は必要ない。だが、四課は用意された。ここはある意味実験場だ。もしも、通常の手段では止めることができない、或いは、一般人に知られてはまずい異世界の案件を超法規的行動を取ってでも止める部隊が存在できればと言うな」
そう言うと永戸は机のコーヒーを飲み、神癒奈に答えた。
「ここの権限は他の課と比べて独立している。制限こそあるが頼めば大体あらゆる行動が許可されるし、必要があれば課長に頼らずとも隊員が独自に判断を下して行動が可能なようになっている。たとえ最後の一人になっても世界の危機を救えるように」
それで、と永戸はさらにもう一つ付け加えた。
「尚且つ四課は他の課の活動を後ろから見張ることができる。督戦隊としての面もあるんだ。そりゃ死神部隊と他の課から恐れられるわな」
「色々できるんですね」
四課の存在に納得すると、神癒奈はお茶を飲む。
「あとはまぁ厄介者の檻みたいな扱いを受けてるな。神癒奈と桐枝は監視対象、俺と課長とフィーネも似たようなもんだ」
永戸さんもそんな扱いを受けてたんですかと神癒奈は思った。四課って本当に不思議なところなんだなぁと思うと神癒奈はテレビを見た。
この平和も、四課あっての平和でできているんだと…。




