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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第五章 光を抱く少女と暴走していく勇者達
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初仕事'

桐枝達が出撃準備に入る少し前のことだった。巨大な魔物が出たとされる村に、拓人達は帰っていた。


「危ない所だったな、俺の力がなければ、全滅していた」


獣の魔物は無事討伐された。拓人のところは死傷者ゼロで、拓人自身の精神への影響も、今のところは比較的少なかった。そんな中だった。


「ん? あれは典子じゃないか、何で一人で帰ってきて…」


忠政のパーティーメンバーであった典子が一人で帰ってきた。それも血だらけの格好で。


「おい、典子、忠政や桐枝と先生はどうしたんだ?」

「どうって……」


俯いた姿で典子はしばらく黙り込む。拓人は何か嫌な予感を察知した。


「典子…まさか、みんなに何かあったのか?」

「あ、あはは…桐枝ちゃんと先生が、忠政に殺されちゃったんだよ」

「…⁉︎ 何だって⁉︎」


驚く拓人を他所に、典子は狂ったように笑う。


「忠政がね、魔物を守ろうとした桐枝ちゃんをグサグサに刺しちゃって、それを止めようとした先生の首が、忠政に……お"っ…」


あまりに衝撃的な光景だったのか、典子はその場に吐き出した。


「それで、忠政はどうなったんだ」

「知らないよそんなこと、私達は、クラスメイトで同じ仲間とかいってたけど、所詮ただの捨て駒だったんだよ、召喚されて、能力が定められてから、国からもクラスのみんなからも奴隷みたいに扱われて、最後には切り捨てられる、そんな捨て駒としてさ、あはは、あは、あははははは!」


すると典子は狂ったように笑い、拓人の首を手で掴んだ。


「うぐっ…何を…!」

「殺されるなら殺される前にやってやる、そうなれば、私が優秀な勇者だってみんな認めてくれるよね? 私が優秀な勇者だって証明して、この世界を救ってやる、だから拓人…お願い…」


典子は懇願するように拓人を見ると、こう告げた。


「死んで♪」


直後、魔法が放たれ、拓人の身体は全身が草木に縛られ、生命を吸い取られてしまう。


「がっ…ぁっ…!」


喉を貫く樹木で呼吸ができぬまま、拓人は力を吸い尽くされる。真の勇者と呼ばれた能力者が、あっという間に干からびて、そして…死んだ。


「ひぃいいっ!」

「典子あんたどうかしてるよ!」

「どうかしてるって? それはどっちだろうねぇ、それとも、最初からみんなおかしくなってたのかなぁ? あは、あはははは!」


倒れた拓人の死体から聖剣を抜き取ると、狂った笑顔を崩さずに典子は拓人の近くにいた仲間の首を刎ねた。


「血がぶしゃあって…あはっ♪ シャワーみたいに振ってる、気持ちいい、これが能力のある者の力なんだ」

「典子…どうしちまったんだよ…お前!」

「どうもこうもないよ、私は私だよ」


ぐちゅりと音を立てると、典子の身体が変化し始める。聖剣を片手に握り、身体は樹木のように硬くなり、全身が木でできた人ように変化する。


「桐枝ちゃん、待ってて、今から私が、世界を救うから」


その瞬間、典子という存在は、人という存在から"なり損なった"。


ーーー


作戦会議室に呼び出され四課のメンバー全員が一斉にして並ぶ。


「全員、揃ったね、少し前、勇者パーティーが全滅したという話が広がった。調査隊を派遣して調べたところ、原因は同じ能力者の暴走によると思われる。現在、その能力者は魔物を倒しながら北上中、少し経てば、ステイリア王都に入り込むと思われる」


モニターに情報が出る、死んだ勇者パーティーの情報が出た途端、桐枝は驚いた。


(拓人! あいつ、最強だったんじゃ…)


召喚されたクラスメイトの中で最も強い能力を持った拓人が死んだ事に桐枝は驚く、しかし、次の情報が出た途端、桐枝はより絶望に支配されそうになる。


「逃亡している能力者は、典子と名乗る今回の召喚者の一人だ。その者が姿を変化させて、身体をどんどん巨大にさせながら王都に向かっている」

「典子…なんで⁉︎」


そこに映っていたのは全身が木で出来た魔物で、その中心の顔には典子の顔が残っていた。典子の変化に驚く桐枝を、ユリウスがなだめると、話を続ける。


「我々はこれを"なり損ない"とし、討伐する事を決定した。総員、装備を着用後、王都に到達する前にこれを迎え撃つ。いいね」

『了解!』

「りょ、りょうかい!」


そうして全員が出撃準備に入る。桐枝も遅れずに着いていくが、典子の豹変が信じられなかった。


(なんで…典子…あの時助けたのに……どうして!)


「桐枝!」


前を走る永戸から声がかけられる。


「あいつは、お前の友達か⁉︎」

「そ、そうっすけど!」


桐枝が答えると、永戸は背中を見せながら話を続けた。


「…初任務が友人の処刑……辛いかもしれないが、頑張れよ」

「…あい!」


そうして7人は装備が置いてあるテントに入る。


「神癒奈、相手の体は樹木だ、お前の能力が効果を見せるはずだ、アタッカーは任せた。

「はい! 永戸さんはいつも通り、パイルを通してください!」


永戸はいつものパイルブレードとブレイズエッジを、神癒奈は夜廻桜を手に取った。


「コリー! エイル! あんなの相手じゃ通常の弾丸は効果がない! バラウール重戦車砲の焼夷弾を使うんだ!」

「了解!」

「わかりました…!」


ライがタワーシールドを持つ中、コリーとエイルは装甲戦闘装備を着て、各種武装を装備していく。

他の六人が準備していく中、桐枝は置いてけぼりを喰らっていた。


「武器、きりちゃんの武器は⁉︎」

「回収した剣がそこの棚にある、効果があるかわからないが使え!」


棚の中を見ると、そこには武器屋で買った剣があった。幸い損傷はなく普通に使えそうだ。


「フィーネ、そっちは大丈夫か⁉︎」

「装備は十全、いつでも出れますよ」


全身を天使用のアーマーで着込んだフィアネリスが、出撃態勢に入った。


「では、お先、偵察に参ってきますね」

「あぁ、気をつけろよ!」


そうしてフィアネリスは飛び立ち、先に戦地へと向かった。

そして永戸達も、装甲車に乗り込み、準備が完了する。


「出発するぞ!」


そしてライが運転すると、装甲車が走り出した。


ーーー


「キリエチャン……キリエチャン…!」


典子のなり損ないは、地面から魔力を吸い、どんどん巨大化しながら王都まで進む。

その途中の道で、王都からやってきた騎士団が、街を守りにきた。


「撃て!」


兵士達が大砲を撃ち、命中こそさせるが、外殻に少しひびが入った程度で、即座に再生する。


「ジャマァ!」


その直後、典子の足元から根が広がり、兵士達の首を貫いた。そして、典子自身の魔力を送り込むと、兵士達を侵食し、同じなり損ないとして変化させる。


「なっ…味方の兵士が⁉︎」

「怯むな! 戦え! ここで塞がないと王都が危険なんだぞ!」


騎士団が正面に立ってなり損ないを迎え撃つが、同じなり損ないの攻撃を受けると、どんどんなり損ないの数が増えていき、最終的には騎士団全てがなり損ないへ変化した。


「キリエチャン…マッテテ…!」


障害を全て排除し、王都へ再び動き出す典子…すると、空に流星が走った。


「目標を確認、マスター、攻撃許可を!」

「やれ! 意地でも行かせるな!」


空からフィアネリスが降りてきて、飛びながら腰と足のコンテナからミサイルを斉射した。ミサイル一発一発がなり損ないの雑魚を吹き飛ばすが、典子の方は無傷だった。


「無傷ですか、なら、灼熱波動砲は如何でしょう!」


フィアネリスは飛びながら槍を構えると、銃身が火炎放射器となった槍から、燃え盛る炎の波動砲を放つ。

その一撃を受けると、流石に火炎は耐えられないのか、典子は痛みで叫んだ。


「ア"ァアアアア!」

「っ…典子!」


フィアネリスの通信機越しに聞こえる悲鳴に、桐枝が叫ぶ。

装甲車から桐枝が身を乗り出すと、自分たちの倒すべき敵……典子の姿が見えてきた。


「桐枝ちゃん! 危ないから装甲車の中にいて!」


すると、装甲車のルーフの上に乗っていたコリーが、バラウール重戦車砲を放った。重い砲撃の音と共に砲弾が飛んでいき典子の急所に着弾、爆炎を上げる。


「フェイタルポイント効果確認!」

「アヅイヨォオオオオオ! キリエェエエエエ!」


燃え盛る炎の中、典子は苦しみながらより大きく成長する。


「なんで⁉︎ 急所に当てたはずなのに!」

「見ろ! あいつの足元を!」


ライがそう言うと、全員が典子の足元を確認した。すると、あの化け物が、足元から魔力を根を張って吸い上げてるのが見えた。


「あいつ! ダメージを受けつつもそれ以上に魔力を補給して回復してるんだ! あの根を斬らないと埒があかないぞ!」

「っ! 前!」


桐枝が指をさすと、前から木の根が突き出てきた。装甲車はまっすぐ突き進んでいる、このままでは衝突する。そう思ったその時だった。


「どいてください!」


神癒奈が刀を抜き、一刀のもとに木の根を刈り取る。同時に神の力を行使して地面をジャンプ台へと改変させ、装甲車を空中へ飛ばした。


「総員! 戦闘開始!」


装甲車から全員が飛び出し、なり損ないとなった典子の前に立つ。


「アァァ…キリエ? キリエチャンナノ?」

「典子…」


典子だった者が振り向き、桐枝と相対する。桐枝は、典子とまっすぐ目を向けた。


「桐枝…こいつと話しても無駄だ!」

「ちょっと待ってて!」


永戸が桐枝を止めようとするが、桐枝はそんな永戸を止めた。


「キリエチャン! イキテテヨカッタ! マッテテ! イマカラワタシガセカイヲ…!」

「もうやめて!」


典子が何か言う前に桐枝がそれよりも大声を出した。


「典子…今あんたがどんな姿なのか分からないの? 今自分が何をしようとしているのか分からないの?」

「キリエチャン…?」


疑問を浮かべる典子に、桐枝は真正面から向き合う。


「典子、きりちゃんはね、典子にこんな事をさせたいが為に、あの時逃したわけじゃないんだよ」

「……デモ、ワタシタチガヨワイカラ…キリエチャンハ…」


桐枝が忠政を押さえ込んだ時の事を思い出し。典子は叫んだ。その叫びを真っ向から聞き入れると、桐枝は返すように叫んだ。


「あんたが全部嫌になってぶっ壊そうっていう気持ちは痛いほどわかるっす……でも!」


桐枝は背中から剣を抜き、その剣から、眩い光を発生させた。その光は聖剣以上の力を放っていて、同時に、彼女を守る盾となる。


「だからと言って勝手にきりちゃんのせいにして壊さないでほしい! そんなにバカがしたいならこっちだってヤケになってやる! 典子、今から私は、あんたを殺す!」


剣を構え、典子と相対する桐枝、その怒号を聞き、安心したのか、永戸は無線で伝えた。


「聞いたな? 新人の心配はいらないようだ、派手にやってしまえ!」

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