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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第四章 焔月の呪いと秘宝、そして神へ至るキツネ
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真の継承者

傷だらけの永戸と、神として覚醒した神癒奈が、どちらにもなれなかった破獄と対面する。


「こうなったら、お前ら全てを喰らい尽くしてやる!!」


破獄がなり損ないの体でありながらも執念で永戸達に刀を振るい、焔を吐く。


「させない!」


神癒奈が前に立つと、力場を発生させ、刀を何も使わずに弾き返し、焔は吸収して自分の力にした。


「焔月式抜刀術、壱式!」


刀を握り、焔の点火により、鞘から爆速で抜くと、力場を刀に纏わせて切りつけた。


「なんだその力は⁉︎」


破獄は切られた傷を再生しようとするが、傷口が塞がらない、まるでそこの生命活動が停止してるかのように、傷口が開いた。

神癒奈に与えられた力は全能の力だけではない。加速と停止の力場を発生させ、物体の活動に影響を与える、永戸の身体強化の上位互換とも言える能力だった。彼の能力と比べ、神癒奈の身体は元から強い妖狐の体であり、同時に神の体である。身体にかかる負荷も、そこまでかからなかった。

焔とともに加速していく神癒奈が、破獄の身体にどんどん切り傷を加えていく。

破獄はそれを追いかけようとするも、追いつけずにいた。


「だったら先に死にかけの方からやってやる!」

「甘い!」


破獄が、永戸に向けて攻撃を仕掛ける。だが永戸も簡単にやられるやつではない、手負いではあるが攻撃をかわすと、聖剣から光を放った。


「眩しいっ!」

「そこだっ!」


閃光によって目が眩んだ隙に、白銀鉄針シルバーパイルを力一杯投げつけた。それが腹部に突き刺さると、破獄は痛みで声を上げた。


「うぐァアアアアアア! またその杭か!」

「今度は身体に思いっきり突き刺してやるよ!」


そう言うと永戸は聖剣をハンマーに見立て、突き刺さった白銀鉄針を叩き、より深く杭を突き刺した。

白銀鉄針の効果はなり損ないとなった破獄相手でも余裕で通用した。腐り果てはしないが、殺生石の力を借りた彼の体から力が抜けていく。


「このぉおおおお!」

「永戸さん!」


破獄が刀を振り上げ、永戸に向けて攻撃しようとした時、神癒奈が前に立ち、停止の力場を妖刀夜廻桜にまとわせ、一気に振るった。その瞬間、彼の片腕が刀もろとも斬られ、宙を舞う。


「凄い…」


永戸は神癒奈が見せる力に圧巻される。今の神癒奈は、以前の神癒奈とは桁違いの力を見せていた。ただの身体能力だけにとどまらない、特殊能力を使用した戦闘能力が飛躍的に向上している。


「『火針!』『狐火!』『業火!』」


連続詠唱により、破獄は大量の焔の攻撃を受ける。焔の弾丸と火の玉と槍を喰らい、破獄の身体はあちこちが焼けこげる。


「うおああああ!」


自らの力だったはずの焔をまともに受け、破獄はひるむ。だが、彼は気合で能力を発動し、四方八方に焔を撒き始めた。

周辺の物がボロボロに燃えていく中、神癒奈と永戸は二人で並んでたった。


「決めますよ! 永戸さん!」

「あぁ!」


神癒奈が胸元で焔を燃やすと、永戸の折れた聖剣から溢れ出る光が、通常より強く、眩くなる。

神癒奈から送られる魔力や妖力が、永戸にダイレクトに伝わり、聖剣に力を与えているのだ。


「これでしまいだ! くたばれぇええええっ!」

「行けぇええええっ!」


残った最後の力を振り絞り、永戸は折れた聖剣、レイマルクを飛び込みながら全力で振るった。


「……死ぬ…の…か…」


その一撃で、破獄の体は両断され、彼の身体から、大量の殺生石と、神癒奈の心臓が出てくる。

神癒奈はちかづくと、その殺生石と自分の心臓だったものを燃やしてはまだ自分の力として取り込んだ。


「…これで、魔殺楼の悪事は終わりますかね?」

「多分な」


そう言ってると、遠くからエイルがやってきた。


「永戸先輩、神癒奈さん、お疲れ様です。雑魚の方は私の方で片付けておきました。魔殺楼は壊滅したと思われます…」

「…あぁ、お疲れ」

「あーちょっと待ってください」


エイルからアンプルを受け取ると、永戸はそれを打とうとするが、そうする前に神癒奈が手をかざすと、永戸の傷は一瞬で治った。


「うわっ、なんでもできるんだな」

「なんか、私の力は全能の神らしいです。なんでもできるっぽいです」

「なんで分かるんだ?」

「なんとなく…私の中の神格がそうだって言ってるんです」


神癒奈は永戸の傷を治すと、よしっと気合い十分になり、何か考え始めた。

永戸達は帰る準備を始めるが、神癒奈は都を見下ろせる場所へと向かう。


「何をする気だよ?」

「私が、やらなくちゃならないことです」


都が見下ろせる位置につくと、神癒奈は高台から大声で叫んだ。


「都に住む人と妖怪達へ! 私は、焔月の最後の生き残り、神癒奈と申します!」


神癒奈の声が都全てに響き渡り、道行く者達は立ち止まり、ざわめき始める。


「焔月のって、滅んだはずじゃ…」

「悪い妖怪って聞いていたけれど、どう言うことかしら…」

「魔殺楼の者たちはどうしたんだ?」


人々のざわめきを耳にし、神癒奈は目を閉じる。皆、魔殺楼に操られて、いいように扱われて、酷い生活を送ってきただろう。だがそれも今日まで、そう思うと神癒奈は再び叫んだ。


「魔殺楼の破獄は私達が倒しました! もう、彼らに怯えて暮らす必要は無くなりました! これからこの都は、私、焔月の当主、神癒奈が統治していきます! この都で、人も妖も、無益な殺生は許しません! もう二度とこんな悲しいことが起きないように、人と妖が手を取り合って暮らせる場所を、これから作っていきます!」


その言葉で、都の破獄派の妖怪達は驚き、今まで隠れていた焔月派の妖怪達は大声を上げた。都の人たちも、もう貢ぎ物や妖怪達に怯えることはないのかと知ると、歓喜の声を上げた。この時、人々は理解してくれた。焔月は呪われた人を滅ぼす一族ではなく、人々と妖怪達を繋ぎ、安寧をもたらす一族なのだと。


「……神癒奈」

「これは、私が焔月の当主になる時から決まっていた話ですからね、私が統治するのは必然だったんですよ」

「…夢、叶えれてよかったな」

「ええ、この都は、人と妖が共に生きる世界の先駆けとなり、私が私として、やるべき事を踏み出す第一歩となります」


そう言うと神癒奈はにっこりと嬉しそうに微笑んだ。この時、神癒奈は初めて、自分の夢を達成し、英雄としての第一歩を踏み始めた。


ーーー


波婆さんの待つ神社へと神癒奈達は帰ってきたが、人々が神癒奈の姿を一目見ようと、わらわらと神社にやってきた。だが、そんな中でも神癒奈は波婆さんと話す。


「神癒奈ちゃん…やり遂げてくれたんだね」

「はい、私はこれから、この都を大切に作り上げていきます」

「…見違えるようになったねぇ、儂はお前さんの一族に支えてきて良かったよ…」

「うん、私も、波婆さんがいてくれて良かったです」


その言葉を言うと、神癒奈は波婆さんに抱きついた。神癒奈から、温かい心が波婆さんに伝わる。神癒奈は波婆さんを離すと、今度は妖怪の子供に目を向けた。


「もう、苦しい生活はしなくていいんですよ」

「うんっ」

「これからは、人と妖がみんな仲良く暮らせる世界を作っていきますからね、だから、私を応援してください」


神癒奈はにっこりと笑うと、妖怪の子供の頭を撫でた。子供の方も、神癒奈に撫でられるのが嬉しいのか、頬を染める。


「さぁ、色々やりたい事はありますが、そろそろ行かないと」

「これからここについてはどうするんだ?」

「仕事の合間合間でやってきて都を整えますよ、大丈夫です、放置はさせませんから」


えへへと笑うと神癒奈は転移呪文を唱え、イストリアのある世界に帰った。永戸とエイルも二人で頷くと元いた世界へと帰る。

それを見届けた波婆さんは、涙ながらにこう言った。


「神癒奈ちゃん、お前さんは英雄になれたんだねぇ…おいさき短い人生だけれど、お前さんの生き様を、もうちょっと見ていくよ…」


その日、都は圧政から解放され、平和が訪れた。

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