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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第四章 焔月の呪いと秘宝、そして神へ至るキツネ
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神と人と

 永戸と破獄が全身全霊の力を出してぶつかり合う。相手は神癒奈と同じ力を使う半獣の人、その力は本物で、強力な焔が永戸を燃やそうと襲いかかり、同時に彼の刀が振られて来る。


「熱い…!」


 鍔迫り合いになった際に、彼の刀から焔が溢れ出てくる。その焔は、普段神癒奈から出ている命を守る暖かな焔ではない、浴びた者の身体を骨まで焼き尽くす死の焔だ。

 聖剣を覆う鋼鉄製の装甲が、どんどん溶けて行く。このままでは、彼の能力を抑制するためのパイルが使えなくなる。

 不味いと思った永戸は一度下がると、ブレイズエッジを撃った。

 だがその攻撃を、焔の壁で溶かして防ぐと、永戸に向けて焔を放った。


「くそっ!」


 永戸が避けると、焔が通った後には何も残らず、全てが焼け焦げていた。


(神癒奈と真正面からぶつかってるみたいな気分だ!)


 きっと神癒奈ならもっと能力を上手く使うだろう、もっと高い精度の技で攻撃してくるだろう。だが、それのデッドコピーであっても、その攻撃は人を一瞬で殺す程の威力で、脅威であった。


「まだ!」


 今度は至近距離でと永戸は近づき、今度は切り上げる形でブレードを振った。

 刀で受け止められてしまうが、一撃で終わらせない。空中から二度目の攻撃、真上からの斬撃を与えた。


「うぐっ…くくくっ…やるではないか」


 斬撃は確かに通るが、例の如く、彼の傷は殺生石の力で治る。


「だがその武器では殺すには至らん、『火針!』」


 その瞬間、焔の針が飛んできて、当たった箇所に穴を開けていく。


「っ!」


 確実に当たる範囲。それを彼はパイルブレードを盾にして防いだ。だがこの武器で防げるのも限度がある。表面が溶け始め、この武器の機能が使えるかどうかどんどん怪しくなっていく。


「まだ、まだだ!」


 永戸はボロボロのパイルブレードで斬撃を加えていく。今度は能力を使い、筋力を強化し、感覚を加速させ、速度を上げて戦う。

 斬撃は僅かに通っていくが、切っても切ってもすぐに傷は治っていく。だが、狙いはそれではない。


「とった!」


 相手の防御が外側に向いて、内側がガラ空きとなった。その防御の隙間を突いて、永戸はパイルブレードを突き刺し、パイルを射出するトリガーを引いた。だが…。


(不発⁉︎)


 どう言うことか、白銀鉄針が射出されない。どうやら攻撃を受け止めた際に内部で溶けた鉄がくっついてしまい、パイルブレードの機能が使えなくなったらしい。

 そして、この能力も無敵ではなかった。


「がっ…!」


 感覚の加速によるリターンで、視界がパチパチと弾け、身体も悲鳴を上げる。この能力は身体能力を上げ、感覚を加速させるというシンプルなものだが、その機能のレベルを上げていくと、肉体が負荷に耐えられなくなり、自壊してしまうというデメリットがあった。そのデメリットがきた瞬間、大きな隙を見せてしまう。


「ここまでか、死神」


 そう言うと破獄は刀を振り上げ、真っ直ぐに振り下ろす。


「くっおおおおおっ!」


 慌てて避けるが、彼の片足に火がついてしまった。


「あっ……!」


 彼は焔を消すべく、勢いよく破獄に向けて足を振り、蹴り上げた。キックは命中し、火はなんとか消えるが、彼自身にダメージは一切ない。それどころか、余計に大きな隙を晒してしまい、彼に足を掴まれると、足を焼かれながら投げられた。


「ぐはっ⁉︎」


 襖をぶち抜いて、永戸は外に放り出される。片足は焼きごてに焼かれたように手の形のした火傷の跡がつき、彼はうずくまる。


「もろいもろい、人の体とは脆すぎる。あと少し掴まれていたらお前の足は炭に変わっていただろう」


 はははと笑いながら破獄は庭に出る。永戸は片足の感覚がないまま立ち上がると、再び感覚を加速させ、一気に詰め寄って破獄に攻撃を加えた。


「同じ手は二度も通じん、甘いわ」


 パイルブレードを突き刺そうとするが、そのブレードを横から裏拳ではじかれ、同時にバラバラに砕かれてしまう。これで切り札の白銀鉄針は使えなくなった…否!


「喰らえぇえええっ!」


 腰のケースから白銀鉄針を引き抜くと、永戸はそれを破獄の脇腹に突き刺した。

 白銀の効力が発動し、破獄の身体は元の人間の力へと戻される。


「ぐおおおおおっ! 貴様! 二連攻撃だと⁉︎」

「これで条件は五分と五分だ、いや、殺生石のデメリットで、お前の身体は崩壊する!」


 永戸は勝ちを確信した。白銀製の武器を喰らえば、能力者は元の力しか持たない身体に戻る。実際に破獄の体は、獣の部分から溶けていた。しかし、破獄は執念を見せるように立ち上がってみせる。


「まだ、終わりではない…!」


 そう言うと破獄は白銀鉄針を抜き取り、ある物を取り出した。


「これをみよ! これがなんだか分かるか!」


 それは、青白い結晶で覆われた心臓で、身体もなく心臓単体であるにもかかわらず、静かに脈動していた。


「これは、焔月の最後の子の心臓だ! この青白い光は殺生石の呪いから解き放たれた真の不死の光、つまりは無限の力を宿す炉心だ!」

「神癒奈の…心臓?」


 神癒奈の心臓がここにある事を知ると、永戸に絶望が走った。あの神癒奈が、死んだと言うことになるのだ。


「神癒奈…嘘だろう……今度こそ、死んだのか…⁉︎」

「あぁ! 流石に炉心となる心臓を失えば、生きてはおれまい。そしてこの心臓を得れば、我は完全なる不死になれる!」


 勝ち誇るように破獄はそれを見せつけた後、それを一口で丸呑みにした。次の瞬間、彼の身体がドクンと脈動し変化が始まる。


「あぁ、力がみなぎる、これが、本物の不死の力か!」


 その場の温度がどんどん急上昇し、辺りは熱く燃え尽きていく。そして、破獄の身体は完全たる身体に進化して……。


「な、なんだ⁉︎ なんだ…この姿は⁉︎」


 彼の身体は完全な身体に進化するどころか、よりおぞましく、よりグロテスクに変化していった。獣の足が生えて四本になったかと思えば、体は一部が巨大化し、顔の獣の部分が醜く大きくなる。そして、尻尾は九本にこそなったが、生えてきた五本は骨だけで出来上がっていた。


「こんな醜い姿を望んだわけではない! 何故だ! 何故完全な姿にならない!」


 醜く獣に成り下がってしまった破獄の姿を見て、永戸はある事を思い出した…それは、神癒奈と最初に出会った時に戦ったカインが能力が暴走して変貌した姿だった。

 それをユリウス課長はこう言っていた。

 "なり損ない"と。


「なり損ない…人としての姿に、なり損ねた存在…!」


 永戸は立ち上がると、よろめく身体で武器を構える…。

 神癒奈は死んだ、だけど悲しむ暇はない、悲しむのは、目の前の敵を倒してからだ。もう一度白銀鉄針を奴に突き刺すか、それとも聖剣でこのまま断ち切るか。色々と考えを巡らせる中、その時、屋敷の外から、眩い光がこちらに向かってきた。


「……今度はなんなんだ⁉︎」


 永戸はあまりの眩しさに顔を手で覆うが、少しずつずらしてそれを見た。それは、黄金に揺らめく髪と九本の尻尾を持ち、同時に、尽きる事のない生命の焔をその身に宿していた。その姿を見て、永戸は驚いた。


「神癒奈…! お前…なんだよな⁉︎」


 永戸の声に反応し、光放つ存在はこちらに振り返る、そして、その光を解くと、彼女は、優しい笑顔でこう言ってきた。


「はい! 焔月神癒奈です! お待たせしました!」


 以前と遜色ない、けれど少し風格が変わった神癒奈が、そこに立っていた。


「神癒奈! 無事、神になったんだな!」

「はい! まぁちょっと、色々と込み入る話はありましたが」


 心配かけてごめんなさいと神癒奈は軽くぺこりとお辞儀をする。永戸はそれを見てホッとすると、彼女の隣に立った。


「ボロボロじゃないですか、その姿で本当に戦えるんですか?」

「バカ言え、お前こそ、神様になったばっかで力を制御できないんじゃないのか?」


 新品同様にピカピカなキツネと、傷だらけでボロボロなヒトが並び立つ。目の前には、神にも、人にもなれなかったなり損ないが立っていた。


「あの怪物を、破獄を倒すぞ!」

「はい! ここで、諸悪の根源を断ちます!」


 二人で息を合わせると、永戸と神癒奈は一斉に攻撃を始めた。

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