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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第四章 焔月の呪いと秘宝、そして神へ至るキツネ
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地獄兄弟

 地獄兄弟と名乗る魔殺楼からの刺客に永戸と神癒奈は対峙する。


「けひゃひゃひゃひゃ!」

「っ!」


 弟の柄田が小さな体躯を活かした小刀による斬撃で永戸を追い込んでいく。だが永戸とそう簡単にやられる者ではなく、小刀を仕込んでいたガントレットで受け止めると、パイルブレードで切り返していく。


「そこっ!」

「おっとぉ! 面白い武器だが、そんなバカでかい杭、いつ飛んでくるか分かるってぇの!」


 隙を見てはパイルで貫こうとするも、身軽な体ですぐにかわされてしまう。この場では不利かと永戸は神癒奈の戦う方に行こうとするが、巨大な手裏剣が再び飛んできた。


「兄者の方へはいかすかよ! もっと俺と遊んでくれや、兄ちゃん!」

「ちっ…!」


 相手が小さいせいでパイルブレードもブレイズエッジも当たらない。聖剣をこの場で解放するのは危険だ、せめて神癒奈と交代できれば、互いに戦いやすい相手と戦えるのにと永戸は思う。だが相手はそれを見越してなのか、こちらの不利な相手と戦わせようとしていた。

 一方、神癒奈の方は、兄の柄名の巨大な一撃に晒されていた。


「避けるだけでは勝てないぞ、小娘よ」

(こんなの、当たったらタダじゃすみませんよ⁉︎)


 巨大な身体を持つ相手なだけあってスピードがないかと思ったらそうでもなく、神癒奈の軽快な動きについていく力強さがあった。その手に持つ棍棒も、鉄でできてるだけあって、当たれば骨までバラバラにされてしまうだろう。


「だったら!」


 神癒奈は刀の構えを変え、相手の動きをいなす動きへと変える。


(焔月式抜刀術、参式!)


「ほう…俺の力を見て、その力を逃がすように刀の振るい方を変えたか、中々の剣客と見た。だが、妙だな、その動き、俺は知っているぞ。どこで見たか…」


 柄名は神癒奈の動きを見て、どこで見た動きだったかと思い返す。だが、そんなことを考えられないように、神癒奈は再び動きを変えた。


(壱式!)


 動きが鈍った所で、カウンター特化の参式から一撃必殺の壱式へと変え、柄名の腕を切り落とした。


「ぬぉっ…くくく…なかなかやるな」


 だが、柄名は不敵に笑うと、切った筈の腕が切ったそばから生えてきた。


(やっぱり…彼らは、殺生石の力を得ている!)


「この程度で倒せるほど、俺は甘くないぞ、小娘」


 再び柄名が力強い一撃を暴風のように与えてきた。

 地獄兄弟と呼ばれるだけあって、この二人の戦いの実力は相当なものだった。永戸と神癒奈は徐々に押される。


「食らえ! 地獄車手裏剣!」

「っ!」


 柄田が投げた巨大手裏剣が、永戸の体を肩から反対の腰に向けて切り裂いた。回避が遅れ、ダメージを負ってしまった永戸はガクッと倒れかけてしまう。


「けけけ…兄ちゃんよぉ、この程度で終わりだと思っていねぇよなぁ⁉︎ もっと遊ぼうぜ!」

「ぺっ…誰がお前みたいなクソ餓鬼と、一生風車でも回してろ!」


 血を吐きながら、へっと吐き捨てるように笑い、永戸は構える。ダメージは大きいが、だがまだ立っている。まだ戦えると永戸は思った。


「永戸さん! っ!」

「仲間の事を思っている場合か?」

「かはっ…!」


 永戸の方を見て心配した神癒奈だったが、その心配が命取りになった、柄名の棍棒が胴体に突き刺され、その身を貫通する。


「…逝ったか、小娘にしてはよくやった方だ、後で破獄様の供物として差し出すか…」

「けひゃ! あの娘が死んだか!」


 棍棒を振っては神癒奈の体を振り払うと、彼女は木に叩きつけられ、お腹に風穴を開けたままぐったりと倒れる。


「神癒奈ぁあっ!」


 思わず永戸が声を上げた時だった、地獄兄弟の表情が変わる。


「神癒奈…? 今、神癒奈と言ったか?」

「…は? ありえねぇ! アレが、焔月の? あいつは死んだ筈だ!」


 しまったと永戸は思った。神癒奈、焔月の者が生きていたなんて知られたら、彼らは関係者を再び探し出して殺そうとするだろう。そしてその殺意は、永戸の方に向いていた。


「神癒奈…そう言ったな? どう言うことか、その口から聞かせてもらうぞ、死ぬ寸前までいたぶってからな…!」

「指先から次々と切り落としてやる! てめぇのその口から言う言葉が、ハッタリかどうか分かるまでなぁ!」


 柄名と柄田の攻撃が同時に飛んでくる前からは棍棒が、背後からは巨大手裏剣が、受け止められるのはどちらか片方だけ、両方を受けようとしたら体が持たない。永戸がそう考えた時、一か八かの賭けに出た。


「うおらぁあああっ!」


 空中で縦に回転し、巨大手裏剣の一撃をまず避けた。だが今度は棍棒が迫る。その一撃をパイルブレードで受け止める。当然外装が壊れて聖剣が露出してしまうが、彼はなんとか攻撃に耐えることができた。

 勢いよく吹き飛ばされてしまうが、すぐに体勢を立て直し、神癒奈のもとへと向かう。


「神癒奈! おい! 起きろよ! ……そんな簡単に死ぬような奴じゃないだろ! お前は!」


 倒れた神癒奈に声をかけるが、神癒奈は目を覚まさない。手を当ててみれば、溢れ出る血と、冷たくなる体で、死んだと言う現実を叩きつけられた。


「嘘だろ…お前、英雄になるんだろ! こんな所で死ぬんじゃねぇよ! くそっ!」


 神癒奈に声をかけてるうちに柄名が近づいてくる。永戸はガードしようとするが、折れた聖剣など棍棒の前では歯が立たず、彼を掴むと柄名は言った。


「死んだ者の話をしていて何になると言うのだ。これだから人間はか弱いんだ」

「へへへっ、そのまま握り潰してしまえ! 兄者!」

「ぐぅっ! 死んで…たまるかよぉっ…!」


 柄名は彼の右腕を握ると、彼の腕を握り潰してしまった


「あぁああああっ⁉︎」

「けひゃひゃひゃひゃ!! 破獄様に逆らう愚か者の末路だ!」


 人形が壊れるかのように永戸の四肢が潰されていき、それを見るたびに柄田が笑う。そして、四肢が潰れた時、柄名は彼の頭を握った。


「吐け、この小娘は何者だ?」

「……言えるかよ」

「……ふむ、見上げた根性だ、だがそれもここまで、お前を、殺させてもらう」


 そう柄名が言った時だった。突然、何かに切られたのか、彼の両腕がポロリととれた。


「何…⁉︎」

「何が起きたんだ⁉︎」


 地獄兄弟は一度身を引いて状況を確かめる。永戸は四肢が潰れた状態で、地面に転げ落ちた。永戸は最後の力を振り絞って顔を上げる。その時、彼が見たのは…。


「…退け、人の身を捨てた者よ」


 九尾の姿をさらけ出した神癒奈の姿だった。だがいつもと雰囲気が違う。いつものような大和撫子でどこか優しい雰囲気と違い、厳格な雰囲気を出している。よくみれば、空いていたお腹の傷が、塞がっていた。

 彼女は、永戸の方に手を向けると、彼の傷をすぐに癒した。潰れた四肢はすぐに治り、同時に彼は、その優しい光に、意識を手放してしまう。


「バカな……本当に、生きていたのか⁉︎」

「嘘だ、ありえねぇ! 焔月は、あの時俺たちが滅ぼしたんだ! なぜ、なぜその当主が、ここで生きているんだ⁉︎」


 地獄兄弟が、神癒奈の姿を見て恐れ慄く。彼女から出ている気は尋常なものではない。その力は、いつもの神癒奈から遠く離れていた。


「控えなさい!」

「っ⁉︎」

「なっ⁉︎」


 神癒奈のその一言で、その場に強い力場が発生し、二人は地面に跪いてしまう。同時に二人は気づいた、先程つけられた傷が、両腕が再生されてないと。


「石に魅入られて人の姿を失った者達につげる、その場から立ち去りなさい、立ち去らないと言うのなら…切り捨てます」

「引くわけにはいかぬ…! 我ら地獄兄弟は、破獄様の腕、やられるわけには…!」

「てめぇが焔月の継承者だなんて、嘘だぁああああ!」


 力場に抗い、立ち上がった二人が神癒奈に立ち向かう柄名が足を蹴落とし、柄田が巨大手裏剣を投げてきた。だが…。


「っ…」


 神癒奈が刀を抜くと、柄名の体は一瞬でバラバラになり、柄田の持ってた巨大手裏剣は砕け散ってしまう。


「あ…兄者ぁああああ!」


 目の前で起きた衝撃的な光景に、柄田は恐怖した。殺生石の力があったにも関わらず、あっという間に兄はバラバラにされてしまった。

 彼の中から、ゴロリと赤黒い石が出てくる、柄田はそれを拾うと、大事そうに抱えた。


「焔月神癒奈! 次こそは、必ず、おまえを殺してやる!! 地獄兄弟の名においてな!」


 そう言うと、柄田は去っていった。


「私、どうしたんでしたっけ………っ! ここは⁉︎ 永戸さん!」


 神癒奈はぼーっとしたような表情になると、はっといつもの表情に変わる。さっきまでお腹に穴が空いていた彼女が、永戸が倒れているのを見て驚いた。


「うわー⁉︎ 血がいっぱい出てます! 誰か! 誰かお医者様を! あ! アンプル! アンプルがありました!」


 神癒奈は慌てて鞄から回復用のアンプルを出して永戸に打ち込む。死んではいないようだからと神癒奈は安心したが、どうしてこんなことになったかはわからなかった。


「神癒奈ちゃん! 大丈夫かい⁉︎」

「波婆さん! えぇ…なんとか!」


 永戸を抱えて神癒奈は波婆さんに連れられ、神社の奥の家の中に入る。何が何だかよくわからない状況だと神癒奈は思っていたが、今はとりあえず、戦いの傷を癒すことを集中した。


 ーーー


 ある場所にて、柄田は何者かと会話する。


「何? ーーー焔月の最後の当主が生きていただと?」

「へい! あいつは確かに生きてました! 俺はこの目でしかと見てきました! あの狐の力で、兄者が殺されるところを…」


 柄田は兄の形見でもある石をギュッと握りしめた。それを見た何者かは機嫌を損ねたのか、柄田を怒鳴った。


「もういい! 任務に失敗した貴様など我の腹を満たす血肉に…と、言いたいところだが、焔月の継承者が生きていたと聞いたとなら話は別だ」

「申し訳ございません! 破獄様!」


 柄田が土下座で謝るが、破獄と名乗る者はこう言った。


「もう一度だけ機会をくれてやろう、その機会で、焔月の狐を捕らえてくるのだ、お前と、兄の力で」

「へい! わかりました! でも兄の力って、どうやって…」

「それは…こうするのだ」


 すると破獄は立ち上がり、柄田から石を奪い取ると、それを彼の口に押し込んだ。

 柄田は苦しみながら石を飲み込むが、飲み込んだ途端、彼の体に異変が生じた。


「がぁあああああ⁉︎」


 柄田の体が小さなものから兄と同じように大きく、そしてよりおぞましく変わっていく。それを見ていた破獄は笑っていた。


「くくく…焔月の狐…それも最後の当主か。その女の肉を喰らえば、我は本物の不老不死になれる。楽しみに待っているぞ…神癒奈よ」


 そう言うと、破獄は柄田を引かせ、高笑いした

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