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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第四章 焔月の呪いと秘宝、そして神へ至るキツネ
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狐が見る夢

「貴方は神様に愛された子供よ」


まただ、またこの夢だ。一匹の狐は眠り、夢の中でそう思う。大体いつもこの夢を見る時は、この言葉が聞こえてきた。


「どうして私は神様に愛されてるんですか?」


こうしていつも同じ質問をする。帰ってくる言葉は分かるのに。夢見心地なせいか、どうしても同じ質問をしてしまう。


「それはね……」


狐の母がにっこりと笑顔になって何かを言いかけた時…狐は目が覚めた。

目を開けると、窓からは光がさしていて、小鳥達の囀りが聞こえた。隣では、ルームシェアをしている天使が寝ている。


「……お母さんは、いつも何を伝えようとしてたんだろう」


目をこすりながら起き上がって狐は思う。あの先の言葉も聞いているはずなのに、てんで思い出せない。

だが、この夢を見ている時は、不思議と、少し暖かさがあった。


ーーー


「君達、仕事の時間だ」


職場に来てみれば、久々の仕事が来ていた。そこに来ていたメンバーは気の引き締まった顔になる。


「今回の任務は、異世界犯罪組織"魔殺楼まさつろう"の撃滅だ、彼らはここ最近、不死の力を求めてあらゆる異世界で悪事を働いている、君達には、それの阻止に動いてもらいたい」


久々の仕事…随分大きな案件が来たなと彼らは思う。不死の力とはまた妙な話だが、一体なぜそれを求めたのだろうか? その事を、永戸は質問した。


「不死の力…何故彼らはそれを求めたのですかね?」

「分からない、だからこそ、今のうちに芽を摘んでおくべきだと私は思った。長期任務となる、今回は永戸君と神癒奈君の二人に行ってもらおう」

「分かりました」

「分かりました!」


ユリウスからの指示を受け、永戸と神癒奈は仕事の準備に入る。


「そういえば神癒奈ちゃんは長期任務初めてだよね、だとしたら、偽装用の装備を持っていかないと」

「偽装用の装備?」

「うん、それがあると、色んな異世界で現地の人から不思議に思われなくなるの」


あーなるほどと神癒奈は思う。コリーから説明され、神癒奈は適当な装備を見繕ってもらうと、偽装装備を着た。

見た目はいつもと変わらないが、世界に応じて自由自在に服装を変えれるらしい。


「何も変わってませんね?」

「偽装装備は現地で起動することになるからね、尻尾は目立つから一本とかにはできないかな?」

「できますね、あとでしておきます」


そうして二人は出発の準備が整った。荷物を纏めた永戸と神癒奈はユリウスから指示を受ける。


「いいかな、まずは情報収集だ。撃滅とはいったが相手が何を狙っているのかを探ることが大切だ、そして、もし仮にそれが狙われたら守る事を優先するように、わかったかね?」

「はい!」

「では、行ってきます」


ユリウスの指示を聞いた二人は、イストリアの建物から外へ出て、別の異世界に転移していった。


ーーー


目的地となる異世界に着くと、まずは、偽装装備を起動させた。


「へぇ、この世界は和風か」

「あれ、格好が変わらないです」


永戸の方は旅の流浪人をイメージさせる格好になり、神癒奈の方は、いつもの巫女服コートにちょっと羽織るものを追加した程度だった。


「世界の服装のイメージが同じだと、いつもの服装で通じる時があるんだよ」

「うーん、なんだかいいような、がっかりしたような」


困ったように神癒奈は笑う。活動の準備も終えたところで、さて、と永戸は言う。


「情報そのものはある、まずは現地に赴こう」

「ですね」


そう言うと二人は歩き出した。少し長い旅路にはなるだろうし、苦労する戦いになるだろうなぁと神癒奈は思う。なにせ久々の仕事だ、どんなものが待っているかも分からない。

と、思った時だった。


「そういえば、こうやって貴方と一緒に旅するのも久々ですね」

「出会った時したくらいだもんな、こういう旅は」


思えば、この二人だけで任務につくのも久々だ、出会った時の印象は互いにかけ離れていたが、今ではそんな二人は、相棒とも言える仲になっていた。

二人はそんな事を話しながら道を歩く。すると、前から人がやってきた。


「こんにちは」


道行く人に気軽に神癒奈は笑顔で声をかける。だがその時、妙な返しが来た。


「ひっ⁉︎ 焔月の…妖狐! い……いいい生きていたなんて!」

「…えっ?」


焔月のと言われ、神癒奈はぴたりととまる。目の前の男は焔月の妖狐と言い、怯えて逃げていった。


「…なんで、私の出自を知って…」

「今の感じだと異世界を渡航してる奴ではないな、お前の経歴についてはイストリアのデータベースでも厳重に管理されている」

「なら何故、今の人は私のことを知って……っ!」


頭に浮かび上がった疑問に神癒奈が思い悩んでいると、近くに看板があった。描かれていた文字は見た目が日本語に近い独自言語だったが、それを見た途端、神癒奈は目を丸くした。


「……まさか…!」

「あぁおいっ!」


険しい道のりだと言うのに神癒奈は走り出した。突然走り出した姿を見て永戸もそれを追いかける。今、神癒奈の頭の中ではある疑問の答えが浮かびあがろうとしていた。そして、その答えは、山道を登ってみやこが見えたときに確信へと変わる。


「一体どうして急に走り出したんだ、何があって……」

「知ってます…この景色」

「はぁ? お前は異世界というものを知ってまだ少ししか経って……いや待て、まさか」


永戸も神癒奈と同じ考えに辿り着いた。神癒奈の事を知っている者がいて、神癒奈自身も知っている景色がある、それはつまり…。


「ここは、私が元々暮らしていた世界です」


その言葉と共に、神癒奈は帰ってきたんだと思いを馳せた。


ーーー


「さて、そろそろ永戸君達はこの依頼の場所がどこなのか知った頃合いかな?」


ユリウスが紅茶を飲みながら資料を眺める。


「っ? 依頼の場所って、何か特別な意味でもある感じです?」

「いやいや、なんでもないよ、いつも通り、愉快でブラックなお仕事さ」


コリーから指摘されるも、ユリウスははははと笑って誤魔化す。だが、逸らした彼の目は、笑っていなかった。


(神癒奈君、君について、一度試させてもらおうじゃないか、禁忌になるか、英雄になるかどうかを)


そう思うと、ユリウスは、今回の依頼について紙に目を通した。

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