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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第三章 大柄な蜘蛛と調和を乱す者達
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巨人に挑む勇者達

巨大魔導兵器との戦闘が開始し、永戸と神癒奈、ユリウスがそれぞれ走り出し、多少のダメージを負った戦車に攻撃を加える。


「ぶち抜け!」


永戸は初っ端からパイルを突き刺し、射出する。打ち出されたパイルは、装甲の剥がれた箇所から内部に突き刺さっていく。


「よし、事前の攻撃でこっち攻撃が通りやすくなってる」


事前の戦闘で、フィアネリスとエイルの頑張りにより、装甲や一部のパーツが壊れ、戦車への攻撃が通りやすくなっている。そこを狙って永戸たちは攻撃を加えていく。


「だが、我々はただの人だ、やっている事はドンキホーテが風車に挑むのと同じ事だよ。


そう言うユリウスは、的確にレイピアを弱点に突き刺し、手に持った剣で斬る。レイピアは刃が着脱式の特殊鋼でできたごく普通のものだが、剣に関しては違った。煌びやかな装飾ながら、シンプルな見た目で扱いやすい物、しかし、その剣には光が宿っていた。そう、彼の持つその剣は、聖剣であった。


「光と共にあれ、聖剣アリアンヌ」


永戸のレイマルクは刀身が欠けたごく普通の直剣だが、ユリウスのは刀身が細めの細剣、それを振りかざすと、聖剣に光が纏われ、彼がその剣を突けば、剣から鋭い光波が出た。完全な聖剣の光波は、魔導戦車の装甲を撃ち抜き、機体に穴を開ける。


『ふん、たかが剣や刀で、この巨人を倒せるものか!」


だが巨人の戦闘能力は未だ健在だ、全身の火器から攻撃を3人に向けて放つ。3人はそれぞれバラバラに動いて回避するが、弾幕が厚い、これをすり抜けるのは無理があるのか、神癒奈以外の二人は徐々に攻撃がかすめ、体にダメージが入っていく。


『ははは! 所詮は人だ! このまま蜂の巣にされるがいいわ!』

「っ!」


体にダメージこそはいるが、永戸とユリウスは冷静でいた。それもそのはず、あくまで攻撃はかすめているだけ、致命的な一撃は入れられていない。攻撃が上手く通らない事に、戦車の中のグレゴリーは焦りを見せ始めた。


『いい加減落ちろ! 害獣どもが!』


するとグレゴリーは肩のレーザーキャノンを二門とも永戸の方に向けた。一人でも早くと倒すつもりで集中砲火を喰らわせる気らしい、火砲が全て永戸の方に向いた。


「不味い…! そうはさせるか!」

「…くそっ!」

「永戸さんっ!」


攻撃が来なくなった隙を見て、ユリウスは永戸に向けられたレーザー砲の一門を剣で貫いて破壊する。だがもう片方が残っていた。全身の火砲と共にレーザー砲が放たれ、永戸は死を覚悟した。その時だった。


「……何?」

「よかった、無事ですね?」


全ての火砲の攻撃を、神癒奈が前に立って受け止めていたのだ。新手のバリアか? と永戸は思ったが、今はそんなことを考えている暇はない。


「うおおおおお!」


永戸は腰のホルスターからブレイズエッジを抜くと、強装弾が装填された弾丸をレーザー砲に向けて放った。正面から放たれた弾丸はレーザーを割きながら飛んでいき、砲塔内に命中すると、レーザー砲は爆発する。


『ば、ばかな⁉︎』

「君は四課のことを甘く見ていたようだがね、悪いが、"大戦帰り"の私と永戸君はただのエージェントではないよ」


大戦帰り…含みのある言い方をして、ユリウスは次々と戦車に一撃を叩き込んでいく。同時に永戸も、神癒奈の防御から抜け、連携で攻撃を入れていった。


『害獣どもめ! こうなったら何がなんでも亜人特別区を焼き払ってやる!』


今度は腕からレーザー砲が出現し、永戸とユリウスの前を焼き払うと、街から移動しようとする。だがその時、神癒奈がビルの壁を駆け回って、戦車の真後ろに立った。


「行かせない! エイルさんの、居場所には!」


真後ろからならば攻撃はそう来ない、自動迎撃の機銃はあるが、神癒奈はそれを刀で弾きながら接近すると、魔導戦車の残った三本の足のうちの一本を、刀でズタズタに切り裂いて、最後の一撃で斬り落とした。


『ぐわぁっ⁉︎ …くそう! 害獣がぁああああ!」


足が壊れ、移動手段をなくし、魔導戦車は全身の火器から暴れるように火砲を撃つ事しかできなくなる。グレゴリーも相当頭に血が登っているのか、もはやこちらを狙わずにあちこちに攻撃をばら撒いていた。


「民間人に被害が出る! さっさと倒すぞ!」

「はい!」


永戸腰のケースからパイルを装填しては、戦車の片腕の接合部に次々と打ち込んでいく。今回は白銀鉄針ではないものの、特殊鋼でできたパイルだ、ゼロ距離で撃たれれば装甲のない箇所はひとたまりもないダメージを受ける。

だが、弾数には限界があった、数本しかなかったストックを使い切った。


『見誤ったな!』


隙を見たのか、空中を舞う永戸に向けて、戦車の片腕からビーム砲が放たれる。


「どっちが…見誤ったんだ?」


だが、先ほどのパイルの攻撃で関節の可動がおかしくなり、レーザー砲は永戸の剣の外装を破壊するだけにとどまった。

つまりは…。


「こっちの方が通りそうだな、光を宿せ! レイマルク!」

『そんな折れた剣で何ができると言うのだ!』

「お前を倒せる!」


折れた聖剣に光が宿り、永戸は横薙ぎで光波を放った。それは、パイルの刺さった腕の部分に命中し、片腕を斬り落とした。


『なんだと⁉︎』

「神癒奈ぁあああっ!」

「はいっ!」


地面に着地した永戸、着地の反動から勢いをつけてもう一度飛び上がった彼、その彼の背中を足場にし、神癒奈は更に上へ飛び上がった。

永戸は、折れた聖剣から光を溢れさせて刀身を長くさせ、神癒奈は、巨大な魔導戦車を見下ろす形で刀を抜くと、その刀身に焔をまとわせ、長大な剣にした。


「これで決めるぞ!」

「はい! 焔月式抜刀術、壱式!」

「「せぇやぁあああああっ!」」


二人の息を合わせ、永戸と神癒奈は空中で加速すると、十字を描くように二人は魔導戦車を斬った。

その一撃で、魔導戦車は破壊され、都市のど真ん中で動きを止める。


「ひ…ひぃいいいっ! 私の魔導戦車が、こんな害獣どもに、壊されるなど⁉︎」


コックピットからぽーんとグレゴリーが出てくると、遅い足で必死に逃げようとした。だが、そんな彼の前に、刀が突き刺さる。


「どこへ行こうと言うのですか?」


飛び降りてきた神癒奈が、刀を地面から抜くと、腰をまた抜かして倒れたグレゴリーの首元に突きつける。


「許してくれ! お前達にしてきた行いを、帳消しにしてやる! 金だって大量にやる! だから頼む! 命だけは!」

「何を言ってるんですか? ここまで大勢の人たちに迷惑をかけて、まさか金程度で安く済むと思っているんですか?」


ここまでの戦闘で、多くの人達が怪我などを負った。神癒奈は獣特有の鋭い目つきになると、グレゴリーに向けて刀を振り上げる。


「ひぃいいいいっ!」


グレゴリーに向けて刀が振り下ろされるが、その切先は、鼻先少しくらいで止まった。


「……なんてね」


こんな男、殺す相手にも値しない、そう思った神癒奈は、斬るフリだけをした。実際に相当恐ろしかったのか、グレゴリーは泡を吹いて気絶した。


「…終わったかね?」

「はい、終わりました、課長」


倒れた魔導戦車を見ながら、ユリウスが神癒奈の肩にポンと手を置く。グレゴリーを殺さなかった事にホッとしているのか、少し柔らかい表情をしていた。


「てっきり彼を殺すかと思っていたが、君はちゃんと、理性を持ってわきまえてるのだね」

「私だって斬りたくないものくらいありますよ」


お互いにはははと笑うと、神癒奈達は装甲車の方にいる皆のところに向かった。

そこでは、エイルが神癒奈を待っていた。


「神癒奈、さん…やりましたね、えへへ…」

「…はい、これであなたの町も、この都市の亜人達も、安全ですね」


そう言うと、二人は先ほどと同じように、ハイタッチを交わした。

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