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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第三章 大柄な蜘蛛と調和を乱す者達
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亜人特別区

 ミズガルズの郊外に辿り着き、エイルは神癒奈を下ろして一緒に歩く。周りの景色は綺麗なビル街から寂れた住宅街に様変わりしていた。

 そこに暮らす人達も、人間とさまざまな種族が行き交う景色から、人間以外の種族だけとなっていた


「ここは?」

「亜人特別区…さっき、話にしてた所です…ここが、私の暮らす街です」


 エイルが道の真ん中を堂々と歩くが、道行く人は、エイルを見かけると手を振ったり挨拶をしたりしていた。


「何で、こんなところが存在してるんでしょうか?」

「まず、ミズガルズにおいて、亜人差別や人権問題は昔からあったんです。あのデモ隊を抜きにしても、で、この街はそんな差別によって排他された者達が集まるスラム街みたいなものです。この都市が作り上げた、人権なき者が集まる場所なんですよ」

「そんな所が…」


 話を聞いて、神癒奈は衝撃を受ける。ミズガルズは色んな人が平等に暮らす街だと思っていた、なのにこんな場所が存在するのかと。


「勿論、都市の方に住む亜人も中にはいます、ですがそれは一部の層だけで、貧民や力無き亜人はこう言った特別区や裏路地に押し込まれるんですよ」

「それは…なんだか悲しいです」


 ミズガルズが、自分が望む理想の都市とは遠い場所だと知り、神癒奈は落ち込む。


「…でも、悪いことばかりではありません、この街の人達は力を合わせて暮らしてますし、貴方のように、志の高い亜人もいます。壁を隔てるのは、いつだって古い思想に囚われた人達ですから」


 そうこう言っているうちに、ある建物に神癒奈達はたどり着いた。見た所、小さなアパートらしい。


「ここが私の家です…広くはありませんが、ゆっくりしていってください」


 そう言って鍵を開けると、エイルは中に入っていく。神癒奈も中に入るが、そこは、本当に小さな部屋が二つあったアパートだった。


「ふぅ…」


 エイルが仕事用の制服を脱ぐと、浴室の方へ行く。

 あんな大きな体でこんなところに暮らしているんだと神癒奈は思うが、なにしていいか分からず、正座でちょこんと座って待っていた。

 暫くすると、エイルが部屋着で戻ってきた。


「…お茶でも飲みますか?」

「いただきます」


 冷蔵庫の方からお茶を出すと、エイルがコップを二つ持ってきた。そしてお茶を入れると、片方のコップを神癒奈に渡す。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 お茶を受け取って飲む。張り詰めた空気が一気に抜け、神癒奈は落ち着いた。エイルはEフォンをだすと、テレビアプリを起動して情報を集める。


 《イストリア、違法な活動を容認か?》


「やっぱり……私達のこと、ニュースにされてますね」


 テレビには全身のモザイク付きであるが神癒奈や永戸達がデモ隊にしてきた活動が大々的に取り上げられていた。


「でも私達であることは伏せられてますね?」

「恐らく、そこまで統制が効かなかったんだと思います。四課も四課で独自の情報統制を行える部隊です、簡単に全ての情報を明かすと、不味いと思ったのでしょう、今はまだ、安心できそうですね」


 メディアが全面公開しないうちはまだ安心できるとエイルは言う。だが状況は緊迫している。四課の安全が保証されない状態まで時間の問題だ。


「それで、これからどうしましょう?」

「先輩達を助けに行きましょう、Eフォンの最後の信号からして、場所は都市中央の特殊警察署の牢獄にいると思います」


 マップ情報を共有し、エイルは神癒奈と一緒に警察署の全体像を見る。警察署内はかなり厳重な警備となっていた。


「どうしてこんなに厳重なんでしょうか?」

「ここは特殊能力者などの危険人物を収容する警察署となってますからね、通常の警察より装備や警備は厳しくなってます」


 マップをしまい、エイルは壁の方を見る。壁には神癒奈の刀と、エイルが持ち出してきたバトルアックスが立てかけてあった。


「頼りになる武器はこれだけですか、あとは個々の特殊能力のみ…少し心許ないですね」

「あの、四課の武器庫からなんとか武器を持ち出すことはできないでしょうか? 仮に警備がいたとしても、オフィスにいる敵さえ制圧できれば、奪い取ることはできますし」

「……その手段、アリかもしれませんね。先輩達を救出する際に武器は必要ですし、先にそちらの方に向かいましょう」


 そう言うとエイルはマップのイストリアのところにピンをうつ。イストリアの入り口や四課のオフィスは封鎖されてるかもしれないが、昼間とは逆の要領で、窓から侵入して武器庫に入る事ができる。仮に警備がいても四課の部屋はそれほど広くない、いたとしても数人程度だろう。


「そこから、特殊警察署まで幹線道路を駆け抜けることになります。ここは…武器庫で調達した装甲戦闘装備を着て私が疾走しますので、神癒奈さんは…私の上に乗って移動してください」

「分かりました」


 イストリアのビルから警察署まで結構距離があった。恐らく、幹線道路での戦闘は避けられないだろう。神癒奈は遠距離武器を持ってない為役に立ちづらいが、エイルなら話は別だ。彼女の装甲戦闘装備なら走りながら銃火器による戦闘ができる筈だ。


「警察署ではどうしましょう?」

「そこが問題なのですよね…牢獄の鍵を探さなくてはいけませんし、善良な警察と戦闘になりますから、恐らくは牢獄の近くにあると見たいですけど、取り敢えず簡易的な尋問で吐かせるなりなんなりして鍵を手に入れましょう」

「あの尋問をやるんですか…」


 神癒奈がドン引く様を見て、エイルははてなマークを浮かべる。ひとまず、考えられることは全部考えた。


「懸念はありますが、一通り作戦は建てられましたね」

「はい…二人だけの作戦になりますけど、神癒奈さんは大丈夫ですか?」

「はい! 大丈夫です! 任せてください!」


 そう言うと神癒奈はにっこり笑った。それを見てエイルは安心したように息を吐くと、覚悟を決める。


「では、四課救出作戦、発令です。決行は夜にしましょう」

「はい!」


 そうして二人は準備を整え、夜になるのを待った…。


 ーーー


 人も寝静まった夜、二人は準備を完了して、ビル街の上に立つ。


「怖くは…ありませんか? 二人だけの任務になりますけど…私は、ちょっと怖いです」

「実を言うと私も怖いんですよね、永戸さん達がいないと、どうにも安心ができません」


 エイルは少し怖いのか、自分の服の袖をキュッと掴んだ。神癒奈も怖いのか、緊張した様子で立つ。


「四課のオフィスはすぐそこです、行きますよ」

「はい」


 神癒奈はエイルの背中に乗る、この背中に乗るのは何度目だろうと思いつつも、身体をしっかり固定させてエイルに身を預けた。

 そして、エイルはビルから飛び降り、糸を使って四課のオフィスまで全速力で飛ぶ。


「見た所街中での警戒はありますね、ですが、私達は空を移動してるので今の所見られる事はありません、このまま四課の部屋に突入します」


 ビルとビルの間を駆け巡り、四課のオフィス前まですぐに辿りついた。そして、警備の人が数人いる中、昼間開けた窓の穴から部屋に突入した。


「魔族⁉︎ 昼間逃げた連中か!」


 警備にあたっていたのはグレゴリーの私兵らしい、彼らは神癒奈達を見つけてすぐに連絡を取ろうとするが、その前にエイルがバトルアックスを振り回し、連絡を取ろうとする者の首を刎ねた。


「敵襲!」


 兵士が銃口を向け、撃ってくるが、神癒奈はそれを刀で弾き、空中で一回転して勢いに乗せて兵士の一人を叩き切った。


「ひ…ひぃ! 来るな!」


 怯えた様子の兵士がエイルに向かって銃を乱射するも、エイルは巨大な体をジャンプさせて回避し、天井に張り付くとそこから飛んでバトルアックスを振り下ろした。その一撃により、最後に残っていた兵士は縦から真っ二つになる。


「制圧完了です!」

「入り口のドアをデスクや椅子で封鎖しておいてください、武器庫から武器を取ってきますので」

「はい!」


 エイルの言う通り、神癒奈はすぐにデスクや椅子でオフィスの入り口を封鎖した、今のうちにエイルは武器庫で装備を整える。


(神癒奈さんには刀だけで十分でしょうね…私用の装甲戦闘服、それとありったけの銃火器でしょうか)


 武器庫にある物を見て、エイルは必要な武装を次々と装着していく。永戸達の普段使いの武装はオフィスに置かれていた為、逮捕の際に持ち出されていたが、鍵のかかった武器庫の武器は幸いにも持ち出されていなかった。

 装甲を纏ったエイルは歩く武器庫だ。触肢の部分にチェーンガンとパイルバンカー、腹部のケースにサブマシンガンと重戦車砲、肩には無反動砲、前脚には盾とそれらを二つずつ左右対称にとりつけて、装備が完了する。


「神癒奈さん…こちらの準備は完了しました、貴方は何か欲しい物は?」

「私はこのままで大丈夫です!」


 エイルが武器庫から出てきて、待っていた神癒奈を背中に乗せると、バイザー付きヘルメットを被った。


「ここから幹線道路に出て、警察署まで走ります、ここからは敵の抵抗も激しくなるはずです。準備はいいですね?」

「はい!」


 バイザーを下ろし、体の感覚を確かめ、神癒奈を背中に乗せたエイルは窓から飛び出し、オフィスを後にした。

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