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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第三章 大柄な蜘蛛と調和を乱す者達
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正面突破

エイルの行った尋問…もとい、拷問によって、デモ隊の男から、情報を引き出すことができた。


「アジトの情報を引き出せました」


エイルが、地図のデータを四課の全員の端末にアップロードする。そこに映されたのはミズガルズシティの役所の一つだった。


「うっわ……役所がアジトってズブズブじゃねぇか」

「でも納得です…あのデモ隊の活動を隠すにはちょうどいい箇所かと思います」


永戸の発言にエイルは頷く。役所の構造はそこまで広くないが、代わりとして部屋がたくさんある形だった。地下室などの隠れられるスペースはない。


「ここは、流石にエイルは入れないな、フィーネや神癒奈もこの屋内戦では武器的に厳しいし」

「そうですね…」

「マスターのお役に立てそうもなく、申し訳ございません…」


サイズ的に大きめなエイルや大型兵装を使うフィアネリスはここでは活躍できないだろう。神癒奈は入ることはできそうだが、彼女は非殺傷の遠距離武器を持たない、廊下での戦闘になれば役に立たなくなるだろう。

一応、フィアネリスや神癒奈用の屋内や近距離戦向けの武器は開発中だが、まだ未完成だ。


「じゃあ、私達はお留守番ですか?」

「そうなるな、お前の長い刀もこの狭さでは振るえないし、今回は亜人組はお休みで俺たち人間組がやる事になる、ライ、武装はどうする?」

「相手は善良…とは言えないが、街の人だし、この前神癒奈君達が使った非殺傷武器を使うしかないな…」

「ここは私に任せて、神癒奈ちゃんとエイル先輩とフィアネリス先輩はお休みしててください!」


そう言うと永戸、ライ、コリーの3人は準備を始めた。自分達は関わることはないだろうと神癒奈達は自分のデスクに戻る。


「課長、この任務、やらせてもらっても大丈夫でしょうか?」

「うむ、このままのさばらして置いたらまた同じ事を繰り返す。連中を完膚なきまでに叩きのめしてきなさい」


ユリウスから出撃許可を取ると、永戸達3人は顔を合わせて頷いた。


「…よし、口うるさい活動家を黙らせに行くぞ」

「了解だ」

「りょーかいです! 先輩!」


手軽な武器を装備すると、永戸達人間組の3人は出撃した。


ーーー


街の一角に装甲車が止まる。その中から永戸達が出てきて、目的の役所のビルの前に立った。


「よし、仕事の時間だ」


永戸は、腰のホルスターを触り、いつも使うリボルバーの大型拳銃二丁の感覚を確かめる

彼の使う銃は異世界で展開されている銃器メーカー、ラウンドレイジ社製の.44マグナムに専用のカスタムが施されたものだ。銘は「ブレイズエッジ」と書かれており、特殊能力がシンプルな彼用に専用弾が使えるようにカスタマイズされている。今回持ち出してきたのはゴム弾だが、本来ならば対能力者用の白銀弾や高威力の専用強化弾が使えるようになっている。

近距離用の武器は狭い屋内なのでいつものパイルソードは置いてきていて、代わりとして格闘用のガントレットと足甲が取り付けられている。こちらには何の細工も施されてないが、彼の能力と相性がよく、徒手空拳で扱いやすい装備になっている


「神癒奈君達ほど彼らの活動に興味はないが、街の為なら止めさせてもらおう」


ライは特注のライオットシールドを手にして運転席から降りてくる。シールドの方は特筆すべき能力はないが、武器の方は暴徒鎮圧用のショックメイスを持ち出してきている。銃器もショットガンと近接戦向けのものをチョイスしてきた。


「亜人を嫌う人間を同じ人間が裁くってのも変だけど、やっちゃいましょう!」


コリーは部隊で唯一小柄なので、二人が機動戦闘装備の中、一人だけ装甲戦闘装備となっている。全身にアーマー付きパワードスーツを着ていて、その手にはサブマシンガン二丁が装着されている。本来ならばエイルの使用したバラウール戦車砲や大型ミサイルやミニガンなどの使用が想定されているのだが、取り回しを重視してサブマシンガン二丁となった。

3人は装備の確認を終え、入り口の前に立つ。そして、永戸がハンドサインを出すと、建物内に突入した。


「イストリアだ! 異種族排他活動家の逮捕に来た、大人しく投降しろ!」


3人が各々の銃器を構えるが、場所は役所のロビーだ。一般人も混ざっていて、その場は混乱に陥る。だがこれでいい、あくまで一般人のいるロビーでは活動家達も下手に動けないはずだ、入り口さえ塞げばまず彼らが逃げ出すことは無い。彼らに遅れて通常のイストリアの兵士が到着し、入り口を封鎖する。

次の瞬間だった、一般人の中に紛れ込んでいた活動家が拳銃を持って撃とうとしてきた。


「一般人は伏せて!」


ライが射線上にいた一般人の頭を下げさせ、盾を構える、バリアが展開され、飛んできた拳銃の弾が塞がれた。


「このっ!」


次に攻撃される前に永戸がライの肩を足場にすると、そこから飛び上がって上から拳銃を持った活動家を蹴った。一瞬だけかけたブーストによって強力な一撃が繰り出され、活動家は壁に吹き飛ばされて意識を失う。


「進みましょう!」

「あぁ!」


装甲と盾に覆われたコリーとライが先行して、永戸はそれを追うように部屋を移動する。ロビーから廊下に移動したが、直後、廊下の奥から活動家達が銃火器を発砲してきた。


「邪魔!!」


ライが能力でバリアを展開して二人を守ると、バリアの隙間からコリーがサブマシンガンを撃ち、正面の敵を倒した。


「片っ端から回るぞ!」


3人は廊下を移動し、それぞれが部屋一つ一つをクリアリングしていく。


「わぁ…来るなぁっ!」

「雑魚は引っ込んでろ!」


部屋に入った途端、活動家が3人、永戸に向けて攻撃を仕掛けてきた。3人のうち二人は剣を持っていてもう一人は銃を持っていた。

永戸は正面から来た二人の攻撃を片手のガントレットで受け止めると、振り払い、拳銃をまずは銃持ちに向けて撃った。強力なゴム製マグナム弾が直撃し、銃を持っていた者は悶え苦しむと倒れた。


「隙を見せたな!」

「あめぇんだよ!」

「どうだか!」


残る二人がそれぞれ再び剣を永戸に振ってくる、今度は両手でその攻撃を防ぎ、もう一度振り払うと、一人は拳銃の底の部分で頭を叩き、もう一人は腰に拳銃を当て、ゼロ距離で発砲した。

二人は痛みで倒れ、一部屋制圧が終わる。


「次!」


永戸は部屋の外に出ると、階段を使い二階へ上がろうとする。だが、階段の隙間から活動家がグレネードを投げてきた。


「ばっ…⁉︎」


慌てて側の部屋に飛び込んで爆発を回避する。あの様子では生身で階段に突入するのは危険だ。


「自分のアジトで爆弾使うのか、馬鹿かクソッ! コリー! 階段の制圧を頼む!」

「はい! 先輩!」


重装備のコリーが階段の前まで来ると、雨のように降る銃撃を装甲で防ぎながら階段を上がる。


「いくら装甲で防げるとは言っても、これは怖い!」


ダメージこそないが心理的に不安になりつつコリーは階段を上がり、階段上の敵をサブマシンガンで倒す。


「階段クリア!」

「一階の制圧完了したぞ! 永戸!」

「了解、ライは二階を、俺とコリーは三階を制圧するぞ!」


指示通り、3人はそれぞれ二階と三階に移動する。永戸とコリーは三階に上がると装甲のあるコリーを先行させ、永戸は背後から構えながら動く。


「敵!」

「容赦はするな!」


正面奥にあるのはおそらく議員の執務室だろう、それを守るように敵が身構えていた、銃撃が飛んでくるがコリーが盾となり、反撃として二人は手持ちの銃を撃った。


「リロードするぞ!」

「分かりました!」


永戸はリボルバーの弾を撃ちきり、コリーの裏に隠れながらリロードに入る。シリンダーから空の薬莢を抜くと、次の弾を詰め込んだ。


「廊下の制圧完了しました!」

「突入するぞ!」


コリーとポジションを代わり、永戸は執務室に突入する、その瞬間、自身の体感速度を加速させ、スローになった景色の中で銃を構え、室内にいた者達ほぼ全てを銃撃で無力化した。


「い、イストリアのエージェント…!」


執務室の机の椅子には、ターゲットとなるデモの主導者、ニック・バートンが座っていた。だが、急な部屋の突入と一瞬で倒された護衛を見て、彼は怯えすくみ上がっていた。


「ニック・バートン、デモの主導はともかくとして、それによる暴動などの容疑で逮捕させてもらう」


永戸はニックに向けて両手で拳銃を構える。

彼は恐れで逃げ出そうとするが、永戸は彼の足元に銃を撃った。


「次逃げようとしたら頭をぶち抜く、大人しく投降しろ」


実弾ではないのでハッタリだが、訳も知らない人間を脅すには十分だった、ニックはその場に座り込むと、永戸に罵声を浴びせる。


「イストリアの犬め!! お、俺を捕まえたとしても親父が黙っていないぞ!」

「知ったことか、親が議員だか何だか知らないし排他運動には微塵も興味ないが、俺たちの暮らしを脅かすなら誰だろうと捕まえてやる」


そう言うと永戸は彼に手錠をつけ、転移魔法で彼をイストリアの方へと送った。仕事を終え、永戸はその場にあった椅子に座り込み、Eファンから連絡を取る。


「…課長、デモ首謀者ニック・バートンを確保しました」

《うむ、こちらでも確認したよ、お疲れ様》


ユリウスとの連絡を取り終え、永戸は椅子に深々と座り込む。偉い者の椅子なんて彼は座ったことなかったが、いざ座るとなかなかいい座り心地だ。


「……これ俺のデスクチェアにできないかな」

「流石に怒られますよ、先輩」


心地よく座ってそう呟くと、彼は部屋にやってきたコリーに笑われた。

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