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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 機械仕掛けの天使と死神と呼ばれた部隊
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孤児院

翌日、孤児院の内部調査の作戦の決行となった。永戸は以前持っていた聖剣が内包されたパイルバンカー付きの剣を持ち、フィアネリスだけでなく、コリーやライも同行する事となった。


「新人君の実力、とくとご覧させてもらおうかな」

「神癒奈ちゃんの戦い方、本試験の話は聞いてたけどどんなのか気になるなぁ」

「期待に応えられるよう頑張ります」


五人で任務だなんてそれほどなのかなと神癒奈は思うが、危険な任務が多いとされるこの課においてはそれが普通な気がした。

そう考えているうちに転移と徒歩による移動で目的の孤児院へと辿り着いた。


「着きましたね、本当に窓とか全部閉められてます」

「中の様子は分からないな、やはり直接乗り込むしかない」


と言うわけなので5人は扉の前に立ち、永戸はノックをした。

…誰かが出てくる気配はない


「ごめんください」


声を出して、もう一度ノックをする。すると今度はこちらに気付いたのか、ドタドタと慌てたような音が中から聞こえてきた。そしてしばらくすると、扉が開かれる。


「はい、なんでしょう……ええと、どちらさまで?」

「異世界管理組織、イストリアの者だ、今回、ここの調査に来させて貰った」

「はぁ、調査ですか? 一体何故?」

「最近、子供がさらわれる誘拐事件が起きていて、それでこの孤児院からも被害が出てないか見にきたわけだ、中に入れてくれないだろうか?」

「ええ、構いませんが」


あくまで表向きは調査だと言い、永戸達は孤児院の中へ案内される。

中には孤児が沢山いて、永戸達を物珍しそうに眺めてたり、遊んでいた。


「見たところ、普通の孤児院ですね?」

「けど、拐われた子供の姿は何処にもない、やはりここは怪しいな」

「子供ばかりだから見つからない、と言う説は?」

「それは無い、攫われた子供の写真をしっかり見てきたからね、ちゃんと見分けられる」


神癒奈はきょろきょろと孤児院を眺めるが、どれも普通の子供ばかりだ。だが、ライはさらわれた子供がいない事に気付き、警戒を強める。


「あまり子供達を刺激しないようにしてくださいね、調査には協力をしますが」

「助かる、全員、各自調査を始めるぞ」


そうして5人は孤児院の中を調査し始めた。事前情報で地下へのルートがあることは把握済みだ、あとはそこに行くための通路を見つければいいだけ。


「全体像から察するに、この部屋から地下への通路に繋がるんだと思うんだ」

「ここを調べればいいわけだな? 神癒奈、コリー、孤児院の人と話をして誤魔化してきてくれ」

「わかりました」


コミュニケーション能力はコリーや神癒奈の方が長けてるだろう、それで孤児院の人の注意を引きつつ、永戸、ライ、フィアネリスの3人は地下への通路を見つけることにした。


ーーー


永戸達が部屋の探索をしてる中、神癒奈とコリーは孤児院の中を探索する。


「ここの運営はどうやってるんですか?」

「国からの援助でなんとかやりくりしてるんです、でも、子供も多いから一日を暮らすのも大変で…」


はははと孤児院の人は笑う、コリーはそのまま質問を続ける。神癒奈はまだ部隊に入りたてなせいか、こう言った時どう言った話をすればいいのかわからなかった。そんな時だった。


「獣人のおねーちゃんだ!」

「おねーちゃん! 遊ぼ遊ぼ!」


神癒奈の方に子供が寄ってきた。狐である神癒奈が物珍しいのか、子供達は神癒奈を囲んでは遊んでほしそうに手を引っ張る。


「あの、コリーさん…」

「いいよ、こっちの話は私がしておくから、神癒奈ちゃんは子供達と遊んでおいで」

「いいんですか?」

「いいのいいの、現地民との交流も仕事の一つだし、子供と遊ぶのも珍しくないから」


コリーから了承を得て神癒奈は子供達と遊ぶ事にした。


「みんなここに住んでるんですか?」

「うん! ここはね、親がいない子供達を集めて大人の人達がお世話してくれてるの!」


話を聞く限り表向きには本当に孤児院をしているらしい。子供達は真実を知らないのだろうか?


「窓とか全部閉じてますけど、外とか出たりとかしちゃいけないんですか?」

「うん、外の世界の人と会うのは子供はまだ怖いからって言われてて、みんなこの家の中でしか暮らしてないの」

「じゃあ、子供が増えたり、減ったりすることはあるんですか?」

「あるよ? 外の世界から身寄りのない子が連れて来られたり、逆に、お金持ちの人とかに養子として連れてってくれたりとかあるの」


ここまで聞いても外に出てはいけない以外はごく普通の孤児院だ。何か有益な情報はないのだろうか?


「じゃあ、普段はここでみんなでまとまって楽しく暮らしてるんですね」

「うん。そうなの、あでも、お薬の時間だけは怖いかな」

「お薬の時間?」


有益な情報が聞き出せそうな予感がして、神癒奈はそれを追及した。


「うん、みんな一週間に一度、お薬を飲む事になってるの、それを飲んだら身体は丈夫になるって言われてるんだけど、変な感じがして…」

「…嫌って言う子はいないんですか?」

「お薬が美味しい味だから嫌がる子は少ないんだけど、絶対飲まなくちゃいけないから酷い時は無理やり飲まされるの」


薬……後で永戸達にも共有しようと神癒奈は思った。

コリーの方はどうなってるんだろうか、ちらりと見てみると、メモを持っては施設の人と会話をしては記録を取っていた。


「ねーねー、お姉ちゃんはどこから来たの?」

「私? 私は、そうですね…ここがどんなところか見に来たんです」

「尻尾ふわふわで沢山あるけど、お姉ちゃんは人なの?」

「いいえ、私は人ではなく妖狐と呼ばれる種族ですね」


神癒奈は子供達の質問に一つ一つ丁寧に答えていく。辛い事をする仕事だが、こうして誰かと話せる時間があると、気が楽になると彼女は思った…。


ーーー


「見つけた、ここがそうだ」


地下へ繋がる部屋を調べ、その通路を永戸達はついに見つけた。


「神癒奈達がひいてるうちに、今のうちに地下に潜って調べよう」

「あぁ、さて、何が出るか…」


地下への階段を3人は降りる。通路の方は暗くなく、明かりで照らされていた。ただ少し異臭がした。


「なんだ、この腐ったような臭いは…?」

「少し匂うね…永戸、ついこの間の任務でこんな場所で生物兵器の薬物を回収したんだろう? あの時もこんな臭いしたのか?」

「いや、あの時はちゃんと消毒されたような匂いがされてた。けど今回はひどい。生ゴミをほったらかしにしたような感じが…」


地下の通路を通りながら全体像の地図を3人で見る、施設としてはそれほど大きくない。小さな部屋が少しと、一部屋大きなところがある程度だ。つまりは…。


「この先だな」

「気をつけてください、何が待ってるかはわかりませんので」


しばらく進んでいくと、壁や天井が肉肉しい物体がへばりついた物へと変わっていった。そして、その物体は、1番奥の広い部屋へと繋がっているのが分かった。


「…開けるぞ」

「開けたら戦闘になるだろうね」

「準備はいつでもできております」


永戸とフィアネリスが分厚い扉にパイルと槍を突き立てる。3人で頷くと、一斉に武器から高威力の弾を撃ち、扉を吹き飛ばした。

その先にあったのは、広々とした手術室だった。そこには白衣を着た科学者達が、さらってきた子供をベッドに縛り付けて、丁度手術をしているところだった。


「イストリアだ、お前達を誘拐などの罪で逮捕させてもらう!」

「っ! 既に目をつけられていたのか! くそっ…!」

「大人しくお縄につけ、抵抗するならば実力行使で止める」


それぞれが武器を構えて科学者達の前に立つ。

科学者達は何もできないのか、手を挙げて無抵抗の意思を示す。

それを確認すると、フィアネリスはそそくさと手錠をつけて刑務所の方へ転移させていった。


「で、ここではどんな研究がされてたんだ?」


手術台の子供を見ると、なんの傷も異変もついてない、なんとかギリギリで手術を受けるのを免れたと永戸は思った。

部屋を見渡すが、そこで初めて異常に気付く。

壁一面のガラスの向こうに、肉肉しい存在の本体らしきモノが鎮座していた。


「なんだ…こりゃ」


その存在は、ただの肉塊でできているモノではない、所々継ぎ接ぎでくっつけられていて、そして、その肉塊の素材となっているのが、人間の子供となっていたからだ。直視すると、壁の向こうから声が聞こえてきた。


「タスケテ…!」

「元ニ戻シテ!」

「苦シイヨ!」


肉塊に付いた子供の頭からそれぞれ苦しそうな唸り声が聞こえてくる。ズリズリと肉体を引きずっては窓にへばりつき、永戸達に助けを求める。


「…助けられるのか?」

「いいえ……ここまで肉体が変貌してしまっては、救う事は…」


救えないと知ると、永戸は歯を食いしばり、自らの無力さに手を握りしめる。


「……だけど、何か手はあるはずだ、調査チームに渡して彼らに処理して貰えば…」


そう言ってライが調査チームに連絡しようとした時だった、肉塊の子供達の塊が、一斉に悲鳴をあげた。

かん高い声で叫ばれ、永戸達は耳を塞ぐ。何が起きたのかと思った時、地上の孤児院の方で何かが騒ぐ音が聞こえた。

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